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プロローグ
0 神が創りし英雄
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今から5年前のことである。他大陸に暮らしていた魔族が突如、人が住む大陸を襲った。目につく人間を喰い散らし、娯楽とばかりに殺した。それは老若男女関わらず、人間というだけで。
もちろん、人間もやられるばかりではない。各国は国軍を使い、国民を守ろうと躍起になったが、魔族の圧倒的な強さと数に負け戦が続いた。遂には国に縛られない自由なハズの冒険者も戦いに投じたが結果は変わることがなかった。
そして、1年がたった頃。1人の英雄が魔族を撃退したのである。
上級魔族によって隠されていた陽の光を取り戻したその英雄の名を、誰も知らない。姿を知るものも少ない。謎に包まれた英雄はミレーネ国王によって開催された表彰式で姿を現すはずだった。しかし現れることはなく、英雄は忽然と姿を消した。
「.........。」
ミレーネ国の端に位置する都市の図書館で私は読んでいた本を閉じた。題名は『神が創りし英雄』。魔族襲来時をえがいたこの作品には『英雄』について書かれていた。
...そんな人いたんだなぁ。生きるだけで精一杯だったから分からなかった。
私は転生者だ。平和な日本で暮らしてた高校生だったが不幸というかある種のアニメ的ギャグが重なって死んだ。
あの日は風を浴びながら本読みたいと思って屋上行ったのだ。けれど。先客がいた。
靴の色からして一つ上の学年だったもので諦めて教室に戻ろうとした。ら、男の先輩同士がキスした。
「!???」
現実世界でそんなものを見た私は思わず扉にぶつかって大きな音をだしてしまったのだ。
私は腐女子ではない。けれど同性同士の恋愛に批判的なわけではない。でも、さすがに生で見てしまって動揺し、逃げの一手を打とうとした。が、流石に必死の異性は足が速すぎて、腕つかまれて屋上に逆戻り。フェンスに押しつけられて、壁ゴンされてしまった。いや壁じゃないか。フェンスゴンされた。多分口止めに脅そうとしたんだと思う。私も見られたらそれくらいはやっておく。だけど、本当に運の悪いことに、フェンスが軋んで外れてしまった。
驚いた私と、私にフェンスゴンした先輩はゆっくりと宙に投げ出された。
走馬灯のようなそうでもないような。ゆっくりと移り変わる景色に、心臓の底がヒヤッとした。それは死んでしまった今でも覚えている。でも、その移り変わる景色に、驚いた顔で目を見開く先輩がいた。
本当に、本当に馬鹿な私は。でも、もう自分の手がフェンスに届かないのは分かってて。なら、取れる方法は、もはやひとつしかないように思えた。
先輩を思いっきり押して屋上に、正確には屋上にいるほかの先輩に向かって戻そうとした。
先輩が助かったかはわからない。そして私は物理の気まぐれもないまま、加速して落ちていった。
そんなもんで、この世界にいる。初めはなんにも分からなかった。話されている言葉も書いてある言葉も。道具をどう使うかさえ分からなかった。でも、必死に理解して覚えて、やっと、この世界に馴染めたんだ。
父さんと母さんは優しかった。普通の子供よりも言葉がたどたどしい私に根気強く色んなことを教えてくれた。普通なら、もしくは元の世界なら発達障害と診断されたって仕方ないくらいには、私は子供としてあまりに未熟だった。ひとえに家族の愛に支えられたのだ。それをどうしようもなく実感したときは、泣きながら両親へ抱き着いたものだ。
この世界には魔法がある。それを教えてもらった時、「剣と魔法のファンタジーだ!」と喜んだ。炎魔法とか氷魔法とか。なんだそれかっこいいなと。
私は5歳の時、魔力検査に行った。全員が全員魔法を使えるわけではないと知って少し落ち込んだのはベッドの上のクマむすびだけが知っている。
魔力があると知った。
そうしたら魔力を測ってくれた神父様に呼ばれた。曰く、魔力がある者は王都に行き学園で学ばなければならない、と。
世間的に、私は5歳だ。親元を離れるのは苦痛だし、1人知らない場所で暮らすなんて嫌がって当然だった。人間発達学的に見ても、親元から5歳児を引き離すなんて悪影響しかない。いくら私が精神年齢が高いと言っても親はそれを知らないし、私も一人で知らないところへ行くのは嫌だった。
父さんと母さんと私と神父さんは話し合って、魔力があるのを隠すことにした。まぁ、私の場合、行きたくないと言っただけだけど。
それから3年たち私が8歳になった時。学園から迎えが来た。
なんでも神父様の部屋を掃除していたシスターの1人が私の診断書を見て学園に送ったらしい。正義感の強い人だったから、国の方針に従っただけだろう。悪いことじゃない。悪いことじゃないけど、私や両親を傷つける行為ではあった。おまけに秘匿してくれた神父さんにも害が及ぶかもしれない行為。
神父様と両親は行かなくていいと最後まで言ってくれたけど、ご近所にバレてしまったから。人の目と口が怖いから、私は行くことにしたのだ。
そして、学を修め、国軍の魔法部隊に入り少し経った時にあの戦争だ。私は大きな怪我がなく帰ってこれたが、私のいた部隊の中には死んだ人も多かった。
今は軍をやめて故郷に戻り、心の傷も少しずつ治していこうと思っていたのだ。
もちろん、人間もやられるばかりではない。各国は国軍を使い、国民を守ろうと躍起になったが、魔族の圧倒的な強さと数に負け戦が続いた。遂には国に縛られない自由なハズの冒険者も戦いに投じたが結果は変わることがなかった。
そして、1年がたった頃。1人の英雄が魔族を撃退したのである。
上級魔族によって隠されていた陽の光を取り戻したその英雄の名を、誰も知らない。姿を知るものも少ない。謎に包まれた英雄はミレーネ国王によって開催された表彰式で姿を現すはずだった。しかし現れることはなく、英雄は忽然と姿を消した。
「.........。」
ミレーネ国の端に位置する都市の図書館で私は読んでいた本を閉じた。題名は『神が創りし英雄』。魔族襲来時をえがいたこの作品には『英雄』について書かれていた。
...そんな人いたんだなぁ。生きるだけで精一杯だったから分からなかった。
私は転生者だ。平和な日本で暮らしてた高校生だったが不幸というかある種のアニメ的ギャグが重なって死んだ。
あの日は風を浴びながら本読みたいと思って屋上行ったのだ。けれど。先客がいた。
靴の色からして一つ上の学年だったもので諦めて教室に戻ろうとした。ら、男の先輩同士がキスした。
「!???」
現実世界でそんなものを見た私は思わず扉にぶつかって大きな音をだしてしまったのだ。
私は腐女子ではない。けれど同性同士の恋愛に批判的なわけではない。でも、さすがに生で見てしまって動揺し、逃げの一手を打とうとした。が、流石に必死の異性は足が速すぎて、腕つかまれて屋上に逆戻り。フェンスに押しつけられて、壁ゴンされてしまった。いや壁じゃないか。フェンスゴンされた。多分口止めに脅そうとしたんだと思う。私も見られたらそれくらいはやっておく。だけど、本当に運の悪いことに、フェンスが軋んで外れてしまった。
驚いた私と、私にフェンスゴンした先輩はゆっくりと宙に投げ出された。
走馬灯のようなそうでもないような。ゆっくりと移り変わる景色に、心臓の底がヒヤッとした。それは死んでしまった今でも覚えている。でも、その移り変わる景色に、驚いた顔で目を見開く先輩がいた。
本当に、本当に馬鹿な私は。でも、もう自分の手がフェンスに届かないのは分かってて。なら、取れる方法は、もはやひとつしかないように思えた。
先輩を思いっきり押して屋上に、正確には屋上にいるほかの先輩に向かって戻そうとした。
先輩が助かったかはわからない。そして私は物理の気まぐれもないまま、加速して落ちていった。
そんなもんで、この世界にいる。初めはなんにも分からなかった。話されている言葉も書いてある言葉も。道具をどう使うかさえ分からなかった。でも、必死に理解して覚えて、やっと、この世界に馴染めたんだ。
父さんと母さんは優しかった。普通の子供よりも言葉がたどたどしい私に根気強く色んなことを教えてくれた。普通なら、もしくは元の世界なら発達障害と診断されたって仕方ないくらいには、私は子供としてあまりに未熟だった。ひとえに家族の愛に支えられたのだ。それをどうしようもなく実感したときは、泣きながら両親へ抱き着いたものだ。
この世界には魔法がある。それを教えてもらった時、「剣と魔法のファンタジーだ!」と喜んだ。炎魔法とか氷魔法とか。なんだそれかっこいいなと。
私は5歳の時、魔力検査に行った。全員が全員魔法を使えるわけではないと知って少し落ち込んだのはベッドの上のクマむすびだけが知っている。
魔力があると知った。
そうしたら魔力を測ってくれた神父様に呼ばれた。曰く、魔力がある者は王都に行き学園で学ばなければならない、と。
世間的に、私は5歳だ。親元を離れるのは苦痛だし、1人知らない場所で暮らすなんて嫌がって当然だった。人間発達学的に見ても、親元から5歳児を引き離すなんて悪影響しかない。いくら私が精神年齢が高いと言っても親はそれを知らないし、私も一人で知らないところへ行くのは嫌だった。
父さんと母さんと私と神父さんは話し合って、魔力があるのを隠すことにした。まぁ、私の場合、行きたくないと言っただけだけど。
それから3年たち私が8歳になった時。学園から迎えが来た。
なんでも神父様の部屋を掃除していたシスターの1人が私の診断書を見て学園に送ったらしい。正義感の強い人だったから、国の方針に従っただけだろう。悪いことじゃない。悪いことじゃないけど、私や両親を傷つける行為ではあった。おまけに秘匿してくれた神父さんにも害が及ぶかもしれない行為。
神父様と両親は行かなくていいと最後まで言ってくれたけど、ご近所にバレてしまったから。人の目と口が怖いから、私は行くことにしたのだ。
そして、学を修め、国軍の魔法部隊に入り少し経った時にあの戦争だ。私は大きな怪我がなく帰ってこれたが、私のいた部隊の中には死んだ人も多かった。
今は軍をやめて故郷に戻り、心の傷も少しずつ治していこうと思っていたのだ。
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