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4章:寵姫 アナベル
寵姫 アナベル 13-2
しおりを挟む翌朝、アナベルは身動きが出来ないことに気付いて目が覚めた。
そして、視界に入ったエルヴィスにびくりと体が硬直した。
「え、エルヴィス陛下……?」
自分が抱きしめられていることに気付くと、アナベルは顔を赤らめて声を掛けた。すると、エルヴィスがゆっくりと目を開けて、アナベルの顔を見ると優しく微笑んだ。
「君の顔を見ると、なんだかホッとするな」
「……え?」
エルヴィスはそっとアナベルから離れて、起き上がった。続くようにアナベルも起き上がる。
「……深夜の、本物の陛下だったのですね、すみません、寝ぼけていたみたいで……」
「いや、ただ顔を見に来ただけだったんだ。だが、ベルが可愛いことを言うから、一緒に眠ってしまった」
可愛いこと? とアナベルが考えて、ぼっと顔を真っ赤にさせた。それを隠すように、
顔を覆うとエルヴィスがクスクスと笑う。
「寂しい思いはこれからもさせるだろう……。許してくれるか?」
「もちろんですわ、エルヴィス陛下」
心を落ち着かせるように深呼吸を繰り返してから、胸元に手を置いてうなずいた。
エルヴィスはちゅっとアナベルの髪に口付けると、ベッドを抜けて「それでは、仕事に行って来る」とアナベルの部屋から去っていった。
「……し、心臓に悪いわ……」
ドキドキと高鳴る鼓動。アナベルは少し困ったように息を吐いて、それから何度も深呼吸を繰り返した。
「おはようございます、アナベル様っ。屋敷のものたちと話し合ってプランを練ってきました!」
扉をノックする音が聞こえて、返事をするとすぐに昨日のメイドが話し合った結果を記した紙を持ってきたようだ。
「見せてくれる? ……あら、本当に華々しいデビューになりそうですわね……。ねえ、この歓迎パーティーってわたくしも参加してよいかしら? 思いっきり夜更かししたいの」
メイドたちが考えてくれた案を眺めて、新人歓迎パーティーの文字を見つけると、両手を合わせて彼女にお願いするアナベル。
「思いっきり?」
「そう、思いっきり。夜会から帰ってすぐにしましょう。みんなに準備をお願いしても良いかしら?」
「もちろんです、お任せください」
ドンっと自分の胸を叩くメイドに、アナベルは微笑んだ。
「ありがとう、楽しみにしていますわね」
「はい! では、今日も剣の稽古からですね、すぐに準備をします!」
「ええ、お願いします」
アナベルはてきぱきと動くメイドの姿を見て、もしもこのまま自分がエルヴィスの隣に居られたら――……、その時は、この宮殿で働いている人、すべての名前を覚えよう、と心に決めながら、ベッドからおりた。
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