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海より深い愛を貴方へ〜瞳の輝きは新鮮な証〜
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僕と彼の世界は、見えない壁に隔てられている。
彼と出会ったのは昨日の早朝。
真っ白な服を着た彼。
短髪、角刈りのような髪型に無愛想な表情が印象的な彼。
でも、僕たちを見つめる目は真剣で、その目に釘付けになってしまった。
たくさんの仲間が居るのに、彼は僕をじっと見つめていた。
この透明な壁なんて存在していないみたいに、彼と僕は見つめ合った。
目が合った瞬間、彼の仏頂面が解け、優しい微笑みを浮かべている。
そのギャップに僕の心は囚われてしまった。
彼が僕にだけ見せてくれた緩んだ表情に、僕の心は打ち上げられた。
「うん。いい目をしている」
彼が頷きながら言ってくれた言葉が嬉しかった。
褒めて貰えたんだって思って、ついぐるぐると泳ぎ回って嬉しさを表現した。
仲間が僕のことを憐れむような目で見てきたけど、そんなの関係ない。
僕は彼に恋をしている。
彼の気持ちはわからないけど、他の仲間よりは少しは想ってくれているんだと思う。
新しく連れて来られた場所は、元々いた海よりもずっと狭い。
でも、ここには色々な生き物が一緒に住んでいる。
前はみんな同じ仲間しかいなかっただけに、見たこともない人と一緒にいれて楽しい。
縞模様が鮮やかで、ヒゲの長い人。
真っ黒な姿に近づくと刺されそうなトゲトゲがいっぱいの人。
ペッタンコの身体で、地面に隠れている人。
鮮やかなピンク色の鱗が綺麗な大きな人。
本当に、今まで会ったこともない生き物がこの小さな世界に沢山いる。
僕みたいな地味な青緑の混じった銀色の鱗に、黄色いヒレがあるだけの特徴のない奴、きっとすぐに飽きられてしまうんだろうな……
もっと派手で綺麗な尾鰭があればよかった……
誰の目にも止まるような、色鮮やかな鱗があればよかった……
求めても、ないものは仕方ないけれど……
ガラスに隔てられた世界から彼を見つめる。
まだお昼前なのに、たくさんの人が訪れていた。
彼は忙しそうに立ち回り、お客さんを無表情のまま相手している。
一言二言、会話はするもののすぐに黙って作業する姿がカッコ良くて、ついつい魅入ってしまう。
「なぁ、お前もしかしてあの人間に惚れているのか?」
縞模様の綺麗な人が僕に話し掛けてきた。
「う……うん。初めて会った時は怖かったけど、僕のこと褒めてくれたのが嬉しくって……。やっぱり住む世界が違うからダメだよね……」
自信なさ気に笑ってみせるも、縞模様の綺麗な人は慰めてくれた。
「……難しい恋だとおもうけど、想うのは自由なんだし頑張れよ!まぁ……オレたちの命があとどれくらいなのかはわからないけどな……」
どこか諦めたような笑みを浮かべる彼を不思議そうに見詰める。
なんでもうすぐ死んじゃうようなことを言ってるんだろう?
ここは色々な生き物が一緒に居て、新しい世界で……
まだご飯を貰ってないからお腹は空いているけど、きっともう少ししたら貰えるんだと思う。
彼は仏頂面で、愛想も良くないけど、きっと優しい人なんだと思う。
昼間の喧騒を水の中から眺めていた。
行き交うたくさんの人々。
温かな食事を楽し気に食べ、彼に「美味しい!」って、世辞の言葉を口にしている。
「夜はもっと素敵なお料理を食べれるのね」
少し年配の女性が彼に尋ねていた。
「ご希望があれば、生簀のモノからお作りしますよ」
彼の低い声が心地良い。
もっと彼の声を近くで聴きたいけど、僕と彼とでは住む世界ぎ違い過ぎる。
だから、今はこうやって眺めているだけでもいい。
時々目が合うだけでもドキドキする。
彼も、僕のことをほんの少しだけでも想ってくれてるといいな……
夜になると来ていたお客さんの雰囲気はガラッと変わった。
お昼間の喧騒はなくなり、どこか落ち着いた雰囲気を醸し出している。
カウンターに座るお客さんは、高そうなスーツを着た人が多く、お酒を嗜みながら静かに食事をしていた。
「やはり大将の腕はいいね。一つ一つ丁寧だからこそ、この味が出せる」
偉そうな雰囲気のお客さんだけど、彼が褒められているのが嬉しかった。
彼は、黙ったまま軽く会釈をしただけだったけど、いつもより少し機嫌が良かったのを僕は見逃さなかった。
良かったね。
キミが嬉しいとなんだか僕も嬉しくなっちゃう。
水槽の中を縦横無尽に泳ぎ回っていると、大きな身体に、ピンクの綺麗な鱗の人とぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっ!」
「……気を付けろ。まぁ、そう言っても此処に来た時点でどうなろうがどうでもいいが……」
全く覇気のない彼に「どうかしたの?」と声を掛けてみる。
でも、ただただ溜息を吐くだけで何も答えてはくれなかった。
「……時期にわかるさ……オレもお前も、時期に……」
彼はそう行ってゆっくりと泳いで行ってしまった。
僕は彼の背をただ見つめることしかできなかった。
彼があんなことを言っていた理由はすぐにわかった。
水槽の中に大きな網が入って来て、僕たちを追いかけてくる。
僕は捕まりたくなくて必死に泳いだ。
網が入って来れない狭い場所に潜り込んで、じっと息を潜めて過ぎ去って行くのを待つ。
水槽内に響く悲鳴と逃げ回っている人の波を身体で感じた。
やっとあの網が水面に戻っていくのを見てホッと息を付いた。
「え……ぁ……」
でも、網の中に動き回る人がいるのが見えて、僕は息を詰まらせてしまった。
縞模様が綺麗だった彼。
僕の恋を応援してくれていた彼が、網の中にいた。
「……頑張れよ」
全てを諦めた顔の彼と目が合った瞬間、小さくそう言っていた気がする。
すぐに水から上げられてしまったせいで、本当にそう言っていたのかはわからない。
でも、そんな気がした。
彼を見たのはそれが最後だった。
夜が更けてもご飯は貰えなかった。
お腹が空いて、寝ていても目が覚めてしまう。
今日見たあの光景が頭から離れない。
あの白くて大きな網に捕まったら、もう二度と戻って来れない。
彼がどうなったのかはわからないけど、怖いところに連れて行かれてしまったんだって本能が訴えてくる。
「眠れないのか?」
ピンク色の鱗の彼が静かに話し掛けてくれた。
僕は小さく頷いて、彼の側に寄り添った。
「ここに連れて来られる前にも、あれと似たモノに捕まったんだ……
僕は運良くここに連れて来て貰えたけど、また捕まるのは怖い……」
微かに震えながら、今の気持ちを言葉にする。
彼は何も言わなかったけど、きっと同じことがあったのか、ただ静かに僕の弱音を聞いてくれた。
彼に会いたい。
会って、褒めて欲しい。
彼の笑っている顔を見てみたい。
ガラスに隔てられた世界に想いを馳せ、静か過ぎる闇の中でそっと願った。
朝陽と共に、室内の電気が灯される。
彼が来たのかと、そっと物陰から隠れるように外の世界を見ていた。
知らない黒い前掛けをした人が2人、何やら大きな箱を抱えて入ってきた。
彼が調理する場所に置かれた荷物。
ふと、一人と目が合ってしまった。
「コイツ、自分が食われるってわかってんのかね?」
ケタケタと笑っているおじさんの声がなんとなく怖かった。
僕が食べられる……
確かに、この世界は弱肉強食……
大きな身体の魚にいつ食べられてもおかしくない。
でも、僕がいた海は同じ仲間しか居なかったから平和だった。
そして、ココにいる皆んなも優しい。
大きな身体の人も、僕よりも小さな身体の人も、平べったい人も、皆んな優しかった。
「あ、おはようございます。今日は何か良い品がありますか?」
扉の開く音と共に彼が入ってきた。
僕をじっと見ていたおじさんは、興味が失せたように彼の方を見てニッカリと笑みを浮かべている。
「今年のきゅうりは出来がいいぞ。ワカメとタコで酢の物にするのもいいし、味噌で食っても美味い」
箱から次々と取り出される瑞々しい野菜たち。
彼もそれを見ながら、ほんの少しだけ口の端が笑っているように見えた。
またお昼が近づくと、たくさんのお客さんがやってくる。
ココに来て3日目、お昼ご飯を食べにたくさんの人がやってくるんだということがわかった。
みんな彼が作るご飯が美味しくて、ニコニコ笑みを浮かべながら食べているのを知った。
夜になると、水槽の中の仲間が少しずつ減っていく。
あの網に捕まると、彼に殺されることを知ってしまった。
仲間が食べられている姿を見てしまった。
僕はただ怖くて、物陰に隠れて見付からないことを祈るしかできなかった。
大好きな彼だけど、怖くて仕方ない。
いつか僕も皆んなと一緒で、彼に殺されるんじゃないかって……
知らない誰かに食べられるんじゃないかって……
部屋の電気が消えるまでビクビクと怯えるしかなかった。
ここに来てどれくらい経つだろう。
ピンク色の鱗の人も、黒くてトゲトゲがいっぱいの人も、平たい人も居なくなった。
新しい仲間が入って来たけど、僕より先に消えていく。
みんなの叫び声や悲鳴が、頭に残って消えない。
真っ暗なった水槽の中で、みんなの「助けて!」って声だけが、僕の耳にこびり付いて離れなかった。
ポツンと一人だけになった水槽の中で、僕はただ一人、彼に殺される日を待った。
今日も僕は生き延びてしまった。
もうずっとご飯も食べていないから元気が出ない。
ひとりぼっちで水槽の中を漂うように泳ぐ。
室内の電気も消えて、今晩も彼が帰るのを見送る。
と、思っていたのに……
何故か彼は僕のいる水槽の前に椅子を持って来て座った。
「お前一匹だけにしてしまってごめんな……」
椅子の背を僕の方に向け、その上に顎を乗せてじっと僕の方を見ている。
僕に話し掛けているのかわからず、辺りを見渡すけど、今この水槽の中にいるのは僕一人だけ。
誰か他に人がいるわけでもない。
「お前は本当に綺麗な目をしているな……。怖い思いをさせずにさっさと食ってやるのがいいんだろうが……なんか、愛着が湧いちまってな……」
彼がまた眉を下げて笑ってくれた。
僕が彼を好きになった最初の顔。
この顔をもっと見たくて、笑って欲しくて、沢山、たくさん泳ぎ回った。
「腹減ってるよな……。本当は胃を空っぽにしとかなきゃいけないんだけどな……」
そう言って、彼は水槽の上から何かを落としてくれた。
すっごく良い匂いのするご飯。
お腹がずっと空いていた僕は夢中になって食べた。
僕が美味しそうに食べる度、彼も嬉しそうに笑ってご飯をくれる。
久しぶりに満腹になるまでご飯を食べることが出来て、元気も出てきた。
「いっぱい食ったか?さっきまで死んだ目の魚だったけど、嬉しそうだな」
僕が元気に水槽内を泳ぎ回っていると、彼も嬉しそうに笑う。
うん。彼が喜んでくれるなら……
彼に捌かれるなら、僕はもういいや。
最後は彼に食べて欲しいけど、彼が僕たちを食べるところは見たことないから……
きっとお客さんに食べられるんだろうな……
彼に殺されて、捌かれて、綺麗に盛り付けて貰えるならそれでいい。
ただ、一言だけ、伝えられるなら伝えてみたいな。
「名前、教えて欲しかったな……。僕には、名前なんてないけど……」
彼の帰った室内で、僕は一人心に決める。
もう怖くない。
胸を張ってその日を待とう。
彼が「おすすめですよ」って、僕のことを言ってくれるその日を待とう。
「大将、あの縞鯵を刺身で貰えるか?」
ダークブラウンのスーツを着た人が僕を指差している。
とうとうこの日が来てしまった。
悲しいけど、僕はもうたくさんの仲間が彼によって捌かれる姿を見て来たから、今から自分も同じようになることを悟ってしまった。
せめて、彼に食べられたかったな……
彼に美味しいって言って欲しかったな……
彼が生簀の向こうから僕のことを見てくる。
どこか寂し気な表情に、僕の胸が締め付けられる。
「大丈夫、僕はほら、新鮮だよ!あのお客さんもきっと満足してくれるよ!」
彼を元気づけたくて、水槽内を元気よく泳いで見せた。
時々水面をパチャンッて跳ねさせて、水を彼に飛ばす。
ちょっと飛ばし過ぎたかな?と不安になって彼の顔を見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。
「どうして元気になってくれないんだろう?僕は新鮮だよ?ちゃんと美味しく食べてもらえるよ?」
彼の顔を見ると不安ばかりが募ってしまって、泳ぐ元気もなくなってしまって、じっと停滞して彼を見つめる。
「………」
お客さん同士の楽し気な声と有線から流れる静かな音楽だけが店内に流れている。
彼は無言のまま、少し考えた素振りを見せ。
「……すみません、コイツは今日はお出し出来ません」
彼は困ったように眉を下げながら微笑み、お客さんに謝罪の言葉を口にしていた。
「昨晩誤って餌を与えてしまって……。元気過ぎるんで……。他に良い魚がありますので、そちらをお刺身として提供させて頂けないでしょうか?」
高級そうな木の箱に入った、柵に切り取られた仲間たち。
艶やかで、生きていた時よりも輝いているように見えた。
「ふむ、確かに今日はそっちの方が美味そうだな。大将のお任せで造りの盛り合わせを頼む」
お客さんはもう僕への興味を失ってしまったのか、木箱に並べられた仲間をキラキラした目で眺めていた。
「ごめんな……」
彼がボソッと僕だけに呟いた気がした。
僕は残念な気持ちとどこかホッとした気持ちがせめぎ合っている。
彼の手によって捌かれたい。
美味しいって言って貰いたい。
でも、今の僕はダメみたい……
昨日ご飯を食べてしまったから……
彼の手から貰えるのが嬉しくて、たくさん食べてしまったから……
悲しくて、水槽の空気が出てくるポンプの影に隠れて一人で泣いた。
もうこの水槽には僕一匹だけになってしまったから……
それなのに、僕は誰にも食べて貰えない。
誰にも必要とされていない。
彼も、僕を調理することを拒んでいたから……
このまま誰にも食べられることもなく、一人でただ死んでいくのを待つしかないって思って、涙が溢れた。
水の中だから、僕の流した涙はそのまま誰にも知られることなく水に混じってしまったけれど……
でも、胸に空いたこの気持ちを埋めることはできなかった。
「ごめん……」
営業が終わり、誰も居なくなった店内で彼は僕にポツリと言った。
「お前のこと、調理してやれなくて……」
彼の目には涙が溜まっていた。
どうして彼が泣いているのかわからない。
でも、僕は少しだけ嬉しかった。
もしかしたら、彼も僕のことを好きになってくれたんじゃないかって……
あり得ないけど、そう思ってしまったんだ。
「今晩売れ残ったら、廃棄しろって言われてるのに……。俺はお前を捌くことができない……魚に、縞鯵にこんな……」
彼の頬を一筋の涙が零れ落ちた。
僕は精一杯水面に向かって泳ぎ、パシャンッと音を立てて飛び上がった。
水が溢れ出し、彼に掛かることも気にしない。
飛び上がった勢いで、水槽の上の台に打ち上げられた。
いきなり出た外の世界はすっごく広いのに、呼吸が出来なくて苦しい。
台の上で、ピチピチと跳ねることしか出来ない僕を、彼はそっと手で拾い上げ、生簀に戻してくれた。
数回深呼吸するようにエラ呼吸をし、また彼を見つめる。
「食われずにただ捨てられるなんて、お前も嫌だよな……」
囁いた彼の顔は、もう迷いなんてなかった。
いつも真剣にまな板に向かって調理をする料理人の目だった。
うん。僕が好きになったのは、やっぱり彼だ。
僕は彼に食べて欲しい。
骨まで綺麗に食べて欲しい。
差し込まれた網に、僕は自ら入って行った。
逃げることも、暴れることも、怖がることもない。
僕は、一思いに息を止められ、彼の手で綺麗な刺身になっていく。
骨も高温の油で二度にわたって揚げられ、パリッパリの骨せんべいにされた。
出来上がった僕を見て、彼は静かに手を合わせる。
「頂きます」
誰も居ないカウンターで、彼は一口一口を丁寧に食べてくれた。
次に生まれ変わるなら、彼と同じ人間がいいな……
彼とまた出会って、恋をして……
次こそは恋人になれたらいいな……
◇ ◇ ◇
何故か心惹かれ、愛着を持ってしまった縞鯵を食べたあの日。
俺はその日を境に色々な決意を胸に秘めていた。
必ず自分の店を持つ。
俺自身が納得できる料理の腕を研く。
もっと、あのキラキラ輝いた目をした縞鯵のような、アイツみたいな魚をもっと上手く調理する。
そんな決意を胸に秘めてから数年が経った。
勤めていた店を辞め、念願の自分の店を持った。
たくさんの人に支えられ、今の店を構えることが出来た。
常連のお客さんから、「大将もそろそろ身を固めないとなぁ~」と冗談混じりに言われるも、笑って誤魔化す日々。
色々な人との出会いや別れを経験したが、何故か今も恋人を作ろうとは思えなかった。
想いを寄せてくれる人に出会っても、心のどこかで誰かを待っている。
「何を夢みがちなことを…」と友人に笑われたが、俺はいつも真剣だった。
いつまでも忘れることのできない、あのキラキラと輝いたつぶらな瞳を……
カラカラと軽い音を立てて、引き戸を開ける音が聞こえる。
「あの…、一人なんですがいいですか?」
少し高めの声の青年が入ってきた。
初めて来たせいか、こういう店に慣れていないのか、物珍しげに店内を見渡す青年に少しだけ頬を弛ませて声を掛ける。
「どうぞ。カウンターが空いていますよ」
キラキラした目が印象的な青年に、つい目がいく。
初めて会ったはずなのに、その青年の瞳から目が離せない。
「初めてこういう店に来たはずなのに、なんだか惹かれてしまって……」
ちょっと照れたように言う彼を微笑ましく思いながら、おしぼりを差し出す。
「気になるものがありましたらおっしゃってください」
おしぼりを受け取り、初夏の暑さから少し火照った身体を冷たいおしぼりが癒してくれる。
「えっと、縞鯵が食べたいです!今まで何度か挑戦したんですが、何故かどうしても食べれなかったんです……。でも、ここに来たらどうしても食べたくなってしまって……。大将さんなら美味しく作ってくれるかな?って……ワガママを言ってごめんなさい。でも、よろしくお願いします!」
どこか戸惑いつつも、元気のいい青年のつぶらな目がキラキラと輝いていた。
そんな彼を見て、無意識に口元を綻ばせ。
「かしこまりました。美味しい縞鯵をご提供させていただきます」
◇ ◇ ◇
トリュフ様@trufflechocolat様に頂いた板前さんと縞鯵くん| ू~᷄ω~᷅)₎₎...コッソリ
縞鯵くんのセクシーポーズをご堪能ください
◇ ◇ ◇
BLove様の【人外ファンタジー BLコンテスト】で書いた、どうしてこうなった人外です。| ू~᷄ω~᷅)₎₎...コッソリ
ホント、人外と聞いてゴリラ🦍かマンモス🦣か魚🐟しか思い浮かばなかった残念なヤツです。
彼と出会ったのは昨日の早朝。
真っ白な服を着た彼。
短髪、角刈りのような髪型に無愛想な表情が印象的な彼。
でも、僕たちを見つめる目は真剣で、その目に釘付けになってしまった。
たくさんの仲間が居るのに、彼は僕をじっと見つめていた。
この透明な壁なんて存在していないみたいに、彼と僕は見つめ合った。
目が合った瞬間、彼の仏頂面が解け、優しい微笑みを浮かべている。
そのギャップに僕の心は囚われてしまった。
彼が僕にだけ見せてくれた緩んだ表情に、僕の心は打ち上げられた。
「うん。いい目をしている」
彼が頷きながら言ってくれた言葉が嬉しかった。
褒めて貰えたんだって思って、ついぐるぐると泳ぎ回って嬉しさを表現した。
仲間が僕のことを憐れむような目で見てきたけど、そんなの関係ない。
僕は彼に恋をしている。
彼の気持ちはわからないけど、他の仲間よりは少しは想ってくれているんだと思う。
新しく連れて来られた場所は、元々いた海よりもずっと狭い。
でも、ここには色々な生き物が一緒に住んでいる。
前はみんな同じ仲間しかいなかっただけに、見たこともない人と一緒にいれて楽しい。
縞模様が鮮やかで、ヒゲの長い人。
真っ黒な姿に近づくと刺されそうなトゲトゲがいっぱいの人。
ペッタンコの身体で、地面に隠れている人。
鮮やかなピンク色の鱗が綺麗な大きな人。
本当に、今まで会ったこともない生き物がこの小さな世界に沢山いる。
僕みたいな地味な青緑の混じった銀色の鱗に、黄色いヒレがあるだけの特徴のない奴、きっとすぐに飽きられてしまうんだろうな……
もっと派手で綺麗な尾鰭があればよかった……
誰の目にも止まるような、色鮮やかな鱗があればよかった……
求めても、ないものは仕方ないけれど……
ガラスに隔てられた世界から彼を見つめる。
まだお昼前なのに、たくさんの人が訪れていた。
彼は忙しそうに立ち回り、お客さんを無表情のまま相手している。
一言二言、会話はするもののすぐに黙って作業する姿がカッコ良くて、ついつい魅入ってしまう。
「なぁ、お前もしかしてあの人間に惚れているのか?」
縞模様の綺麗な人が僕に話し掛けてきた。
「う……うん。初めて会った時は怖かったけど、僕のこと褒めてくれたのが嬉しくって……。やっぱり住む世界が違うからダメだよね……」
自信なさ気に笑ってみせるも、縞模様の綺麗な人は慰めてくれた。
「……難しい恋だとおもうけど、想うのは自由なんだし頑張れよ!まぁ……オレたちの命があとどれくらいなのかはわからないけどな……」
どこか諦めたような笑みを浮かべる彼を不思議そうに見詰める。
なんでもうすぐ死んじゃうようなことを言ってるんだろう?
ここは色々な生き物が一緒に居て、新しい世界で……
まだご飯を貰ってないからお腹は空いているけど、きっともう少ししたら貰えるんだと思う。
彼は仏頂面で、愛想も良くないけど、きっと優しい人なんだと思う。
昼間の喧騒を水の中から眺めていた。
行き交うたくさんの人々。
温かな食事を楽し気に食べ、彼に「美味しい!」って、世辞の言葉を口にしている。
「夜はもっと素敵なお料理を食べれるのね」
少し年配の女性が彼に尋ねていた。
「ご希望があれば、生簀のモノからお作りしますよ」
彼の低い声が心地良い。
もっと彼の声を近くで聴きたいけど、僕と彼とでは住む世界ぎ違い過ぎる。
だから、今はこうやって眺めているだけでもいい。
時々目が合うだけでもドキドキする。
彼も、僕のことをほんの少しだけでも想ってくれてるといいな……
夜になると来ていたお客さんの雰囲気はガラッと変わった。
お昼間の喧騒はなくなり、どこか落ち着いた雰囲気を醸し出している。
カウンターに座るお客さんは、高そうなスーツを着た人が多く、お酒を嗜みながら静かに食事をしていた。
「やはり大将の腕はいいね。一つ一つ丁寧だからこそ、この味が出せる」
偉そうな雰囲気のお客さんだけど、彼が褒められているのが嬉しかった。
彼は、黙ったまま軽く会釈をしただけだったけど、いつもより少し機嫌が良かったのを僕は見逃さなかった。
良かったね。
キミが嬉しいとなんだか僕も嬉しくなっちゃう。
水槽の中を縦横無尽に泳ぎ回っていると、大きな身体に、ピンクの綺麗な鱗の人とぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっ!」
「……気を付けろ。まぁ、そう言っても此処に来た時点でどうなろうがどうでもいいが……」
全く覇気のない彼に「どうかしたの?」と声を掛けてみる。
でも、ただただ溜息を吐くだけで何も答えてはくれなかった。
「……時期にわかるさ……オレもお前も、時期に……」
彼はそう行ってゆっくりと泳いで行ってしまった。
僕は彼の背をただ見つめることしかできなかった。
彼があんなことを言っていた理由はすぐにわかった。
水槽の中に大きな網が入って来て、僕たちを追いかけてくる。
僕は捕まりたくなくて必死に泳いだ。
網が入って来れない狭い場所に潜り込んで、じっと息を潜めて過ぎ去って行くのを待つ。
水槽内に響く悲鳴と逃げ回っている人の波を身体で感じた。
やっとあの網が水面に戻っていくのを見てホッと息を付いた。
「え……ぁ……」
でも、網の中に動き回る人がいるのが見えて、僕は息を詰まらせてしまった。
縞模様が綺麗だった彼。
僕の恋を応援してくれていた彼が、網の中にいた。
「……頑張れよ」
全てを諦めた顔の彼と目が合った瞬間、小さくそう言っていた気がする。
すぐに水から上げられてしまったせいで、本当にそう言っていたのかはわからない。
でも、そんな気がした。
彼を見たのはそれが最後だった。
夜が更けてもご飯は貰えなかった。
お腹が空いて、寝ていても目が覚めてしまう。
今日見たあの光景が頭から離れない。
あの白くて大きな網に捕まったら、もう二度と戻って来れない。
彼がどうなったのかはわからないけど、怖いところに連れて行かれてしまったんだって本能が訴えてくる。
「眠れないのか?」
ピンク色の鱗の彼が静かに話し掛けてくれた。
僕は小さく頷いて、彼の側に寄り添った。
「ここに連れて来られる前にも、あれと似たモノに捕まったんだ……
僕は運良くここに連れて来て貰えたけど、また捕まるのは怖い……」
微かに震えながら、今の気持ちを言葉にする。
彼は何も言わなかったけど、きっと同じことがあったのか、ただ静かに僕の弱音を聞いてくれた。
彼に会いたい。
会って、褒めて欲しい。
彼の笑っている顔を見てみたい。
ガラスに隔てられた世界に想いを馳せ、静か過ぎる闇の中でそっと願った。
朝陽と共に、室内の電気が灯される。
彼が来たのかと、そっと物陰から隠れるように外の世界を見ていた。
知らない黒い前掛けをした人が2人、何やら大きな箱を抱えて入ってきた。
彼が調理する場所に置かれた荷物。
ふと、一人と目が合ってしまった。
「コイツ、自分が食われるってわかってんのかね?」
ケタケタと笑っているおじさんの声がなんとなく怖かった。
僕が食べられる……
確かに、この世界は弱肉強食……
大きな身体の魚にいつ食べられてもおかしくない。
でも、僕がいた海は同じ仲間しか居なかったから平和だった。
そして、ココにいる皆んなも優しい。
大きな身体の人も、僕よりも小さな身体の人も、平べったい人も、皆んな優しかった。
「あ、おはようございます。今日は何か良い品がありますか?」
扉の開く音と共に彼が入ってきた。
僕をじっと見ていたおじさんは、興味が失せたように彼の方を見てニッカリと笑みを浮かべている。
「今年のきゅうりは出来がいいぞ。ワカメとタコで酢の物にするのもいいし、味噌で食っても美味い」
箱から次々と取り出される瑞々しい野菜たち。
彼もそれを見ながら、ほんの少しだけ口の端が笑っているように見えた。
またお昼が近づくと、たくさんのお客さんがやってくる。
ココに来て3日目、お昼ご飯を食べにたくさんの人がやってくるんだということがわかった。
みんな彼が作るご飯が美味しくて、ニコニコ笑みを浮かべながら食べているのを知った。
夜になると、水槽の中の仲間が少しずつ減っていく。
あの網に捕まると、彼に殺されることを知ってしまった。
仲間が食べられている姿を見てしまった。
僕はただ怖くて、物陰に隠れて見付からないことを祈るしかできなかった。
大好きな彼だけど、怖くて仕方ない。
いつか僕も皆んなと一緒で、彼に殺されるんじゃないかって……
知らない誰かに食べられるんじゃないかって……
部屋の電気が消えるまでビクビクと怯えるしかなかった。
ここに来てどれくらい経つだろう。
ピンク色の鱗の人も、黒くてトゲトゲがいっぱいの人も、平たい人も居なくなった。
新しい仲間が入って来たけど、僕より先に消えていく。
みんなの叫び声や悲鳴が、頭に残って消えない。
真っ暗なった水槽の中で、みんなの「助けて!」って声だけが、僕の耳にこびり付いて離れなかった。
ポツンと一人だけになった水槽の中で、僕はただ一人、彼に殺される日を待った。
今日も僕は生き延びてしまった。
もうずっとご飯も食べていないから元気が出ない。
ひとりぼっちで水槽の中を漂うように泳ぐ。
室内の電気も消えて、今晩も彼が帰るのを見送る。
と、思っていたのに……
何故か彼は僕のいる水槽の前に椅子を持って来て座った。
「お前一匹だけにしてしまってごめんな……」
椅子の背を僕の方に向け、その上に顎を乗せてじっと僕の方を見ている。
僕に話し掛けているのかわからず、辺りを見渡すけど、今この水槽の中にいるのは僕一人だけ。
誰か他に人がいるわけでもない。
「お前は本当に綺麗な目をしているな……。怖い思いをさせずにさっさと食ってやるのがいいんだろうが……なんか、愛着が湧いちまってな……」
彼がまた眉を下げて笑ってくれた。
僕が彼を好きになった最初の顔。
この顔をもっと見たくて、笑って欲しくて、沢山、たくさん泳ぎ回った。
「腹減ってるよな……。本当は胃を空っぽにしとかなきゃいけないんだけどな……」
そう言って、彼は水槽の上から何かを落としてくれた。
すっごく良い匂いのするご飯。
お腹がずっと空いていた僕は夢中になって食べた。
僕が美味しそうに食べる度、彼も嬉しそうに笑ってご飯をくれる。
久しぶりに満腹になるまでご飯を食べることが出来て、元気も出てきた。
「いっぱい食ったか?さっきまで死んだ目の魚だったけど、嬉しそうだな」
僕が元気に水槽内を泳ぎ回っていると、彼も嬉しそうに笑う。
うん。彼が喜んでくれるなら……
彼に捌かれるなら、僕はもういいや。
最後は彼に食べて欲しいけど、彼が僕たちを食べるところは見たことないから……
きっとお客さんに食べられるんだろうな……
彼に殺されて、捌かれて、綺麗に盛り付けて貰えるならそれでいい。
ただ、一言だけ、伝えられるなら伝えてみたいな。
「名前、教えて欲しかったな……。僕には、名前なんてないけど……」
彼の帰った室内で、僕は一人心に決める。
もう怖くない。
胸を張ってその日を待とう。
彼が「おすすめですよ」って、僕のことを言ってくれるその日を待とう。
「大将、あの縞鯵を刺身で貰えるか?」
ダークブラウンのスーツを着た人が僕を指差している。
とうとうこの日が来てしまった。
悲しいけど、僕はもうたくさんの仲間が彼によって捌かれる姿を見て来たから、今から自分も同じようになることを悟ってしまった。
せめて、彼に食べられたかったな……
彼に美味しいって言って欲しかったな……
彼が生簀の向こうから僕のことを見てくる。
どこか寂し気な表情に、僕の胸が締め付けられる。
「大丈夫、僕はほら、新鮮だよ!あのお客さんもきっと満足してくれるよ!」
彼を元気づけたくて、水槽内を元気よく泳いで見せた。
時々水面をパチャンッて跳ねさせて、水を彼に飛ばす。
ちょっと飛ばし過ぎたかな?と不安になって彼の顔を見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。
「どうして元気になってくれないんだろう?僕は新鮮だよ?ちゃんと美味しく食べてもらえるよ?」
彼の顔を見ると不安ばかりが募ってしまって、泳ぐ元気もなくなってしまって、じっと停滞して彼を見つめる。
「………」
お客さん同士の楽し気な声と有線から流れる静かな音楽だけが店内に流れている。
彼は無言のまま、少し考えた素振りを見せ。
「……すみません、コイツは今日はお出し出来ません」
彼は困ったように眉を下げながら微笑み、お客さんに謝罪の言葉を口にしていた。
「昨晩誤って餌を与えてしまって……。元気過ぎるんで……。他に良い魚がありますので、そちらをお刺身として提供させて頂けないでしょうか?」
高級そうな木の箱に入った、柵に切り取られた仲間たち。
艶やかで、生きていた時よりも輝いているように見えた。
「ふむ、確かに今日はそっちの方が美味そうだな。大将のお任せで造りの盛り合わせを頼む」
お客さんはもう僕への興味を失ってしまったのか、木箱に並べられた仲間をキラキラした目で眺めていた。
「ごめんな……」
彼がボソッと僕だけに呟いた気がした。
僕は残念な気持ちとどこかホッとした気持ちがせめぎ合っている。
彼の手によって捌かれたい。
美味しいって言って貰いたい。
でも、今の僕はダメみたい……
昨日ご飯を食べてしまったから……
彼の手から貰えるのが嬉しくて、たくさん食べてしまったから……
悲しくて、水槽の空気が出てくるポンプの影に隠れて一人で泣いた。
もうこの水槽には僕一匹だけになってしまったから……
それなのに、僕は誰にも食べて貰えない。
誰にも必要とされていない。
彼も、僕を調理することを拒んでいたから……
このまま誰にも食べられることもなく、一人でただ死んでいくのを待つしかないって思って、涙が溢れた。
水の中だから、僕の流した涙はそのまま誰にも知られることなく水に混じってしまったけれど……
でも、胸に空いたこの気持ちを埋めることはできなかった。
「ごめん……」
営業が終わり、誰も居なくなった店内で彼は僕にポツリと言った。
「お前のこと、調理してやれなくて……」
彼の目には涙が溜まっていた。
どうして彼が泣いているのかわからない。
でも、僕は少しだけ嬉しかった。
もしかしたら、彼も僕のことを好きになってくれたんじゃないかって……
あり得ないけど、そう思ってしまったんだ。
「今晩売れ残ったら、廃棄しろって言われてるのに……。俺はお前を捌くことができない……魚に、縞鯵にこんな……」
彼の頬を一筋の涙が零れ落ちた。
僕は精一杯水面に向かって泳ぎ、パシャンッと音を立てて飛び上がった。
水が溢れ出し、彼に掛かることも気にしない。
飛び上がった勢いで、水槽の上の台に打ち上げられた。
いきなり出た外の世界はすっごく広いのに、呼吸が出来なくて苦しい。
台の上で、ピチピチと跳ねることしか出来ない僕を、彼はそっと手で拾い上げ、生簀に戻してくれた。
数回深呼吸するようにエラ呼吸をし、また彼を見つめる。
「食われずにただ捨てられるなんて、お前も嫌だよな……」
囁いた彼の顔は、もう迷いなんてなかった。
いつも真剣にまな板に向かって調理をする料理人の目だった。
うん。僕が好きになったのは、やっぱり彼だ。
僕は彼に食べて欲しい。
骨まで綺麗に食べて欲しい。
差し込まれた網に、僕は自ら入って行った。
逃げることも、暴れることも、怖がることもない。
僕は、一思いに息を止められ、彼の手で綺麗な刺身になっていく。
骨も高温の油で二度にわたって揚げられ、パリッパリの骨せんべいにされた。
出来上がった僕を見て、彼は静かに手を合わせる。
「頂きます」
誰も居ないカウンターで、彼は一口一口を丁寧に食べてくれた。
次に生まれ変わるなら、彼と同じ人間がいいな……
彼とまた出会って、恋をして……
次こそは恋人になれたらいいな……
◇ ◇ ◇
何故か心惹かれ、愛着を持ってしまった縞鯵を食べたあの日。
俺はその日を境に色々な決意を胸に秘めていた。
必ず自分の店を持つ。
俺自身が納得できる料理の腕を研く。
もっと、あのキラキラ輝いた目をした縞鯵のような、アイツみたいな魚をもっと上手く調理する。
そんな決意を胸に秘めてから数年が経った。
勤めていた店を辞め、念願の自分の店を持った。
たくさんの人に支えられ、今の店を構えることが出来た。
常連のお客さんから、「大将もそろそろ身を固めないとなぁ~」と冗談混じりに言われるも、笑って誤魔化す日々。
色々な人との出会いや別れを経験したが、何故か今も恋人を作ろうとは思えなかった。
想いを寄せてくれる人に出会っても、心のどこかで誰かを待っている。
「何を夢みがちなことを…」と友人に笑われたが、俺はいつも真剣だった。
いつまでも忘れることのできない、あのキラキラと輝いたつぶらな瞳を……
カラカラと軽い音を立てて、引き戸を開ける音が聞こえる。
「あの…、一人なんですがいいですか?」
少し高めの声の青年が入ってきた。
初めて来たせいか、こういう店に慣れていないのか、物珍しげに店内を見渡す青年に少しだけ頬を弛ませて声を掛ける。
「どうぞ。カウンターが空いていますよ」
キラキラした目が印象的な青年に、つい目がいく。
初めて会ったはずなのに、その青年の瞳から目が離せない。
「初めてこういう店に来たはずなのに、なんだか惹かれてしまって……」
ちょっと照れたように言う彼を微笑ましく思いながら、おしぼりを差し出す。
「気になるものがありましたらおっしゃってください」
おしぼりを受け取り、初夏の暑さから少し火照った身体を冷たいおしぼりが癒してくれる。
「えっと、縞鯵が食べたいです!今まで何度か挑戦したんですが、何故かどうしても食べれなかったんです……。でも、ここに来たらどうしても食べたくなってしまって……。大将さんなら美味しく作ってくれるかな?って……ワガママを言ってごめんなさい。でも、よろしくお願いします!」
どこか戸惑いつつも、元気のいい青年のつぶらな目がキラキラと輝いていた。
そんな彼を見て、無意識に口元を綻ばせ。
「かしこまりました。美味しい縞鯵をご提供させていただきます」
◇ ◇ ◇
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◇ ◇ ◇
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ホント、人外と聞いてゴリラ🦍かマンモス🦣か魚🐟しか思い浮かばなかった残念なヤツです。
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