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雪兎の家族話
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「本日、本社からコチラに配属になりました、桐ヶ谷龍月です。」
東京の本社からこの横浜の支社に移動になったのは理由がある
ここの営業部のエースが近々育児休暇に入る予定があり、その埋め合わせの為だ
普通、本社の人間が支社に応援で来るのは珍しいのだが、それだけの業績と社への貢献を上げている人物なのだろう
「この度はわざわざ本社からコチラへの転属ありがとうございます。桐ヶ谷さんが来て下さったこと、本当に感謝しております
俺は宮城と申します。近々家内が出産の為、半年程育児休暇を頂く予定なので、ご迷惑をお掛けいたします」
俺よりも背が高く、爽やかな笑顔が印象的な彼
一見しただけでも、出来るαだとわかってしまう
彼が、例の…
仕事の業績がよく、本社への栄転を何度も勧められるも、それを毎回断っているらしい
運命の番が居て、そのΩを最優先に考えている為に少しでも長く側に居たいって理由だけで、今の地位もかなぐり捨てて退職騒ぎになったのはある意味伝説になっていた
まぁ、当然全力で退職は止められた上に、その番にも大変怒られたと言うことまで噂になっていた
しかも、この度はめでたくも子どもを授かるという
俺とは正反対の順風満帆な人生を送っている彼に内心悪態をつく
「いえ、宮城さんの業績を考えれば当然ですよ。俺に出来ることはやりますので、育休に入るまではご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」
笑顔で握手を交わすも、内心穏やかにはいられなかった
自らこの移動に名乗りを上げたものの、目の前の人物が同じαでも格の違いを見せつけられているようで…
自分もこういう圧倒的な存在感を示すαであれば、あの元嫁とも上手く出来たのだろうか…
父親と母親の過度の期待にも叶えられたのだろうか…
可哀想なΩの弟を守れたのではないか…
運命の、番…か……
αとΩという第二の性には、他の性とは違い番という特別な絆があることは知っている
弟である雪兎にも、クズのような番は居た…
だが、番だからと言って、αにはその相手が唯一という訳ではない
Ωには唯一かもしれないが、αにとってはそうではない
ただ、運命の番となると、αにとっても特別なのだろうか?
他のΩに浮気など腐った考えを持たないほど、そのΩだけを大切に思えるのだろうか?
雪兎にも、運命の番が現れてくれたのなら、幸せな未来もあったのではないか…?
俺がその相手なら、幸せに出来たんだろうか…
俺じゃなくとも、あんなクズじゃなければ…
あんな家に産まれなければ…
雪兎は幸せになれたかもしれない…
本当に、この人を見ていると俺の今までを否定されているようで、全てが嫌になる
俺の無力さを見せ付けられている気になる
東京の本社からこの横浜の支社に移動になったのは理由がある
ここの営業部のエースが近々育児休暇に入る予定があり、その埋め合わせの為だ
普通、本社の人間が支社に応援で来るのは珍しいのだが、それだけの業績と社への貢献を上げている人物なのだろう
「この度はわざわざ本社からコチラへの転属ありがとうございます。桐ヶ谷さんが来て下さったこと、本当に感謝しております
俺は宮城と申します。近々家内が出産の為、半年程育児休暇を頂く予定なので、ご迷惑をお掛けいたします」
俺よりも背が高く、爽やかな笑顔が印象的な彼
一見しただけでも、出来るαだとわかってしまう
彼が、例の…
仕事の業績がよく、本社への栄転を何度も勧められるも、それを毎回断っているらしい
運命の番が居て、そのΩを最優先に考えている為に少しでも長く側に居たいって理由だけで、今の地位もかなぐり捨てて退職騒ぎになったのはある意味伝説になっていた
まぁ、当然全力で退職は止められた上に、その番にも大変怒られたと言うことまで噂になっていた
しかも、この度はめでたくも子どもを授かるという
俺とは正反対の順風満帆な人生を送っている彼に内心悪態をつく
「いえ、宮城さんの業績を考えれば当然ですよ。俺に出来ることはやりますので、育休に入るまではご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」
笑顔で握手を交わすも、内心穏やかにはいられなかった
自らこの移動に名乗りを上げたものの、目の前の人物が同じαでも格の違いを見せつけられているようで…
自分もこういう圧倒的な存在感を示すαであれば、あの元嫁とも上手く出来たのだろうか…
父親と母親の過度の期待にも叶えられたのだろうか…
可哀想なΩの弟を守れたのではないか…
運命の、番…か……
αとΩという第二の性には、他の性とは違い番という特別な絆があることは知っている
弟である雪兎にも、クズのような番は居た…
だが、番だからと言って、αにはその相手が唯一という訳ではない
Ωには唯一かもしれないが、αにとってはそうではない
ただ、運命の番となると、αにとっても特別なのだろうか?
他のΩに浮気など腐った考えを持たないほど、そのΩだけを大切に思えるのだろうか?
雪兎にも、運命の番が現れてくれたのなら、幸せな未来もあったのではないか…?
俺がその相手なら、幸せに出来たんだろうか…
俺じゃなくとも、あんなクズじゃなければ…
あんな家に産まれなければ…
雪兎は幸せになれたかもしれない…
本当に、この人を見ていると俺の今までを否定されているようで、全てが嫌になる
俺の無力さを見せ付けられている気になる
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