【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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緩い……緩すぎる……! 1話

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 興奮しているクロエに、その興奮を抑えてもらうため、コーヒーを勧めた。彼女はハッとした表情を浮かべて、大人しくコーヒーを口にする。

「……前に、公爵家の人間から王太子を選んだって……」
「陛下、兄弟多いんだよ……」
「まさかその中から押し付けら……選ばれるとは、レグルスさまも大変ですよねぇ」

 注文していたガトーショコラが届いて、ブレンさまは嬉々として食べる。

 なんというか、胸やけしないのかしらと少しハラハラする食べっぷり。でも、ここまでにこにこと美味しそうに食べられると、天晴あっぱれと言いたくなるわね。

「大変なのはお前もだろー? 乳母兄妹ってだけで、俺の護衛なんだから」

 二人が親しいのは、そういう理由もあったのね。

 仲が良くて羨ましい。だって考えてみればわたくし、親しい友人がいないもの……

 そりゃあお茶会に招待したり、招待されたりはあったけれど、それもすべてお母さまが決めていたから。

「それと、どうしてこの国の人を、妃にしなければいけないのですか?」
「リンブルグって他国から妃を迎えるのが風習なんだよね。で、今回はここにしようってことで。ちょうど留学の誘いがきていたし」
「……お待ちください。この国からリンブルグの王太子であるレグルスさまに、留学の誘いが?」

 こくりとうなずくのを見て、わたくしは思わず額に手を置いて、重々しく息を吐いた。

 レグルスさまたちに深々と頭を下げる。

「申し訳ございません。誘った側のこちらが、レグルスさまたちに対して……!」
「いや、カミラ嬢が謝ることではないだろう。逆に楽しくなってきたし」
「た、楽しい、ですか……?」

 驚いて変な声になってしまった。こほんと咳払いをして、彼らを見る。この国のしてきたことに対して、本当にあまり気にしていない様子だ。

 普通、冷遇されているのを知ったら怒らない? それだけ、寛容ということなのかしら?

「この留学だって、妃を見つけたら早々に帰るつもりの留学だったし」
「まぁ、受け入れてくれるかどうかは、カミラさまのお心次第ですけどねー」

 幸せそうにガトーショコラを口に運びながら、ブレンさまがこちらを見た。

 ……この人たち、結構なマイペースさもあるわね。

「……あの、もしも……もしも、カミラさまがリンブルグの妃として行くとして、カミラさまの待遇はどのようなものになりますか?」
「リンブルグを知ってもらうための勉強はしてもらいますが、三食昼寝付き、デートもたくさん。こんな感じでしょうか、歴代の妃って」
「……緩くありませんか?」
「ゆるゆるですねぇ。どうしてこれでうまくいっているんでしょう?」

 わたくしが知りたい……!

 緩い、緩すぎるわ、リンブルグ……!
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