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3章:紹介の儀
紹介の儀 1-1
しおりを挟むキラキラと輝くシャンデリア。色とりどりのドレスを着ている女性たち。
その中に、王妃イレインの姿があった。彼女はソファに座って紅茶を飲んでいた。
イレインは周りに男性たちも置いていた。護衛の騎士の他にも、イレインに――王妃に近付きたい者が多いから、今がチャンスとばかりに彼女の元に集まったのだ。
そして様々な内容の話を、イレインは扇子で口元を隠しながら聞いていた。
――ざわざわと、人々のざわめきが大きくなった。
重々しい扉が開かれ、ダヴィドにエスコートされた見目麗しい美女――……アナベルが会場内に足を踏み入れたのだ。
体のラインを強調するようなシュミーズドレスに、温かそうなケープを羽織り、アイスブルーダイヤモンドのイヤリングとネックレスを身に付けていた。
――エルヴィスの目の色だ。さらに、アイスブルーダイヤモンドの石言葉は『永遠』と『幸せ』ということに気付いた貴族たちは、エルヴィスがアナベルをとても大切に想っていることを察する。
ダヴィドとアナベルがイレインの前に立つ。
イレインは目元を細めて、ダヴィドを見つめた後に睨むようにアナベルへ視線を向けた。
「ごきげんよう、デュナン公爵。そちらの方が、『今回』の寵姫ですか?」
イレインは扇子を閉じて立ち上がると、ダヴィドに対してにこりと笑いながら尋ねた。
ダヴィドはうなずいて、そっとアナベルの背中を押した。
アナベルはちらりと彼を見た後に、イレインに向かい一歩近付き、カーテシーをした。……その自然な動作は、周りにいた貴族たちを驚かせた。
「踊り子だったのだろう?」
「あんなに綺麗なカーテシーを見ることができるとは……」
感心したような貴族の声を聞き、イレインはこほん、とわざと咳払いをした。
「アナベル・ロラ・アンリオと申します」
ぴくり、とイレインの眉が跳ねた。
「どうですか、美しいでしょう?」
ダヴィドがそう尋ねると、イレインは困ったように眉を下げながら、扇子を再び広げて口元を覆い隠した。
「ええ、本当に美しい女性で驚きましたわ。……陛下も隅に置けませんわね。……それにしても、ただの踊り子と聞いていたのですが……?」
「ああ、それは陛下の計らいでして。彼女の故郷はなんと十五年前に焼かれたらしく……、五歳の女の子が森の中で行き倒れになっていたところを、旅芸人の一座が助けたらしいのです」
ダヴィドの言葉に、貴族たちは「まあ」、や、「幼い頃から災難でしたのね」などの同情の声が集まる。
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