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3章:紹介の儀
紹介の儀 その後 2-2
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翌朝、いや、既に太陽は高く昇り昼前のようだった。
アナベルはぼんやりとした頭で天井を見上げ、「……あれ?」と小さく呟く。そして、自分の隣にエルヴィスがいることに気付き、昨日の記憶が一気によみがえり顔を真っ赤にさせた。
(……寝てるの、かしら……?)
目を閉じたままのエルヴィスをじっと見つめる。
……あまりにも静かに眠っているように見えて、思わず呼吸を確かめるように手を口元に近付けると、手首を掴まれた。
えっ? と思う間もなく、引き寄せられて抱きしめられたアナベルは、驚いたように目を大きく見開いて、「え、エルヴィス陛下!?」と慌てたような声を上げた。
「……おはよう、ベル。いや、もう昼だから、おはよう、ではないか」
くすりと笑う声。
(――面白がってるわね!)
アナベルはむっとしたようにエルヴィスを睨む。エルヴィスは彼女を抱きしめたまま、甘く蕩けるような声でこういった。
「――はじめてだ、こんな感情は」
「……え?」
「満たされている、というのは、こういう感じなのかもしれないな……」
「……陛下……」
「名を……私の名を呼んでくれ、ベル」
甘えるようなエルヴィスの様子に、アナベルは目を伏せて一度深呼吸をしてから彼の名を呼んだ。
「エルヴィス」
その言葉は、エルヴィスの胸に甘く広がった。
「……もっと、呼んでくれないか?」
「あなたが望むのなら、何度でも」
アナベルはエルヴィスが満足するまで、何度も彼の名を呼んだ。
しばらくすると、エルヴィスがベッドから起き上がった。
「……さて、今日はこのまま休んでいてくれ。私は少し、出掛けてくる」
「えっ……」
「今日は無理をしないこと。いいな?」
有無を言わせない口調と表情で、エルヴィスがアナベルに向けて手を伸ばし、頭を撫でてから微笑み、そのまま部屋を後にした。
(――ッ、……ま、まあ、確かに動くのは大変だと思うけれど……)
昨夜のことを思い出して再び顔を赤らめ、枕に顔を押し付けて悶えていると、扉がノックされた。
「は、はい」
反射的に返事をすると、メイドたち数人が入って来た。
「アナベル様、体の調子は大丈夫ですか?」
「こちらを着てください。今日はゆっくり休みましょうね」
メイドたちはそう言うと、意味深に微笑む。
その笑みを見て、悟った。
――昨日、アナベルとエルヴィスが結ばれたことを、彼女たちは知っている、と――……。
真っ赤になったアナベルに、メイドたちが「可愛らしい寵姫ですね」と朗らかに言われて、アナベルは赤面した顔を隠すように両手で顔を覆った。
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