58 / 116
友人とお風呂って夢だったのよね。 2話
しおりを挟む
きっちりとわたくしがやったようにやってみせる彼女に、ふふっと笑いがこぼれる。
「どうしました?」
「いえ、なんだか……マーセルの身体になったときには驚いたけれど、彼女は自由ねって思ってしまって」
シャンプーにしても、身体を洗うことにしても、公爵令嬢というだけメイドたちに囲まれたことを思い出して眉を下げた。
自分でもできると伝えたことがあるけれど、『公爵夫人に罰せられます』と聞いてしまえば、抵抗する気も失せる。
「さて、次は身体の洗い方よ。背中を流してあげる!」
「……カミラさま、楽しんでいませんか?」
「楽しんだもの勝ちじゃないかしら、こういうのって」
トリートメントを洗い流してもらってから、乾いたタオルで髪を巻いてきゅっと結ぶ。
クロエを再び座らせて、石鹸を泡立てた。
もこもこと泡立っていくのを見て、手でクロエの身体を洗う。
「手で洗うほうが、肌には良いのよ」
「くすぐったいです……!」
くすぐったそうに身を捩って笑うクロエ。それを見て、わたくしも声を出して笑った。
前のほうはさすがに自分で洗ってもらった。そして、わたくしも背中を流してもらい、全身をピカピカにしてから湯船に浸かる。
「……私、こんなに広いお風呂に入ったの初めてです」
「ふたりどころか、もっと大勢入っても大丈夫そうなくらい、広いわよね……」
とろみのある乳白色のお湯。
さっき入浴剤を入れたから、その効果なのか、肌がしっとりと保湿されている気がする。
「温泉に入るときって、こんな感じなのかしら?」
「温泉はもっと広いと思いますよ……」
確か、リンブルグは海も良いけれど温泉も良いとなにかの雑誌で読んだことがある。
リンブルグってなんでもあるのね、と考えた記憶があるの。
この国にはなにがあるかしら、と思考して……ワイン、かな。名産品。あとは果物も美味しいと思う。
「……こんなにゆっくりとお風呂に入ったの、久しぶりです」
「忙しかったのね」
「はい。いろいろと……。良いですね、なんだか、心まで癒される気がします」
「……そうね。わたくしも、そう思うわ」
身体が温まったら眠くなってきた。
眠る前に、髪をきちんと乾かして、肌の手入れをしなくては。
そんなことを考えつつ、クロエとのお喋りに夢中になってしまった。
だって、彼女の見ている世界は、わたくしにはとっても新鮮だったのですもの!
「すっかり長湯してしまいましたね……」
「お水が飲みたいわ……」
湯船から上がって、タオルで水滴を拭ってからバスローブへ袖を通す。
長湯で身体がぽかぽかとし過ぎちゃって、冷たい水を求めて歩けば、クロエに「私が用意します」と駆けていった。
コップに水を入れて持ってきてくれたので、それを受け取りごくごくと一気に飲む。
「はぁ、美味しい……」
「お風呂上りの一杯は格別ですよね」
クロエは自分の分の水を同じように一気に飲む。
一気の身なんて、カミラの身体じゃできなかったわね。
そんなことを考えて口角を上げると、クロエが首を傾げた。
「さ、寝る前にスキンケアの仕方を教えるわね」
「はい、カミラさま」
スキンケアの仕方や、肌に塗る化粧品の話をしながら実践してみせる。
クロエの肌にもスキンケアをしたから、明日が楽しみね。
髪のケアの仕方やわたくし好みのオイルを教えながら手入れをした。
……こういうのも一度、やってみたかったのよね……!
すべての手入れを終えて、わたくしたちはベッドに潜り込み、そのまま目を閉じて――あっという間に眠りに落ちた。
「どうしました?」
「いえ、なんだか……マーセルの身体になったときには驚いたけれど、彼女は自由ねって思ってしまって」
シャンプーにしても、身体を洗うことにしても、公爵令嬢というだけメイドたちに囲まれたことを思い出して眉を下げた。
自分でもできると伝えたことがあるけれど、『公爵夫人に罰せられます』と聞いてしまえば、抵抗する気も失せる。
「さて、次は身体の洗い方よ。背中を流してあげる!」
「……カミラさま、楽しんでいませんか?」
「楽しんだもの勝ちじゃないかしら、こういうのって」
トリートメントを洗い流してもらってから、乾いたタオルで髪を巻いてきゅっと結ぶ。
クロエを再び座らせて、石鹸を泡立てた。
もこもこと泡立っていくのを見て、手でクロエの身体を洗う。
「手で洗うほうが、肌には良いのよ」
「くすぐったいです……!」
くすぐったそうに身を捩って笑うクロエ。それを見て、わたくしも声を出して笑った。
前のほうはさすがに自分で洗ってもらった。そして、わたくしも背中を流してもらい、全身をピカピカにしてから湯船に浸かる。
「……私、こんなに広いお風呂に入ったの初めてです」
「ふたりどころか、もっと大勢入っても大丈夫そうなくらい、広いわよね……」
とろみのある乳白色のお湯。
さっき入浴剤を入れたから、その効果なのか、肌がしっとりと保湿されている気がする。
「温泉に入るときって、こんな感じなのかしら?」
「温泉はもっと広いと思いますよ……」
確か、リンブルグは海も良いけれど温泉も良いとなにかの雑誌で読んだことがある。
リンブルグってなんでもあるのね、と考えた記憶があるの。
この国にはなにがあるかしら、と思考して……ワイン、かな。名産品。あとは果物も美味しいと思う。
「……こんなにゆっくりとお風呂に入ったの、久しぶりです」
「忙しかったのね」
「はい。いろいろと……。良いですね、なんだか、心まで癒される気がします」
「……そうね。わたくしも、そう思うわ」
身体が温まったら眠くなってきた。
眠る前に、髪をきちんと乾かして、肌の手入れをしなくては。
そんなことを考えつつ、クロエとのお喋りに夢中になってしまった。
だって、彼女の見ている世界は、わたくしにはとっても新鮮だったのですもの!
「すっかり長湯してしまいましたね……」
「お水が飲みたいわ……」
湯船から上がって、タオルで水滴を拭ってからバスローブへ袖を通す。
長湯で身体がぽかぽかとし過ぎちゃって、冷たい水を求めて歩けば、クロエに「私が用意します」と駆けていった。
コップに水を入れて持ってきてくれたので、それを受け取りごくごくと一気に飲む。
「はぁ、美味しい……」
「お風呂上りの一杯は格別ですよね」
クロエは自分の分の水を同じように一気に飲む。
一気の身なんて、カミラの身体じゃできなかったわね。
そんなことを考えて口角を上げると、クロエが首を傾げた。
「さ、寝る前にスキンケアの仕方を教えるわね」
「はい、カミラさま」
スキンケアの仕方や、肌に塗る化粧品の話をしながら実践してみせる。
クロエの肌にもスキンケアをしたから、明日が楽しみね。
髪のケアの仕方やわたくし好みのオイルを教えながら手入れをした。
……こういうのも一度、やってみたかったのよね……!
すべての手入れを終えて、わたくしたちはベッドに潜り込み、そのまま目を閉じて――あっという間に眠りに落ちた。
101
お気に入りに追加
410
あなたにおすすめの小説
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
幼馴染に奪われそうな王子と公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
「王子様、本当に愛しているのは誰ですか???」
「私が愛しているのは君だけだ……」
「そんなウソ……これ以上は通用しませんよ???」
背後には幼馴染……どうして???
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
政略結婚の指南書
編端みどり
恋愛
【完結しました。ありがとうございました】
貴族なのだから、政略結婚は当たり前。両親のように愛がなくても仕方ないと諦めて結婚式に臨んだマリア。母が持たせてくれたのは、政略結婚の指南書。夫に愛されなかった母は、指南書を頼りに自分の役目を果たし、マリア達を立派に育ててくれた。
母の背中を見て育ったマリアは、愛されなくても自分の役目を果たそうと覚悟を決めて嫁いだ。お相手は、女嫌いで有名な辺境伯。
愛されなくても良いと思っていたのに、マリアは結婚式で初めて会った夫に一目惚れしてしまう。
屈強な見た目で女性に怖がられる辺境伯も、小動物のようなマリアに一目惚れ。
惹かれ合うふたりを引き裂くように、結婚式直後に辺境伯は出陣する事になってしまう。
戻ってきた辺境伯は、上手く妻と距離を縮められない。みかねた使用人達の手配で、ふたりは視察という名のデートに赴く事に。そこで、事件に巻き込まれてしまい……
※R15は保険です
※別サイトにも掲載しています
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる