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休日で良かったわ。 2話

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「……私、カミラさまは完璧な公爵令嬢だと思っていました。お金持ちで頭もよくて魔法も使えて……こんな人になれたらなぁって。カミラさまと婚約しているマティスさまにも、最初は興味本位で近付きました……」

 ぽつぽつと言葉を落とすマーセルに、わたくしはただ手を動かしていた。髪をき終え、彼女の隣に座るとじっとこちらを見て「泣いていたんですか?」とストレートに聞かれた。目が腫れぼったくなっていることに気付いたみたいね。

「……貴女あなたにも関係あることを聞いたのよ。それはあとで話すとして……貴女の家とは、やっぱり違うのね?」

 こくりとうなずいたマーセル。どうやら彼女は家族に愛されて育ったようね。それが少し、いえ、かなり羨ましく感じた。

「両親は私を大切に育ててくれました。私の家はお金があるわけではありませんが、優しい両親に使用人たちがいて、いつも楽しかったです」
「……そう」
「私……ずっと、家族とはそういうものだと思っていました……」

 ぽつぽつと話すマーセルに、わたくしは内心ため息を吐いた。

 幸せな家庭で育った彼女が羨ましく、昨日のマティスの話を思い出してやるせない気持ちになる。

 もしも、わたくしとマーセルが交換されなかったら、両親に愛されていたのかしら……?

 そして、彼女が公爵家で育ったのなら、どんな令嬢になるのかと。

「……貴女は幸せな家庭で育ったのね」

 こくり、とマーセルがうなずいた。

 わたくしの顔で神妙な表情を浮かべているマーセル。……こういう顔もできるのね、わたくしって。そんな変なことを考えながらも、ふと気になっていたことを口にする。

「どうして、マティス殿下に近付いたの?」
「……最初は、カミラさまの婚約者がどんな方なのか、気になったんです。完璧な公爵令嬢の婚約者ですから、彼も完璧な王子なのか気になって……ですが、彼を知っていくうちに、私は……マティスさまを好きになってしまったのです」

 つらそうに話すマーセルに、わたくしの心は動かなかった。自分でも驚くくらいに。

 興味本位で近付いて、好きになったから身体の関係を許したということなの?

「……マーセル。貴女、マティスと付き合っているの?」

 小さくうなずいたのを見て、大きなため息を吐いた。

 それを聞いてびくりと身体を震わせる。わたくしがいじめているみたいじゃないの。

「婚約破棄を、公爵さまにお願いしました。ですが、『そんなことは許さない』って。私が歩いていると、公爵夫人が『変な歩き方をしないでちょうだい』って……。ずっと見張られていて、魔法が使えないことに気付くと公爵夫人が……」

 自分を抱きしめるように二の腕を掴み、ぶるぶると身体を震わせる。どうやら、激しく折檻せっかんされたようね。

 お母さま、そういうところがあるから。

 むしろ、わたくしを使ってストレス発散でもしていたんじゃないか、と考えるくらいに。

「……ねぇ、マーセル。わたくしがどうして泣いていたのか、教えてあげるわ」
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