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手作りパンフレット。 2話
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「自国の美味しそうなお店も調べていますよ。職業柄、なかなか行けないんですけどね」
「悪かったな、俺の護衛で」
「いやぁ、殿下の毒見役としても美味しいものが食べられるので……」
リンブルグって平和な国というイメージなのだけど、違うのかしら?
毒見……とわたくしとクロエが顔を見合わせると、「あったなそんなこと」とレグルスさまがあまり気にしていない口調で両肩を上げた。
歩きながら話していたから、いつの間にか目的のお店についた。店内に入って、二階の個室に通される。
店内を見渡せば、確かに男性だけでは入りにくそうな、可愛らしい飾り付けがされていて、よくこの店のことを知っていたなぁと感心した。
二階の個室に入り、メニューを眺める。
どれも美味しそうだけど……本当にこんなにたっぷりのホイップを使っているのかしらと思うくらい、ホイップクリームの山。
わたくしはクロエと相談して、食べきれなかったらいやだからシェアしようと決めた。
ベリー系のパンケーキにしようかと話して、ブレンさまはチョコバナナのパンケーキ、レグルスさまは食事系のパンケーキを選び、全員分の紅茶を一緒に注文する。
「レグルスさま、ブレンさま、先程の毒見役というのは……?」
「俺が王太子になるまでに、いろいろあったんだよ……。陛下たちに子どもができなかったことは話しただろう?」
こくりとうなずく。だから、公爵家のレグルスさまが選ばれたのだと。
子どもがいれば継承権は子どものものだろうけど……こればかりはね。
「陛下たちは仲睦まじいから、子どもができなかったらできなかったで、いつまでも二人でいられていいって感じでしたよね。まぁ、そこでレグルス殿下に王太子にならない? ってお誘いがきたわけです」
軽い! そんなに軽く王太子を選んでいいの!? わたくしとクロエが目を丸くしていると、レグルスさまが懐かしそうに目元を細めた。……いいの、本当に……?
「俺より自分のほうが! ってヤツから毒を盛られたりしたけど、それは留学前に解決したから心配ないよ」
「自信家でしたよねぇ。彼が王になったら、転がり落ちるのが目に見えます」
ザクザクと……そしてあまりにもさらっと口にしているから、話の内容と彼らの表情があまりにも合っていなくて困惑してしまう。
毒を口にしたブレンさまは大丈夫だったのかとか、いったい誰が犯人だったのかとか、いろいろな考えが巡ってなにも言葉が出なかった。
ふと、クロエがマジマジとブレンさまを興味深そうに見ていることに気付いて、「クロエ?」と彼女の名を呼ぶ。
「毒を飲んでも平気なんですか?」
「はい。僕はなぜか昔から毒が効かないんです」
「毒が含まれていることには、どうやって気付くのですか?」
「舌で。混ざっているなーってわかるんですよ」
特殊体質みたいなものなのかしら……?
毒が効かない、毒の味がわかる? 確かに毒見役にはぴったりな人なのかもしれないけれど……それをにこにこと笑いながら口にできる彼がすごい気がするわ。
「悪かったな、俺の護衛で」
「いやぁ、殿下の毒見役としても美味しいものが食べられるので……」
リンブルグって平和な国というイメージなのだけど、違うのかしら?
毒見……とわたくしとクロエが顔を見合わせると、「あったなそんなこと」とレグルスさまがあまり気にしていない口調で両肩を上げた。
歩きながら話していたから、いつの間にか目的のお店についた。店内に入って、二階の個室に通される。
店内を見渡せば、確かに男性だけでは入りにくそうな、可愛らしい飾り付けがされていて、よくこの店のことを知っていたなぁと感心した。
二階の個室に入り、メニューを眺める。
どれも美味しそうだけど……本当にこんなにたっぷりのホイップを使っているのかしらと思うくらい、ホイップクリームの山。
わたくしはクロエと相談して、食べきれなかったらいやだからシェアしようと決めた。
ベリー系のパンケーキにしようかと話して、ブレンさまはチョコバナナのパンケーキ、レグルスさまは食事系のパンケーキを選び、全員分の紅茶を一緒に注文する。
「レグルスさま、ブレンさま、先程の毒見役というのは……?」
「俺が王太子になるまでに、いろいろあったんだよ……。陛下たちに子どもができなかったことは話しただろう?」
こくりとうなずく。だから、公爵家のレグルスさまが選ばれたのだと。
子どもがいれば継承権は子どものものだろうけど……こればかりはね。
「陛下たちは仲睦まじいから、子どもができなかったらできなかったで、いつまでも二人でいられていいって感じでしたよね。まぁ、そこでレグルス殿下に王太子にならない? ってお誘いがきたわけです」
軽い! そんなに軽く王太子を選んでいいの!? わたくしとクロエが目を丸くしていると、レグルスさまが懐かしそうに目元を細めた。……いいの、本当に……?
「俺より自分のほうが! ってヤツから毒を盛られたりしたけど、それは留学前に解決したから心配ないよ」
「自信家でしたよねぇ。彼が王になったら、転がり落ちるのが目に見えます」
ザクザクと……そしてあまりにもさらっと口にしているから、話の内容と彼らの表情があまりにも合っていなくて困惑してしまう。
毒を口にしたブレンさまは大丈夫だったのかとか、いったい誰が犯人だったのかとか、いろいろな考えが巡ってなにも言葉が出なかった。
ふと、クロエがマジマジとブレンさまを興味深そうに見ていることに気付いて、「クロエ?」と彼女の名を呼ぶ。
「毒を飲んでも平気なんですか?」
「はい。僕はなぜか昔から毒が効かないんです」
「毒が含まれていることには、どうやって気付くのですか?」
「舌で。混ざっているなーってわかるんですよ」
特殊体質みたいなものなのかしら……?
毒が効かない、毒の味がわかる? 確かに毒見役にはぴったりな人なのかもしれないけれど……それをにこにこと笑いながら口にできる彼がすごい気がするわ。
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