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第1話 シーナとジョー
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椎名は空の上にいた。
ロボットのコックピットの中だが、コックピット内は周囲360度透過して、今の椎名はまるで空中に座っているかのよう。
「本当にこんなロボットに乗って戦闘をするのかよ……」
上には蒼天、下には地球とは違う世界の地面、前後左右には味方の青色のロボット。
これがゲームなら、最高峰のリアリティと臨場感だ。
しかし、これはまごうことなき現実。
「やるしかないんだよな……」
前方に空を飛ぶ茶色のロボットの姿が見えてきた。
敵国のラブリオンに間違いない。
コックピットの中、椎名の背中に冷たい汗が流れる。
(俺はこれから本当にこんなロボットで戦うんだ……)
迫りくる敵を前に、椎名の頭には、今思い返しても信じられない、この世界に召喚された時の記憶が蘇ってくる。
◇ ◇ ◇ ◇
学校の庭の桜の花がすべて散り、もはや以前の面影など微塵も感じさせないほどに緑の葉が覆い尽くしてしまった頃。この春で高校二年になった片桐椎名(かたぎり しいな)は、赤く輝く夕日をただ純粋に美しいとは思いながらも、その西日の眩しさに辟易しながら、下駄箱を出て自転車置き場へと向かっていた。
帰宅部である椎名の下校がこんな時間になってしまったのは、教室で友達といつまでもくだらない話をしていたためである。
「ちぇっ。無駄な時間を使ってしまった。これじゃ、ゲーセン寄ってる時間も……ん?」
日差しから顔を背けながら歩いていた椎名だったが、自転車置き場の片隅にたたずむ可憐な花を目に留め、足を止めた。
「美和ちゃん……」
高揚し耳まで熱くなるのを感じながら、ヒナゲシを思わせるその女の子の名前を我知らず呟く。
小瀬野美和(おぜの みわ)──それがその娘(こ)のフルネーム。
椎名は一年の時から彼女と同じクラスで、密かにほのかな想い──というよりも、かなり熱烈な想いを寄せていた。しかし、普段は強気だがこと恋愛に関しては奥手な椎名は、去年は結局、告白どころかまともな会話さえほとんどできないまま終わってしまっていた。だが、幸運にも再び同じクラスになれた今年こそは、なんとか少しでも仲を進展させようと思いつつ日々を過ごしてきている。
「やっぱり美和ちゃんは可愛いな。こうやって見てるだけで幸せな気分になれるよ」
ぽわーんとした頭で自分の世界に浸っていた椎名だったが、美和のもじもじしたおかしな様子に気づき、注意を彼女の周りにも向けた。
どうやら、椎名の場所からでは死角になる美和の対面に誰かがいるようである。
「美和ちゃんの友達か?」
何か気になる椎名は、その相手が見える位置に、向こうに気づかれないようにしながら移動する。
まず見えたのは、青みがかったセーラー服の色ではなく、学生服の黒色。
(相手は女の子じゃなく男なのかよ!?)
男友達イコール彼氏と単純に考えてしまう椎名の動悸は、いきなり臨界点にまで達する。知らぬうちに握り締めた手の平が汗ばむのを感じながら、恐る恐るその男子生徒の顔に目をやった。
「────!!」
大きく見開かれる椎名の目。その目に映るのはいやというほど知った男の顔。
「……ジョー」
明らかな嫌悪感を含んだ、呻きにも似た呟きが椎名の口から漏れた。
美和の前に立っていた男の名は霧島丈(きりしま じょう)。
丈は椎名の幼なじみで、昔はいつも二人一緒に遊んだものだった。だが、女性を異性として意識するようになった頃から、二人の親交は浅くなった──というか、丈の態度は以前と変わりないが、椎名が丈を避けるようになった。
それというのも、椎名は身長こそ高かったが、取り立ててどうこう言う程顔がいいわけでもなければ、学校の成績も真ん中程度。スポーツも、体力はあるが器用さに欠け、クラスのヒーローになれる程ではない。
それに比べて丈は、身長は百八十を越え、男が見ても見惚れるほどの美形で、長く伸ばした髪もオタク風にはならずセクシーに感じられる。成績も常に学年で3番以内。そのうえ、クラブにこそ所属していないものの、何をやらせても各クラブのレギュラークラスに引けを取らない程のスポーツマン。
そんな二人に対する女の子の視線に歴然たる差が生じるのは道理。側にいれば常に丈と比較されてしまう椎名が、丈を避けるようになるのも仕方のないことだと言えた。
そして、今も椎名の頭の中には、丈にまつわるかつての嫌な思い出が蘇ってきていた。
小学五年の時の初恋の女の子。期待に胸を膨らませたバレンタインデイ。しかし、自分には義理チョコの一つもなし。代わりに丈には手作りチョコ。
中一のある日の下校時。寒空の中、なけなしの勇気を振り絞って告白しようと校門で二時間待ち。出てきたその娘の隣を一緒に歩くは丈。思わず身を隠す自分は塀の陰でクシャミ一つ。
それだけではない。椎名がいいなと思った女の子は、ほとんど例外なしに丈を見る目がハートマークになっていて、自分が入り込む余地など皆無だったのだ。それこそ、毎回毎回。
「あいつ、また俺の大切な人を取る気かよ!!」
別に丈は今まで自分から椎名の想い人にモーションをかけたことはなく、すべて女の子の方からのアプローチなのだが、恋に連敗中の椎名には、それは言っても無駄である。恋は人を盲目にさせるのだ。だが、その椎名はこれから更に厳しい現実を見ることになる。
夕陽のせいだけではない紅い顔をした美和が、落ち着きのない仕草で鞄の中から封筒を取り出した。
「な、なんだあのピンクの可愛い封筒は? ま、まさかラブレター!? いや、そんなはずはない! きっと学校のプリントか何かが入ってるだけに違いない!」
バットで殴られたようなショックを受けながらも、椎名は今の現象に対してなんとか都合のいい解釈をしようと努力する。そして、目を皿のようにし、隠れていることも忘れて身を乗り出して、嫌な妄想を否定するための証拠を見つけようとした。
その向こうでは、丈が手渡された女の子然としたその封筒を、値踏みするかのように裏表とひらひらさせながら見ている。
その時、覗き見する椎名の目に見たくないものが飛び込んできた。距離があっても、何故かこういう時はそういったものがやけにはっきりと見えてしまったりするのだ。
「────!! あの可愛いピンクのハート型のシールは!」
ぐわぁぁぁぁぁぁん!!
現役メジャーリーガーにフルスイングで殴られたかのような衝撃が脊髄を通って椎名の脳に響いてきた。
向こうでは、病気かと思う程に顔を紅潮させた美和が丈の元から走り去って行く。
……もう決定的だった。
「そんな馬鹿な……。美和ちゃんが、美和ちゃんが……」
惚けた顔をして、酸欠の池の鯉のように口をパクパクさせる椎名。
その椎名の方へ、丈が恋文を鞄の中へしまいながら歩いて来た。椎名の存在に気づいていなかった丈だが、椎名の側(そば)まで来て彼の姿を目に留めて声を掛ける。
「よう、シーナじゃないか」
その親しげな言葉で椎名は我に帰った。そして、挨拶代わりに片手を挙げている丈の方に目だけを動かして、ギロリと睨む。
椎名のただならぬ様子に丈は訳がわからず、そのままの姿勢で一瞬硬直してしまった。
「お、おい。どうしたんだよ?」
風が長い髪を乱すのも気にせず幼なじみの異変を気にかける丈だが、椎名にその声は届いてはいない。
(いつもそうだ。こいつが必ずおいしいとこを持って行く。俺の好きになった人をみんな持って行く。こいつが近くにいるから俺がもてない。こいつがいるからもてないんだ!)
椎名の蓄積された恨みが憎しみに変化する。今まで押しとどめられていたものが堰を切ったかのように心の奥底から溢れてきた。羨望、嫉妬、欲望、憎悪、それらの負の感情がとめどもなく沸き上がってくる。
ふいに、まるでそれらが具現化したかような黒い靄のようなものが椎名の全身からユラユラと吹き出してきた。
「な、なんだこれは!?」
憎しみの虜になっていた椎名がその現象に気づいた。驚愕し自分の手足を見回すがそれは止まらず、吹き出た黒い靄は散ることなく椎名の周りに滞空している。混乱する椎名は訳がわからないまま目を周囲に向ける。そこには更なる驚きが待っていた。
「……空間が歪んでいる」
椎名の周りの空間は蜃気楼のごとく不安定に揺らめいていた。テレビやゲームで見た画像処理のように、辺りの自転車や校舎や遠くの家が、海中のワカメのように左右に振れて揺らめいているのだ。
我が目を疑いながら椎名は視線を正面に戻した。今まで気が動転していて気づかなかったが、そこにいる丈にも奇妙な変化が起こっていた。椎名と同じように靄のようなものが吹き出してきているのだ。ただ、椎名と明らかに違うのはその色。椎名のそれが漆黒であるのに対し、丈のそれはキラキラ光る赤色。
椎名と丈から溢れ出てきたそれらは霧のようにその空間に立ち込めると、次第に二色が混じり合い始める。
「シーナ、俺達一体……」
丈から不安げな声が漏れた瞬間、二人の足元が消失した。地面に急に穴が出現した。
穴の中はピンク色の暖かな光に満ち溢れていた。二人は落下感を感じながらも、その大らかで優しい光に包まれることで不思議と恐怖は感じなかった。
そして、母の胸の中で眠る幼時のような表情を浮かべながら、二人の意識は途絶えた。
ロボットのコックピットの中だが、コックピット内は周囲360度透過して、今の椎名はまるで空中に座っているかのよう。
「本当にこんなロボットに乗って戦闘をするのかよ……」
上には蒼天、下には地球とは違う世界の地面、前後左右には味方の青色のロボット。
これがゲームなら、最高峰のリアリティと臨場感だ。
しかし、これはまごうことなき現実。
「やるしかないんだよな……」
前方に空を飛ぶ茶色のロボットの姿が見えてきた。
敵国のラブリオンに間違いない。
コックピットの中、椎名の背中に冷たい汗が流れる。
(俺はこれから本当にこんなロボットで戦うんだ……)
迫りくる敵を前に、椎名の頭には、今思い返しても信じられない、この世界に召喚された時の記憶が蘇ってくる。
◇ ◇ ◇ ◇
学校の庭の桜の花がすべて散り、もはや以前の面影など微塵も感じさせないほどに緑の葉が覆い尽くしてしまった頃。この春で高校二年になった片桐椎名(かたぎり しいな)は、赤く輝く夕日をただ純粋に美しいとは思いながらも、その西日の眩しさに辟易しながら、下駄箱を出て自転車置き場へと向かっていた。
帰宅部である椎名の下校がこんな時間になってしまったのは、教室で友達といつまでもくだらない話をしていたためである。
「ちぇっ。無駄な時間を使ってしまった。これじゃ、ゲーセン寄ってる時間も……ん?」
日差しから顔を背けながら歩いていた椎名だったが、自転車置き場の片隅にたたずむ可憐な花を目に留め、足を止めた。
「美和ちゃん……」
高揚し耳まで熱くなるのを感じながら、ヒナゲシを思わせるその女の子の名前を我知らず呟く。
小瀬野美和(おぜの みわ)──それがその娘(こ)のフルネーム。
椎名は一年の時から彼女と同じクラスで、密かにほのかな想い──というよりも、かなり熱烈な想いを寄せていた。しかし、普段は強気だがこと恋愛に関しては奥手な椎名は、去年は結局、告白どころかまともな会話さえほとんどできないまま終わってしまっていた。だが、幸運にも再び同じクラスになれた今年こそは、なんとか少しでも仲を進展させようと思いつつ日々を過ごしてきている。
「やっぱり美和ちゃんは可愛いな。こうやって見てるだけで幸せな気分になれるよ」
ぽわーんとした頭で自分の世界に浸っていた椎名だったが、美和のもじもじしたおかしな様子に気づき、注意を彼女の周りにも向けた。
どうやら、椎名の場所からでは死角になる美和の対面に誰かがいるようである。
「美和ちゃんの友達か?」
何か気になる椎名は、その相手が見える位置に、向こうに気づかれないようにしながら移動する。
まず見えたのは、青みがかったセーラー服の色ではなく、学生服の黒色。
(相手は女の子じゃなく男なのかよ!?)
男友達イコール彼氏と単純に考えてしまう椎名の動悸は、いきなり臨界点にまで達する。知らぬうちに握り締めた手の平が汗ばむのを感じながら、恐る恐るその男子生徒の顔に目をやった。
「────!!」
大きく見開かれる椎名の目。その目に映るのはいやというほど知った男の顔。
「……ジョー」
明らかな嫌悪感を含んだ、呻きにも似た呟きが椎名の口から漏れた。
美和の前に立っていた男の名は霧島丈(きりしま じょう)。
丈は椎名の幼なじみで、昔はいつも二人一緒に遊んだものだった。だが、女性を異性として意識するようになった頃から、二人の親交は浅くなった──というか、丈の態度は以前と変わりないが、椎名が丈を避けるようになった。
それというのも、椎名は身長こそ高かったが、取り立ててどうこう言う程顔がいいわけでもなければ、学校の成績も真ん中程度。スポーツも、体力はあるが器用さに欠け、クラスのヒーローになれる程ではない。
それに比べて丈は、身長は百八十を越え、男が見ても見惚れるほどの美形で、長く伸ばした髪もオタク風にはならずセクシーに感じられる。成績も常に学年で3番以内。そのうえ、クラブにこそ所属していないものの、何をやらせても各クラブのレギュラークラスに引けを取らない程のスポーツマン。
そんな二人に対する女の子の視線に歴然たる差が生じるのは道理。側にいれば常に丈と比較されてしまう椎名が、丈を避けるようになるのも仕方のないことだと言えた。
そして、今も椎名の頭の中には、丈にまつわるかつての嫌な思い出が蘇ってきていた。
小学五年の時の初恋の女の子。期待に胸を膨らませたバレンタインデイ。しかし、自分には義理チョコの一つもなし。代わりに丈には手作りチョコ。
中一のある日の下校時。寒空の中、なけなしの勇気を振り絞って告白しようと校門で二時間待ち。出てきたその娘の隣を一緒に歩くは丈。思わず身を隠す自分は塀の陰でクシャミ一つ。
それだけではない。椎名がいいなと思った女の子は、ほとんど例外なしに丈を見る目がハートマークになっていて、自分が入り込む余地など皆無だったのだ。それこそ、毎回毎回。
「あいつ、また俺の大切な人を取る気かよ!!」
別に丈は今まで自分から椎名の想い人にモーションをかけたことはなく、すべて女の子の方からのアプローチなのだが、恋に連敗中の椎名には、それは言っても無駄である。恋は人を盲目にさせるのだ。だが、その椎名はこれから更に厳しい現実を見ることになる。
夕陽のせいだけではない紅い顔をした美和が、落ち着きのない仕草で鞄の中から封筒を取り出した。
「な、なんだあのピンクの可愛い封筒は? ま、まさかラブレター!? いや、そんなはずはない! きっと学校のプリントか何かが入ってるだけに違いない!」
バットで殴られたようなショックを受けながらも、椎名は今の現象に対してなんとか都合のいい解釈をしようと努力する。そして、目を皿のようにし、隠れていることも忘れて身を乗り出して、嫌な妄想を否定するための証拠を見つけようとした。
その向こうでは、丈が手渡された女の子然としたその封筒を、値踏みするかのように裏表とひらひらさせながら見ている。
その時、覗き見する椎名の目に見たくないものが飛び込んできた。距離があっても、何故かこういう時はそういったものがやけにはっきりと見えてしまったりするのだ。
「────!! あの可愛いピンクのハート型のシールは!」
ぐわぁぁぁぁぁぁん!!
現役メジャーリーガーにフルスイングで殴られたかのような衝撃が脊髄を通って椎名の脳に響いてきた。
向こうでは、病気かと思う程に顔を紅潮させた美和が丈の元から走り去って行く。
……もう決定的だった。
「そんな馬鹿な……。美和ちゃんが、美和ちゃんが……」
惚けた顔をして、酸欠の池の鯉のように口をパクパクさせる椎名。
その椎名の方へ、丈が恋文を鞄の中へしまいながら歩いて来た。椎名の存在に気づいていなかった丈だが、椎名の側(そば)まで来て彼の姿を目に留めて声を掛ける。
「よう、シーナじゃないか」
その親しげな言葉で椎名は我に帰った。そして、挨拶代わりに片手を挙げている丈の方に目だけを動かして、ギロリと睨む。
椎名のただならぬ様子に丈は訳がわからず、そのままの姿勢で一瞬硬直してしまった。
「お、おい。どうしたんだよ?」
風が長い髪を乱すのも気にせず幼なじみの異変を気にかける丈だが、椎名にその声は届いてはいない。
(いつもそうだ。こいつが必ずおいしいとこを持って行く。俺の好きになった人をみんな持って行く。こいつが近くにいるから俺がもてない。こいつがいるからもてないんだ!)
椎名の蓄積された恨みが憎しみに変化する。今まで押しとどめられていたものが堰を切ったかのように心の奥底から溢れてきた。羨望、嫉妬、欲望、憎悪、それらの負の感情がとめどもなく沸き上がってくる。
ふいに、まるでそれらが具現化したかような黒い靄のようなものが椎名の全身からユラユラと吹き出してきた。
「な、なんだこれは!?」
憎しみの虜になっていた椎名がその現象に気づいた。驚愕し自分の手足を見回すがそれは止まらず、吹き出た黒い靄は散ることなく椎名の周りに滞空している。混乱する椎名は訳がわからないまま目を周囲に向ける。そこには更なる驚きが待っていた。
「……空間が歪んでいる」
椎名の周りの空間は蜃気楼のごとく不安定に揺らめいていた。テレビやゲームで見た画像処理のように、辺りの自転車や校舎や遠くの家が、海中のワカメのように左右に振れて揺らめいているのだ。
我が目を疑いながら椎名は視線を正面に戻した。今まで気が動転していて気づかなかったが、そこにいる丈にも奇妙な変化が起こっていた。椎名と同じように靄のようなものが吹き出してきているのだ。ただ、椎名と明らかに違うのはその色。椎名のそれが漆黒であるのに対し、丈のそれはキラキラ光る赤色。
椎名と丈から溢れ出てきたそれらは霧のようにその空間に立ち込めると、次第に二色が混じり合い始める。
「シーナ、俺達一体……」
丈から不安げな声が漏れた瞬間、二人の足元が消失した。地面に急に穴が出現した。
穴の中はピンク色の暖かな光に満ち溢れていた。二人は落下感を感じながらも、その大らかで優しい光に包まれることで不思議と恐怖は感じなかった。
そして、母の胸の中で眠る幼時のような表情を浮かべながら、二人の意識は途絶えた。
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