【完結】四季のごちそう、たらふくおあげんせ

秋月一花

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秋のごちそう

松茸 1話

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「あれまぁ、こんなにもらっていいのかい?」
「良いのよぉ。いつも美咲みさきたちがお世話になってるから。それに……今年は豊作みたいだし」

 眉を下げて微笑むのは、美咲の母である熊谷くまがい美穂みほだ。美穂は夫であるじゅんが山からってきた松茸をたんまりと持ってきた。

 それに戸惑ったように恵子けいこが美穂を見る。美穂はひらひらと手を振りながら、松茸に視線を落とす。

「ありがたくもらうわ。松茸ご飯、今年も食べられるの嬉しい」
「こればかりはねぇ。でもあんまり採れると……冷凍庫が圧迫されるのよね……」
「ああ、それは問題ね……」

 頬に手を添えて遠くを見る美穂に、納得したようにうなずく恵子。

「美味しいんだけど、余るとねぇ」
「贅沢な話なんだろうけどねぇ……」

 それでも大量に採れて、毎日松茸料理が並べば、味に飽きてしまう。そのため、食べきれない松茸は冷凍することになる。

「舞茸も採れたらお裾分けするね」
芽衣めいちゃんの好物でしょ? 良いの?」
「良いのよ。ずっと食べていたら……ね?」

 ふふ、と笑い合う美穂と恵子。

「それじゃ、いただいたから早速松茸ご飯作るわ」
「松茸ご飯も冷凍できるしね」
「冷凍庫の中身が不安になるわねぇ」
「彼岸も来るから、まんじゅうこしらえないといけないし」
「そうさねぇ。秋は美味しいものがいっぱいで困っちゃうわぁ」

 食欲の秋とはよく言ったものだ、と恵子は肩をすくめた。

「それじゃあ、また」
「はぁい。たくさんありがとうねぇ」

 松茸を置いて去っていく美穂を見送り、恵子は松茸の入った袋に顔を近付くてすぅっと大きく吸う。――毎年、この匂いをぐと秋だなぁと感じる。

「――さぁて、松茸ご飯の準備しなくちゃね」

 採れたての松茸を持ってきてくれたようで、土がついている。その土をきれいに拭き取り、ボウルと包丁を用意して虫がいないかを確認していく。

 自然のものだ。虫がいてもおかしくない。

 恵子はせっせと包丁で剥いで確認し、裂いた松茸をボウルに入れていく。

「……本当はあんまりやっちゃダメなんだけど……量が多いとねぇ……」

 ぽつりとつぶやいて、裂いた松茸のボウルに水を入れる。

 本来なら松茸の香りが薄れてしまうので、水に浸けることはしないほうが良い。

 ――が、量が量だ。

「水に浸けておけば楽なのよねぇ……虫……」

 水に浸けておけば勝手に虫が出てくる。一本や二本なら水に浸けなくてもいいだろう。

「自然の恵みに感謝して……大量に松茸ご飯作って、おにぎりして冷凍しちゃいましょう」

 めんつゆを使えば簡単だ。お米も好きなだけ。あればほんの少しもち米を入れるのもお勧めだ。

「ホイル焼きやバター醤油も美味しいのよね。……まぁ、きのこ全般に言えることかしら」

 松茸のしゃぐしゃぐとした食感や、舞茸のシャキッとした食感を思い出し、恵子はふふっと微笑みを浮かべる。

「ホイル焼きには醤油をかけて食べるのが美味しいのよね。秋って美味しいものが多いわぁ」
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