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第1章 オメガ狩り
2話
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話は、昨日にまでさかのぼる。
村の異変に気付いたのは、ヴェルが農作地の岩に腰掛けて、昼の弁当をのんびりと頬張っていた時のことだ。
僅かに鼻をつく煙たい臭いが、風に乗って流れてきた。ヴェルは、すん、と鼻を鳴らした。
「ガド爺ちゃん。なんか変な臭いしない? 焦げてるような……」
ヴェルの言葉に、隣でぷかぷか煙管をふかしていたガドが笑う。
「あー? そりゃ俺の煙管だろ」
「いや。煙管の臭いじゃなくて」
「つっても、この辺に焦げるようなもん何もねえぞ。お前も知ってんだろ、こんなド田舎、盗賊すら寄り付かねえんだから」
金目のものなんてない。それが、この村の者たちの口癖だ。
全くその通りで、背後を山に、正面を森に挟まれたこの土地はどこからどう見ても清貧そのものだ。
王都のような立派な石畳や城もない。森を越えた先にある町のような、賑やかな市場もない。
人口は僅か百人足らずで、赤ん坊からお年寄りまで、みんなが顔見知りだ。
山道は国境線へと続いているが、ここからずっと南下すれば、平原から国境線へ続く道がある。今時、わざわざ山越えをする道を使う物好きなどいない。
流通はほぼなく、いわゆる「ドン詰まり」の土地だ。
それでも地下水のおかげで、大昔から水に困ることはなく、そこそこの農作地と、そこそこの家畜に恵まれ、村人たちは貧しくも慎ましやかに暮らしていた。
どの町にもあるような便利な魔導具もない。未だに火をつけるにもマッチを使っているし、雪が降れば人力で雪かきをする。風邪を引けば隣町まで行って導医に診てもらわねばならない。昔ながらの生活様式を営みたいならうってつけの場所である。
盗賊すら寄り付かない辺鄙でのどかな村。
三年前、行き倒れていたヴェルを介抱し、村の一員にしてくれた優しい村。
そう、大規模な火事でも起きない限り、こんな臭いは――
ヴェルの背筋に嫌なものが走る。
「……いや。やっぱりおかしい」
パンを口の中に押し込んで嚥下すると立ち上がった。背の高い木々のせいで村の様子は見えない。
農作地から村までは約五百メートルほどの距離だが、目をこらすと、青い空に向かって何筋かの灰色の煙が上がっている。
ヴェルは、ぶわり、と産毛が逆立つのを感じた。
かつての戦場と同じだ。大きな何かが焼ける臭い。
「ガド爺ちゃんはここにいて。俺、村の様子見てくる」
「お、おい、ヴェル?」
すると、村への一本道から、一つの小さな人影が駆けてくるのが見えた。
「おじいちゃん! ヴェルにいちゃん!」
ヴェルは思わず「ユト!」と名を呼んで駆け寄った。
十歳のユトはガドの孫であり、ヴェルが居候をしている家の隣に住んでいる。
真っ青な顔のまま走ってきたユトは、息を切らしながらヴェルに縋り付く。
「た、大変! 山のほうから急に軍隊が襲ってきた!」
「軍隊? どういうことだ?」
「わ、わからない。みんな槍持ってて、そ、それでみんなの事脅して、『オメガを出せ』って……」
ヴェルの肩がぎくりと跳ねる。
「オメガ……」
ガドとユトの視線が、ヴェルの首につけられたチョーカーに一瞬向けられる。そのチョーカーが、ただのアクセサリーではないことを、ガドもユトも、そして村の誰もが、よく知っていたからだ。
しかし、すぐにユトは続けた。
「村長さんたちは『この村にオメガなんていません。知りません』って言ったの。そしたら、あいつら村長さんの家に火をつけたんだ。オメガを出すまで一軒ずつ焼いていくって……!」
ユトの声に涙が混じり、嗚咽に変わった。どれだけ恐ろしい光景だっただろうか。
その場にヴェルがいなかったので、村長たちは庇おうとしたのだろう。隙を見て逃げ出したユトが、ここまで知らせてくれたのだ。
ヴェルはユトの頭を撫でた。
「怖かったな。よくここまで頑張った」
ガドは神妙な面持ちで言う。
「ヴェル、このまま逃げろ。森の中を突っ切って、町の方まで行くんだ」
「ガド爺ちゃん……」
「何で軍の奴らが『オメガ狩り』なんて古臭いことをやってるか知らんが、ここにいたら危険だ」
ヴェルは一瞬、ガドとユトの顔を見やった。そして、重苦しい空気をわざと紛らわせるように苦笑する。
「ガド爺ちゃん、分かってないなぁ。軍の連中がこんな小さな村をわざわざ狙って襲ってるってことは、ある程度調査されてたってことだよ」
「調査……?」
「そう。つまり連中はこの村にオメガ……、俺がいることを知ってる。なのに嘘ついて隠したら、村の人は皆殺しにされる」
さらりと言われた「皆殺し」という単語に、ガドはぎょっと目を見張る。わざと驚かそうとして言っているわけではない。ヴェルはただ、淡々と事実を言っているのだと分かる。
ユトは涙をぬぐいながら困惑したように問う。
「ヴェルにいちゃん、何でそんなに平気そうなの?」
「平気じゃないけど、少しは慣れてるかな」
「慣れてる?」
「……この村に来る前は、戦場にいたからね。俺」
え、と目を丸くするユトに「言ってなくてごめん」と謝りながら、ヴェルはユトを引き離した。そしてガドへと向き直る。
「ガド爺ちゃん、三年間ありがとう」
「ヴェル、今からでも遅くない。町へ……」
「ダメだ。ガド爺ちゃんなら分かるだろ」
ガドの顔が泣きだしそうに歪む。苦々しい表情で俯き、ユトの肩を引き寄せようとした。
しかしユトは「いや!」と叫んでヴェルの腰にしがみつく。
「ヴェルにいちゃん行かないでよ! 殺されちゃうよ!」
「大丈夫大丈夫。殺されないよ、オメガだから」
――そう、すぐには殺されない。そして殺される方がいっそマシなのかもしれない、という本音を隠したままヴェルは泣きじゃくるユトを宥めた。
三年前、行き倒れていた自分を見つけてくれたのは当時七歳のユトだった。兄を国境戦争で亡くしていたユトは、実の兄弟のようにヴェルに懐いてくれた。
ユトも、ヴェルに空き家を貸してくれたユトの両親も、畑仕事のすべてを教え込んでくれたガドも、受け入れてくれた村の人々も、感謝してもしきれない。
ヴェルは目線をガドへ送る。ガドは沈痛な面持ちのまま、ユトを引き剥がした。
「ヴェルにいちゃん!」
泣き腫らした顔で叫ぶユトを置いて、ヴェルは振り向くことなく、村までの道を駆け出した。その背に何度も「やだぁ」と幼い悲鳴が降り注ぐ。
ごめん、とヴェルは口の中で謝った。
(ごめんな、ユト)
だが、ヴェルの翡翠の目に迷いはなく、真っ直ぐに村の方へと向けられていた。
村の異変に気付いたのは、ヴェルが農作地の岩に腰掛けて、昼の弁当をのんびりと頬張っていた時のことだ。
僅かに鼻をつく煙たい臭いが、風に乗って流れてきた。ヴェルは、すん、と鼻を鳴らした。
「ガド爺ちゃん。なんか変な臭いしない? 焦げてるような……」
ヴェルの言葉に、隣でぷかぷか煙管をふかしていたガドが笑う。
「あー? そりゃ俺の煙管だろ」
「いや。煙管の臭いじゃなくて」
「つっても、この辺に焦げるようなもん何もねえぞ。お前も知ってんだろ、こんなド田舎、盗賊すら寄り付かねえんだから」
金目のものなんてない。それが、この村の者たちの口癖だ。
全くその通りで、背後を山に、正面を森に挟まれたこの土地はどこからどう見ても清貧そのものだ。
王都のような立派な石畳や城もない。森を越えた先にある町のような、賑やかな市場もない。
人口は僅か百人足らずで、赤ん坊からお年寄りまで、みんなが顔見知りだ。
山道は国境線へと続いているが、ここからずっと南下すれば、平原から国境線へ続く道がある。今時、わざわざ山越えをする道を使う物好きなどいない。
流通はほぼなく、いわゆる「ドン詰まり」の土地だ。
それでも地下水のおかげで、大昔から水に困ることはなく、そこそこの農作地と、そこそこの家畜に恵まれ、村人たちは貧しくも慎ましやかに暮らしていた。
どの町にもあるような便利な魔導具もない。未だに火をつけるにもマッチを使っているし、雪が降れば人力で雪かきをする。風邪を引けば隣町まで行って導医に診てもらわねばならない。昔ながらの生活様式を営みたいならうってつけの場所である。
盗賊すら寄り付かない辺鄙でのどかな村。
三年前、行き倒れていたヴェルを介抱し、村の一員にしてくれた優しい村。
そう、大規模な火事でも起きない限り、こんな臭いは――
ヴェルの背筋に嫌なものが走る。
「……いや。やっぱりおかしい」
パンを口の中に押し込んで嚥下すると立ち上がった。背の高い木々のせいで村の様子は見えない。
農作地から村までは約五百メートルほどの距離だが、目をこらすと、青い空に向かって何筋かの灰色の煙が上がっている。
ヴェルは、ぶわり、と産毛が逆立つのを感じた。
かつての戦場と同じだ。大きな何かが焼ける臭い。
「ガド爺ちゃんはここにいて。俺、村の様子見てくる」
「お、おい、ヴェル?」
すると、村への一本道から、一つの小さな人影が駆けてくるのが見えた。
「おじいちゃん! ヴェルにいちゃん!」
ヴェルは思わず「ユト!」と名を呼んで駆け寄った。
十歳のユトはガドの孫であり、ヴェルが居候をしている家の隣に住んでいる。
真っ青な顔のまま走ってきたユトは、息を切らしながらヴェルに縋り付く。
「た、大変! 山のほうから急に軍隊が襲ってきた!」
「軍隊? どういうことだ?」
「わ、わからない。みんな槍持ってて、そ、それでみんなの事脅して、『オメガを出せ』って……」
ヴェルの肩がぎくりと跳ねる。
「オメガ……」
ガドとユトの視線が、ヴェルの首につけられたチョーカーに一瞬向けられる。そのチョーカーが、ただのアクセサリーではないことを、ガドもユトも、そして村の誰もが、よく知っていたからだ。
しかし、すぐにユトは続けた。
「村長さんたちは『この村にオメガなんていません。知りません』って言ったの。そしたら、あいつら村長さんの家に火をつけたんだ。オメガを出すまで一軒ずつ焼いていくって……!」
ユトの声に涙が混じり、嗚咽に変わった。どれだけ恐ろしい光景だっただろうか。
その場にヴェルがいなかったので、村長たちは庇おうとしたのだろう。隙を見て逃げ出したユトが、ここまで知らせてくれたのだ。
ヴェルはユトの頭を撫でた。
「怖かったな。よくここまで頑張った」
ガドは神妙な面持ちで言う。
「ヴェル、このまま逃げろ。森の中を突っ切って、町の方まで行くんだ」
「ガド爺ちゃん……」
「何で軍の奴らが『オメガ狩り』なんて古臭いことをやってるか知らんが、ここにいたら危険だ」
ヴェルは一瞬、ガドとユトの顔を見やった。そして、重苦しい空気をわざと紛らわせるように苦笑する。
「ガド爺ちゃん、分かってないなぁ。軍の連中がこんな小さな村をわざわざ狙って襲ってるってことは、ある程度調査されてたってことだよ」
「調査……?」
「そう。つまり連中はこの村にオメガ……、俺がいることを知ってる。なのに嘘ついて隠したら、村の人は皆殺しにされる」
さらりと言われた「皆殺し」という単語に、ガドはぎょっと目を見張る。わざと驚かそうとして言っているわけではない。ヴェルはただ、淡々と事実を言っているのだと分かる。
ユトは涙をぬぐいながら困惑したように問う。
「ヴェルにいちゃん、何でそんなに平気そうなの?」
「平気じゃないけど、少しは慣れてるかな」
「慣れてる?」
「……この村に来る前は、戦場にいたからね。俺」
え、と目を丸くするユトに「言ってなくてごめん」と謝りながら、ヴェルはユトを引き離した。そしてガドへと向き直る。
「ガド爺ちゃん、三年間ありがとう」
「ヴェル、今からでも遅くない。町へ……」
「ダメだ。ガド爺ちゃんなら分かるだろ」
ガドの顔が泣きだしそうに歪む。苦々しい表情で俯き、ユトの肩を引き寄せようとした。
しかしユトは「いや!」と叫んでヴェルの腰にしがみつく。
「ヴェルにいちゃん行かないでよ! 殺されちゃうよ!」
「大丈夫大丈夫。殺されないよ、オメガだから」
――そう、すぐには殺されない。そして殺される方がいっそマシなのかもしれない、という本音を隠したままヴェルは泣きじゃくるユトを宥めた。
三年前、行き倒れていた自分を見つけてくれたのは当時七歳のユトだった。兄を国境戦争で亡くしていたユトは、実の兄弟のようにヴェルに懐いてくれた。
ユトも、ヴェルに空き家を貸してくれたユトの両親も、畑仕事のすべてを教え込んでくれたガドも、受け入れてくれた村の人々も、感謝してもしきれない。
ヴェルは目線をガドへ送る。ガドは沈痛な面持ちのまま、ユトを引き剥がした。
「ヴェルにいちゃん!」
泣き腫らした顔で叫ぶユトを置いて、ヴェルは振り向くことなく、村までの道を駆け出した。その背に何度も「やだぁ」と幼い悲鳴が降り注ぐ。
ごめん、とヴェルは口の中で謝った。
(ごめんな、ユト)
だが、ヴェルの翡翠の目に迷いはなく、真っ直ぐに村の方へと向けられていた。
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