【完結】四季のごちそう、たらふくおあげんせ

秋月一花

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秋のごちそう

舞茸 1話

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「――というわけで、これお裾分け」
「……うん、うん……。たくさんね……?」

 スマートフォンに娘から連絡がきて、家で待っていた恵子けいこは、訪れた娘が舞茸を山のように持ってきたことに目を見開いた。

「自然の舞茸、採れたてほやほやだよ!」
「今年こんなに舞茸採れたのね……」
「久しぶりに山に行ったらわんさか採れたって、ほくほくした顔で戻ってきたのよね。うちじゃこんなに食べられないし」

 肩をすくめる娘から舞茸を受け取り、「それじゃねー」と颯爽さっそうと去っていくのを見送る。

 相変わらず風のように素早い子だ、と感心しながら、お裾分けされた舞茸に視線を落とす。

「……じゃ、今日は舞茸ご飯にしようかね」

 ぽつりとつぶやいてから、舞茸の下準備をする。土埃を丁寧に落として、キッチンタオルできれいにしてから、石づきを切り落とし手で裂いていく。

「きれいな舞茸ね」

 感心したようにつぶやいて、次から次へと舞茸を裂いていく。さくさくと裂けるので、この作業は恵子のお気に入りだった。

 たんまりと舞茸を裂いてから、フライパンを用意してサラダ油を入れて、火にかける。そして裂いた舞茸を全部入れて、木べらでかき混ぜる。

「やっぱりめんつゆかしらね」

 舞茸の味付けをなににしようかと考えて、最初に思いついた調味料を口にした。

 めんつゆ、みりん、酒と少々の醤油で濃い目に味付けようと決める。

 舞茸ご飯と口にしたが、正確には舞茸チャーハンだ。

 舞茸に火が通り、目分量で調味料を入れていく。水分がなくなるほど炒めたら、ご飯をレンジで温めてからフライパンに入れる。

 木べらで全体を混ぜ合わせれば完成だ。簡単で美味しい舞茸ごはん。

 濃い目に味をつけることで、ただ混ぜるだけで良いのもいい。余ったご飯を冷蔵庫に入れていたので、ちょうど良かった。

「うーん、いい香り。松茸も良い香りだけど、舞茸も良いわよねぇ」

 美味しそうに漂う香りにしみじみとつぶやくと、恵子はハッとしたように顔を上げる。

 舞茸は芽衣めいの好物だと聞いていたからだ。

「食べるかどうかはわからないけれど……一応持っていきましょうか」

 そうと決めたら、今度はその舞茸ご飯をおにぎりにした。残りの舞茸はどうしようかと悩んで、ここは天ぷらか、と結論付ける。

「てんぷら粉、てんぷら粉」

 ぱたぱたと足音を立てて、てんぷら粉を探す。

「あったあった。なにかと使うわよねぇ、てんぷら粉。……あ、舞茸だけじゃなくて、さつまいもの天ぷらも一緒に持っていきましょう」

 この前スーパーで特売していたので、買ってきたさつまいもを思い出し、それも天ぷらにすることにした。
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