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3章:紹介の儀

紹介の儀 1-2

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「陛下は彼女をたいそう気に入ったようで、そんなに苦労して来たのならば、これからは少しでも楽をさせてあげよう――そう思い、アンリオ侯爵家とのを提案したのです」

 すらすらと言葉を並べるダヴィド。
 貴族たちは養子縁組、と聞いて目を丸くしていた。
 アンリオ侯爵家といえば、二十年ほど前に国随一と言われたミシェルが駆け落ちしたということで有名になった。
 その後、ミシェルがいなくなったことがショックですっかり社交界にも顔を出さなくなったと言われていたが……。

(……ミシェルの生家と養子縁組をした、ですって?)

 イレインは内心そう呟き、大袈裟なほどに驚いてみせた。

「まあ! 陛下ったら慈悲深いのですね。……その慈悲深さを他の方々にも与えれば良いものを……」

 しみじみと頬に手を添えながら呟くイレインに、アナベルは小さく笑う。

「どうかしまして?」
「いいえ。エルヴィス陛下は本当に慈悲深くていらっしゃいますもの。王妃殿下がそのことを口にしてくださるなんて、嬉しい限りですわ」

 にっこり。
 アナベルは花が綻ぶように笑う。
 それを見ていた男性たちは、思わず彼女に見惚れた。顔が赤くなっているのを見て、アナベルがキョトンと首を傾げる。

「顔が赤くなっていますが、大丈夫ですか?」

 心配そうに眉を下げて男性を見つめるアナベルに、男性はハンカチを取り出すと滲んだ汗を拭い、「だ、大丈夫です」と微笑んだ。
 アナベルが「良かった……」と胸元で手を合わせてはにかむと、その姿を見た男性たちが再び顔を赤くする。

(……女性に免疫のない人たちばかり集まっているのかしらねぇ……?)

 あまりにも初心な反応をされて、アナベルのほうが驚いてしまった。

「――エルヴィス陛下がいらっしゃいました」

 すっと、イレインよりも年上の女性が彼女の耳元でささやいた。
 イレインが顔を動かすのと同時に、アナベルも動かす。
 エルヴィスが近付いて来たのを見ると、アナベルはぱぁっと表情を輝かせた。

「――待たせたな、ベル」
「いいえ、陛下をお待ちしている間も、デュナン公爵と王妃殿下が話し相手になってくださいましたから」

 エルヴィスがそっとアナベルの腰に手を回し、その体を自分のほうへと引き寄せる。
 アナベルはうっとりとしたように恍惚の笑みを浮かべて、エルヴィスに甘えるように寄りかかった。
 それを見たイレインは目元を細める。

「――随分とお気に入りですのね」
「ああ、それはもう。こんなにも美しい女性を見るのは初めてだったからな」
「まあ、陛下ったら……」

 アナベルはポッと頬を赤らめた。
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