81 / 116
マーセルの家へ。 1話
しおりを挟む
そして、休日。
マーセルのご両親と会う日がきた。
……なんだか緊張してきたわ。とりあえず、寮には外泊許可も取っているから、遅くなっても大丈夫。
ゆっくりと深呼吸を数回繰り返して、マーセルの部屋から出た。
しっかりと鍵をかけて、待ち合わせ場所に足を進める。
「おはよう、マーセル嬢」
「おはようございますー」
「おはようございます、レグルスさま、ブレンさま」
スカートの裾を摘まんで、カーテシーをした。彼らの後ろには大きな馬車が一台。
レグルスさま、ブレンさま、クロエ、マーセル、それからわたくし。
五人が乗る馬車だから、大きなものを用意してくださったみたい。
数分後に、『カミラ』を連れたクロエがきた。……どうやってお母さまたちを説得したのかしら、彼女。感心していると、その視線に気付いたクロエがにこりと微笑む。
「おはようございます、みなさま。遅れてしまいましたか?」
「いいえ、五分前ですよー。では、行きましょうか、お嬢さま方」
ブレンさまがにこにこと人懐っこそうに笑いながら、馬車の扉を開けた。『カミラ』から馬車に入り、最後にレグルスさまが入り「出してくれ」と御者に合図を送った。
馬車が動き出し、……しんと静まり返った馬車の中、『カミラ』がそわそわしたように視線をあちこちに飛ばしている。
「……ふむ」
小さくブレンさまがつぶやく。その声にビクッと肩を震わせる『カミラ』を見て、首をかしげた。
「――面白いですね」
「面白い?」
「マーセル嬢とカミラ嬢は、魂の双子のようです」
……魂の、双子?
「あなたたちの魂は、とてもよく似ているんですねー。だからこそ、中身が入れ替わったのかもしれません」
ブレンさまは目元を細めた。
言っている意味は、良くわからなかったけれど……わたくしとマーセルの魂が似ているから、このトレードが起きたということ?
「似ている魂は、引き寄せられるとも言うしなぁ」
レグルスさまが感心したようにブレンさまに視線を移す。ブレンさまは興味深そうにわたくしたちを眺め、それから視線を窓の外に向けた。
「あ、手土産を買っていきましょう! マーセル嬢、ご両親はどんなものがお好きですか?」
「え? ええと、……なんでも食べますね。しょっぱいのも甘いのも好きです」
「わー、気が合いそうです。じゃあ、適当に見繕いますねー」
ブレンさまの表情、とてもワクワクしているように見えるわ。
中央広場で一度馬車を停めてもらい、「ちょっと行ってきますねー」とブレンさまが馬車から降り、素早く手土産を買いにいく。
手土産を買う時間も考えて、早めに集合したのだけど……ブレンさまの中では買うものが決まっていたのかすぐに戻ってきた。
マーセルのご両親と会う日がきた。
……なんだか緊張してきたわ。とりあえず、寮には外泊許可も取っているから、遅くなっても大丈夫。
ゆっくりと深呼吸を数回繰り返して、マーセルの部屋から出た。
しっかりと鍵をかけて、待ち合わせ場所に足を進める。
「おはよう、マーセル嬢」
「おはようございますー」
「おはようございます、レグルスさま、ブレンさま」
スカートの裾を摘まんで、カーテシーをした。彼らの後ろには大きな馬車が一台。
レグルスさま、ブレンさま、クロエ、マーセル、それからわたくし。
五人が乗る馬車だから、大きなものを用意してくださったみたい。
数分後に、『カミラ』を連れたクロエがきた。……どうやってお母さまたちを説得したのかしら、彼女。感心していると、その視線に気付いたクロエがにこりと微笑む。
「おはようございます、みなさま。遅れてしまいましたか?」
「いいえ、五分前ですよー。では、行きましょうか、お嬢さま方」
ブレンさまがにこにこと人懐っこそうに笑いながら、馬車の扉を開けた。『カミラ』から馬車に入り、最後にレグルスさまが入り「出してくれ」と御者に合図を送った。
馬車が動き出し、……しんと静まり返った馬車の中、『カミラ』がそわそわしたように視線をあちこちに飛ばしている。
「……ふむ」
小さくブレンさまがつぶやく。その声にビクッと肩を震わせる『カミラ』を見て、首をかしげた。
「――面白いですね」
「面白い?」
「マーセル嬢とカミラ嬢は、魂の双子のようです」
……魂の、双子?
「あなたたちの魂は、とてもよく似ているんですねー。だからこそ、中身が入れ替わったのかもしれません」
ブレンさまは目元を細めた。
言っている意味は、良くわからなかったけれど……わたくしとマーセルの魂が似ているから、このトレードが起きたということ?
「似ている魂は、引き寄せられるとも言うしなぁ」
レグルスさまが感心したようにブレンさまに視線を移す。ブレンさまは興味深そうにわたくしたちを眺め、それから視線を窓の外に向けた。
「あ、手土産を買っていきましょう! マーセル嬢、ご両親はどんなものがお好きですか?」
「え? ええと、……なんでも食べますね。しょっぱいのも甘いのも好きです」
「わー、気が合いそうです。じゃあ、適当に見繕いますねー」
ブレンさまの表情、とてもワクワクしているように見えるわ。
中央広場で一度馬車を停めてもらい、「ちょっと行ってきますねー」とブレンさまが馬車から降り、素早く手土産を買いにいく。
手土産を買う時間も考えて、早めに集合したのだけど……ブレンさまの中では買うものが決まっていたのかすぐに戻ってきた。
115
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄が破滅への始まりだった~私の本当の幸せって何ですか?~
八重
恋愛
「婚約破棄を言い渡す」
クラリス・マリエット侯爵令嬢は、王太子であるディオン・フォルジュにそう言い渡される。
王太子の隣にはお姫様のようなふんわりと可愛らしい見た目の新しい婚約者の姿が。
正義感を振りかざす彼も、彼に隠れて私を嘲る彼女もまだ知らない。
その婚約破棄によって未来を滅ぼすことを……。
そして、その時に明かされる真実とは──
婚約破棄されたクラリスが幸せを掴むお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】伯爵令嬢の格差婚約のお相手は、王太子殿下でした ~王太子と伯爵令嬢の、とある格差婚約の裏事情~
瀬里
恋愛
【HOTランキング7位ありがとうございます!】
ここ最近、ティント王国では「婚約破棄」前提の「格差婚約」が流行っている。
爵位に差がある家同士で結ばれ、正式な婚約者が決まるまでの期間、仮の婚約者を立てるという格差婚約は、破棄された令嬢には明るくない未来をもたらしていた。
伯爵令嬢であるサリアは、高すぎず低すぎない爵位と、背後で睨みをきかせる公爵家の伯父や優しい父に守られそんな風潮と自分とは縁がないものだと思っていた。
まさか、我が家に格差婚約を申し渡せるたった一つの家門――「王家」が婚約を申し込んでくるなど、思いもしなかったのだ。
婚約破棄された令嬢の未来は明るくはないが、この格差婚約で、サリアは、絶望よりもむしろ期待に胸を膨らませることとなる。なぜなら婚約破棄後であれば、許されるかもしれないのだ。
――「結婚をしない」という選択肢が。
格差婚約において一番大切なことは、周りには格差婚約だと悟らせない事。
努力家で優しい王太子殿下のために、二年後の婚約破棄を見据えて「お互いを想い合う婚約者」のお役目をはたすべく努力をするサリアだが、現実はそう甘くなくて――。
他のサイトでも公開してます。全12話です。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる