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入れ替わり!? 2話
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王立レフェーブル学園。
わたくしたちはそこの学生だ。
この学園は学生たちが自分の得意な分野で就職できるようにサポートしてくれる学園なので、学生数は多い。
選べる学科は騎士、傭兵、魔術師、召使となかなか自由。
女性でも騎士を目指す人もいるし、男性でも召使を目指す人がいる。その人たちをサポートするのが、この学園だ。
わたくしは『魔術師』、マーセルは『召使』を受講しているから、頻繁に顔を合わせることはなかったのだけど……なぜかここ最近、マーセルはわたくしの前に現れてマティスとイチャイチャしているところを見せつけてから去っていた。
嫌がらせ、よね。
「カミラさまがすぐに婚約破棄してくれなかったから……!」
「お言葉ですけど、わたくしとマティス殿下の婚約は生まれたときから決まっていたのよ。婚約破棄を願うなら、いろんな人に話を通さないといけないの。……ああ、ちょうど良かったじゃない。貴女、わたくしの身体になったのだから、両親に婚約破棄をお願いしたらいいわ」
「……! そっか、そうよね! 私、がんばって説得してみせます!」
ぱぁっといきなり表情が明るくなった。……わたくしの顔でそんな顔をされると、なんだか別人のように見えるわ。
「善は急げ、今すぐに伝えてきますわ!」
意気揚々と教室を出ていくのを眺めながら、……ベネット邸まできちんと辿りつけるのかしら? と小首をかしげる。メイドたちも、家族も、あんな『わたくし』を見たらどう思うかしらね。
お母さまは間違いなく怒り狂うだろうから、明日ちゃんと学園に登校できるかも怪しい。
両肩を上げてゆっくりと息を吐く。
公爵家の令嬢――カミラ。それがわたくしの名前。
生まれたときからの婚約者、マティス殿下とはあまり良い関係を築いているとは言えない。
だって、彼はこのレフェーブル学園で男爵家の令嬢、マーセル――この身体の持ち主と、付き合い始めた。
わたくしと彼が出会ったのは三歳の頃。両親と一緒に王城まで足を運んだ日……婚約者として紹介された。そこから、わたくしの地獄が始まったのよねぇ。
マティス殿下は第一王子だから、彼を支えられる人になりなさいって。いろんなことを叩き込まれたのよね。できなかったら失望のまなざしを向けられたり、『その程度のこともできないの?』と責められたりとなかなか大変だったわ。
――さて、彼女はどのくらい耐えられるかしらね?
「マーセル、ここにいたのか……!」
教室の扉が開いて、マティス殿下が笑みを浮かべながらわたくしに……いいえ、『マーセル』に近付いてくる。
マーセルを前にすると、そんな優しい表情を浮かべられるのね。なんだかいろいろと複雑な気持ちだわ。
「大丈夫かい? カミラにいじめられなかった?」
こんなに甘い声で……マーセルとは話すのね。『カミラ』の前とは大違い。
彼のことは好きでも嫌いでもないと思っていたけれど、もはやどうでもいいに変わっていったのは、入学してからあっという間だったわ。
「大丈夫ですよ。ただ、お話をしていただけですもの」
「そうかい? ……まぁ、きみがそう言うのなら、信じるよ」
そっとわたくしの頬に……いいえ、この身体の持ち主はマーセルだったわ。
マーセルの頬に触れて愛おしそうに目元を細める彼に、わたくしは頭が痛くなってきた。
婚約者がいながら、『マーセル』と恋人になった彼の考えがまったくわからない。
「階段から落ちたんだ。医者に診てもらおう?」
「え、ええ……」
わたくしに対する態度と、『マーセル』に対する態度があまりにも違いすぎて引いてしまう……のは、仕方ないことよね?
わたくしたちはそこの学生だ。
この学園は学生たちが自分の得意な分野で就職できるようにサポートしてくれる学園なので、学生数は多い。
選べる学科は騎士、傭兵、魔術師、召使となかなか自由。
女性でも騎士を目指す人もいるし、男性でも召使を目指す人がいる。その人たちをサポートするのが、この学園だ。
わたくしは『魔術師』、マーセルは『召使』を受講しているから、頻繁に顔を合わせることはなかったのだけど……なぜかここ最近、マーセルはわたくしの前に現れてマティスとイチャイチャしているところを見せつけてから去っていた。
嫌がらせ、よね。
「カミラさまがすぐに婚約破棄してくれなかったから……!」
「お言葉ですけど、わたくしとマティス殿下の婚約は生まれたときから決まっていたのよ。婚約破棄を願うなら、いろんな人に話を通さないといけないの。……ああ、ちょうど良かったじゃない。貴女、わたくしの身体になったのだから、両親に婚約破棄をお願いしたらいいわ」
「……! そっか、そうよね! 私、がんばって説得してみせます!」
ぱぁっといきなり表情が明るくなった。……わたくしの顔でそんな顔をされると、なんだか別人のように見えるわ。
「善は急げ、今すぐに伝えてきますわ!」
意気揚々と教室を出ていくのを眺めながら、……ベネット邸まできちんと辿りつけるのかしら? と小首をかしげる。メイドたちも、家族も、あんな『わたくし』を見たらどう思うかしらね。
お母さまは間違いなく怒り狂うだろうから、明日ちゃんと学園に登校できるかも怪しい。
両肩を上げてゆっくりと息を吐く。
公爵家の令嬢――カミラ。それがわたくしの名前。
生まれたときからの婚約者、マティス殿下とはあまり良い関係を築いているとは言えない。
だって、彼はこのレフェーブル学園で男爵家の令嬢、マーセル――この身体の持ち主と、付き合い始めた。
わたくしと彼が出会ったのは三歳の頃。両親と一緒に王城まで足を運んだ日……婚約者として紹介された。そこから、わたくしの地獄が始まったのよねぇ。
マティス殿下は第一王子だから、彼を支えられる人になりなさいって。いろんなことを叩き込まれたのよね。できなかったら失望のまなざしを向けられたり、『その程度のこともできないの?』と責められたりとなかなか大変だったわ。
――さて、彼女はどのくらい耐えられるかしらね?
「マーセル、ここにいたのか……!」
教室の扉が開いて、マティス殿下が笑みを浮かべながらわたくしに……いいえ、『マーセル』に近付いてくる。
マーセルを前にすると、そんな優しい表情を浮かべられるのね。なんだかいろいろと複雑な気持ちだわ。
「大丈夫かい? カミラにいじめられなかった?」
こんなに甘い声で……マーセルとは話すのね。『カミラ』の前とは大違い。
彼のことは好きでも嫌いでもないと思っていたけれど、もはやどうでもいいに変わっていったのは、入学してからあっという間だったわ。
「大丈夫ですよ。ただ、お話をしていただけですもの」
「そうかい? ……まぁ、きみがそう言うのなら、信じるよ」
そっとわたくしの頬に……いいえ、この身体の持ち主はマーセルだったわ。
マーセルの頬に触れて愛おしそうに目元を細める彼に、わたくしは頭が痛くなってきた。
婚約者がいながら、『マーセル』と恋人になった彼の考えがまったくわからない。
「階段から落ちたんだ。医者に診てもらおう?」
「え、ええ……」
わたくしに対する態度と、『マーセル』に対する態度があまりにも違いすぎて引いてしまう……のは、仕方ないことよね?
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