【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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決意の固さ。 2話

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「結構厄介そうだね、この国の陛下って」
「……そうですわね……。わたくしたちが入れ替わった理由が知りたいですわ」
「そこら辺も、マーティー前に調べよう。きみとマーセル嬢の入れ替えの呪いは、ブレンに任せておいて平気だと思う。あいつ、こういう難しいことをになると、燃える性格だから」

 それは少し意外だわ。

 ブレンさまって大きな見た目に対してほのぼのとしていたし、言葉遣いものんびりとした感じだから。

「ある意味、あいつは傭兵学科で合っているのかもしれないなぁ」
「え?」
「騎士学科より実戦形式多そうだし、暴れ放題!」
「レグルスさま、あんまり人聞きの悪いことを言わないでくださいよー」
「ぶ、ブレンさま!? いつの間に!?」

 ひょこっと現れたブレンさまに驚いていると、マーセルとクロエも一緒に来ていたみたいで、わたくしたちの会話が終わるまで待っていたみたい。

 自分のことを口にされたから、聞こえてますよって現れた……のかしら、きっと。

「まぁ、全力でのぞみますけど」
「任せた」
「レグルスさまもがんばってくださいねー」
「もちろん」

 この二人の会話って、聞いているとなんだか面白いのよね。

 そんなことを考えていたら、マーセルがわたくしの前に立った。

 すっと頭を下げる。

 どうして今、頭を下げるのかがわからなくて、首をかしげた。

「自分のしたことを反省したようです」
「本当に申し訳ありませんでした。マティス殿下が好きという気持ちだけで、なにも考えていませんでした……」

 わたくしがふっと息を吐くと、マーセルはびくりと肩を震わせる。

 彼女の肩に手を置いて、言葉をかけた。

「……貴女は本当に、マティス殿下のことが好きなのね」

 マーセルの気持ちに、感心してしまう。

 わたくしとマティス殿下の関係とは、まったく違う関係を築いていったのね。

 それも、この学園に入ってからだ。

 わたくしが好かれていなかった、というだけでもあるけれど。

 マティス殿下に会う時間よりも、勉強のほうが忙しかったし……互いに愛し愛される努力をしてこなかったのだから、ある意味当然の結果なのかもしれない。

 もちろん、そう簡単に許されることではないけれど。

「……強くなりなさい、マーセル。マティス殿下の傍にいたいと、思うのなら」

 その言葉が意外だったのか、弾かれるようにマーセルは顔を上げた。

 そして、その瞬間――くらりと眩暈めまいを感じ、身体が揺れる。

 目を開けると『わたくしカミラ』の姿が見える。どうやらまた――トレードされたみたいね。

 ブレンさまの言った通り、少しの時間だったけれど……自分の身体に戻れたことで、これからのことも、そこに至るまでのことも改めて考えさせられた。

「――わたくしは貴女あなたの身体で、やるべきことをやるわ」
「……カミラさま……。私、私……がんばって、彼の隣にいられるように……」

 ふるりと身体を震わせて、マーセルは首を横に振った。ただ、固い決意を宿した瞳で、わたくしを見る。

「――私は、私のやり方で、彼を支えたい」
「……支えるのは良いけれど、間違ったほうへ行かせないようにね?」

 どうやって支えるつもりなのかわからないけれど、彼女の決意は固そうだ。

 いつまで経っても馬車にこない『カミラ』を探しにきた護衛が、彼女を連れていく。

 残されたわたくしたちは寮の自室に戻り、それぞれの時間を過ごした。
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