【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

雪兎の家族話

10

なんとか定時に仕事を終わらせ、不安を胸に待ち合わせ場所である公園へと向かった
今までこんな緊張することはあっただろうかと思うくらい、胸がドキドキしている


待ち合わせ場所にはもう先に彼が居り、キョロキョロと俺のことを探すように見渡していた


「理央、お待たせ」
声を掛けると嬉しそうに駆け寄ってくる理央につい笑みが溢れる

「龍月たつきさん、お仕事お疲れ様！どないしたん？今日いきなり連絡くれてびっくりしたわ。あ、嫌なわけやないんやで？むしろ、めっちゃ嬉しいし！
今日バイトないから、絶対会われへん思ってたから…」

俺に抱き着きながら弾丸のように喋り掛けて来る様子に苦笑するも、よく見ると首や耳が赤くなっており、照れ隠しなのが分かる
「あ、なんか良いことでもあったとか？弟さん見つかったとか…？」
自分で言って地雷を口にしてしまったと思ったのか、申し訳なさそうな顔をするも、気になって仕方ないらしくモジモジしている

「理央、落ち着いてくれ」
理央の艶やかな髪を撫でて落ち着かせる

ずっと似てると思っていた
コロコロ変わる表情や、太陽のような明るい笑顔、自分の気持ちをはっきり言葉に出来る強い意志

何をとっても雪兎とは似ても似つかないのに…



彼の足元に跪き、胸ポケットから取り出した小さな小箱を取り出して見せる
中にはプラチナのシンプルな指輪が入っており

「理央、頼りない俺だが、一生どこまでも一緒に居て欲しい。俺の気持ち、受け取ってくれるか？」

いきなりのプロポーズに驚いて固まっている理央につい困ったように眉が下がってしまう

断られることは、ないと信じたいが、やはり自信が持てない



「と、唐突すぎるやろ！？まだ付き合っても貰えてへんのに…いきなり、そんな…龍月たつきさん、極端すぎや…
ホンマにえぇの？オレのこと一番にしてくれるん？」
戸惑いながらも、どこか期待した様子でチラチラを俺のことを見て来る姿に苦笑してしまう

理央の左手を取り指輪をゆっくり嵌め
「不安だよな…でも、理央がいいんだ。理央に、俺の番になって欲しい。嫌か？」

少し首を傾げるように問うと、一気に真っ赤な顔になってしまう理央

「嫌なわけないやん！当たり前や！あたり…オレも一生離れへん！龍月たつきのこと、大好きやから」
泣きながら抱き着いてくる愛しい存在を受け止め、人目も気にせずに口付ける


この愛しいΩを一生離さないと胸に誓って…