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夏のごちそう
うずまきかりんとう
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ぼんやりと考え事をしているうちに、煮しめの良い香りが漂う。
「うーん、お腹空いちゃう匂いね」
小腹が空いたような気がして、煮しめが出来上がるまでにおやつを食べようとかりんとうを持ってきた。
地元で作られている、うずまきかりんとう。恵子が幼い頃から、親しまれている。
「やっぱりかりんとうと言えば、こっちのほうなのよねぇ」
黒い棒のようなかりんとうを思い浮かべ、眉を下げた恵子。うずまきかりんとうの袋を開けて、小皿に乗せ麦茶と一緒に楽しむ。
大きめのかりんとうなので、手で割って一口サイズにしてから口に運ぶ。薄くて食べやすいので、年配の方にも人気なかりんとうだ。
サクサクとした食感と、程よい甘さ。何枚でも食べられそうだが、煮しめの味見もしないといけないので、小腹が満ちるくらいで我慢し、ちらりと煮しめに視線を向ける。
「……そろそろいいかしらね?」
くつくつととした音を聞きながら、そわそわと立ち上がり、鍋の蓋を取った。
ふわっと湯気が舞う。菜箸で落とし蓋を取り、小皿に煮汁を取り一口味見してみた。
「んー……ちょっと薄かったかねぇ?」
醤油を多少足してかき混ぜる。もう一度味見をして、「ん、こんなもんだべ」と呟いて、火を止め蓋をする。
このまま放置しておけば、味がしみて美味しくなる。夕食に食べるのが楽しみだ。
「もうちょっと、食べようかしら……?」
ちらり、とうずまきかりんとうに視線を移動し、また食べ始める。
「食べ始めると止まらなくなるのよねぇ、これ」
サクサクと軽い食感を楽しみながら、恵子はかりんとうを美味しそうに食べた。
「……それにしても、今年はなんだか静かだねぇ……」
子どもたちもそれぞれの過ごし方をしているだろう。夏休み中だから、どこか旅行に行っているのかもしれない。
念のために買ってきていた花火やポチ袋の役目があるのだろうか、と一瞬考えたが、そのときはそのときだろうと首を左右に振る。
「それにしても……最近の夏は暑いねぇ」
サンサンと照りつける太陽に、恵子は両肩を上げる。あまりに暑いとなにもしたくなくなるが、家の中はエアコンで快適に過ごせる温度になっていて、動きやすい。エアコンは子どもたちが『絶対に使うこと!』と口を酸っぱくして恵子に伝えていたので、使っていた。
『気が付いたら熱中症でした、なんてことになったら、大変だべ?』
娘に言われた言葉を思い返しながら、エアコンをじっと見つめる。そして、扇風機も使っているのでそちらにも視線を向ける。
「年々、暑くなっているのは気のせいかねぇ……?」
日中は外に出るのをためらうくらいの暑さ。スマートフォンを見ても、テレビを見ても、熱中症に気をつけるようにうながしていた。
「あめさせないようにしないとねぇ……」
ちらっと煮しめを見つめる。冷蔵庫に入れておけば、悪くはならないだろう。
「夏ってあめやすいから、気をつけないと……」
痛んだ食事を食べて、食中毒にもなりたくない。改めて、しっかりと気をつけようと心に決めて、恵子はゆっくりと息を吐いた。
「うーん、お腹空いちゃう匂いね」
小腹が空いたような気がして、煮しめが出来上がるまでにおやつを食べようとかりんとうを持ってきた。
地元で作られている、うずまきかりんとう。恵子が幼い頃から、親しまれている。
「やっぱりかりんとうと言えば、こっちのほうなのよねぇ」
黒い棒のようなかりんとうを思い浮かべ、眉を下げた恵子。うずまきかりんとうの袋を開けて、小皿に乗せ麦茶と一緒に楽しむ。
大きめのかりんとうなので、手で割って一口サイズにしてから口に運ぶ。薄くて食べやすいので、年配の方にも人気なかりんとうだ。
サクサクとした食感と、程よい甘さ。何枚でも食べられそうだが、煮しめの味見もしないといけないので、小腹が満ちるくらいで我慢し、ちらりと煮しめに視線を向ける。
「……そろそろいいかしらね?」
くつくつととした音を聞きながら、そわそわと立ち上がり、鍋の蓋を取った。
ふわっと湯気が舞う。菜箸で落とし蓋を取り、小皿に煮汁を取り一口味見してみた。
「んー……ちょっと薄かったかねぇ?」
醤油を多少足してかき混ぜる。もう一度味見をして、「ん、こんなもんだべ」と呟いて、火を止め蓋をする。
このまま放置しておけば、味がしみて美味しくなる。夕食に食べるのが楽しみだ。
「もうちょっと、食べようかしら……?」
ちらり、とうずまきかりんとうに視線を移動し、また食べ始める。
「食べ始めると止まらなくなるのよねぇ、これ」
サクサクと軽い食感を楽しみながら、恵子はかりんとうを美味しそうに食べた。
「……それにしても、今年はなんだか静かだねぇ……」
子どもたちもそれぞれの過ごし方をしているだろう。夏休み中だから、どこか旅行に行っているのかもしれない。
念のために買ってきていた花火やポチ袋の役目があるのだろうか、と一瞬考えたが、そのときはそのときだろうと首を左右に振る。
「それにしても……最近の夏は暑いねぇ」
サンサンと照りつける太陽に、恵子は両肩を上げる。あまりに暑いとなにもしたくなくなるが、家の中はエアコンで快適に過ごせる温度になっていて、動きやすい。エアコンは子どもたちが『絶対に使うこと!』と口を酸っぱくして恵子に伝えていたので、使っていた。
『気が付いたら熱中症でした、なんてことになったら、大変だべ?』
娘に言われた言葉を思い返しながら、エアコンをじっと見つめる。そして、扇風機も使っているのでそちらにも視線を向ける。
「年々、暑くなっているのは気のせいかねぇ……?」
日中は外に出るのをためらうくらいの暑さ。スマートフォンを見ても、テレビを見ても、熱中症に気をつけるようにうながしていた。
「あめさせないようにしないとねぇ……」
ちらっと煮しめを見つめる。冷蔵庫に入れておけば、悪くはならないだろう。
「夏ってあめやすいから、気をつけないと……」
痛んだ食事を食べて、食中毒にもなりたくない。改めて、しっかりと気をつけようと心に決めて、恵子はゆっくりと息を吐いた。
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