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1章:踊り子 アナベル
踊り子 アナベル 6-2
しおりを挟むアナベルは、考えを巡らせた。このままこの旅芸人の一座に入ることと、孤児院に入ること。アナベルにとってはどちらのメリットも、デメリットもわからないことだった。ただ、旅芸人と言うことは少なからず、様々な情報を得られるのではないかと考えたのだ。
「……たくさん、練習します。だから、アナベルをこの一座に入れてください!」
村を焼いた犯人を捜すためにも、情報は多いほうが良い。アナベルは頭を下げてこの一座に入ることを懇願した。
ミシェルとクレマンは、互いに顔を見合わせて、それからクレマンがアナベルの脇の下に手を入れてひょいと持ち上げる。そして、自分の肩に座らせると、大きな声でこう言った。
「新人のアナベルだ! 徹底的にいろいろ教え込め!」
わぁぁああ、と歓声が上がった。どうやら、アナベルのことを歓迎してくれるようだった。そして、村にいた時はあれだけ人見知りだったのに、ここの人たちとは普通に話せている自分に気付いた。
(きっと、ショックなことが多すぎたのね……)
自分を花嫁にしようとした貴族、魔物に襲われて崖から落ちたこと、焼かれた村……。そのすべてが、アナベルの心に強いショックを与えてしまい、心身ともに疲労していた。
そんなアナベルに救いの手を差し伸べたこの旅芸人一座に感謝しつつも、アナベルは自分の目的のためにがんばろうと心の中で決意を固める。
「これからよろしくねぇ、アナベルちゃん」
「よろしくお願いします、ミシェルさん」
ミシェルとアナベルが握手をすると、
「あ、ミシェルだけずるーい」とみんなアナベルに触れようとした。
「ゲッ、こっち来るなよ!」
「座長が肩車してるのがいけないんですよー」
「わかった、わかったから……、どさくさに紛れて股間を撫でんな、尻を揉むな!」
きゃっきゃと楽し気に笑う女性たちにたじろいているクレマン。ミシェルが「おいで」と腕を広げたので、避難するようにミシェルに手を伸ばす。そして、ひょいと抱っこをされて女性たちに翻弄されているクレマンの姿を見たミシェルが肩をすくめて、
「本当、うちの座長は女性にモテモテだわー。教育に悪いだろうから、隠れてようね~」
と、アナベルを抱っこしたままテントの中に入った。
そして、テントの中に入ると、先程の若い男性がミシェルに「コートを」と渡してくれた。
「ありがとう。さっきの剣舞、どうだった?」
「え、ぁ、えっと、……とても、セクシーでした……」
「うふふ、ありがとう」
毛皮のコートを受け取ってそれを羽織ると、男性に感想を求めたミシェル。男性の感想を聞いて、パチンとウインクすると、男性は顔を真っ赤にさせてテントから出て行った。
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