【完結】キミの記憶が戻るまで

ゆあ

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新しい日常

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年が明けたら、やっぱり新しい部屋に引っ越そうと思う
今の部屋でも問題ないけど、せっかく片付けもし始めたし、新しい生活を始めるならって思って
元々、落ち着いたら広い場所に引っ越そうって相談してたから、それが早まっただけで問題ないだろう

約束してた通り、年が明けて仕事が落ち着いてから琥太郎こたろうと同棲を始めようと準備している
ただ、琥太郎こたろうの職場が近いから、この街を離れるつもりはない
オレもこの街は気に入ってるし、嬉しいことも、悲しかったことも、いっぱい思い出が詰まっているから、次の仕事もこの街で探そうと思っていた



仕事は、退職願いを出していた手前、撤回出来ないと思っていた
ダメ元で店に相談したところ、分厚い嘆願書と署名の束を恭しく店長から手渡されてしまった

「これ…、なに?」
目をパチクリさせ、恐る恐る嘆願書のページを捲ると

『櫻井さんと仲直りして、店を続けてください!』
『ケンカ中なら、私たちが相談にのるので辞めないでください!』
『お店でイチャついても大丈夫なんで!むしろ、もっとイチャイチャして下さい!』
『付き合ってるの、バレバレなんで、そろそろ観念して公開しちゃってください!
櫻井×竹内は公式ですから!』
『結婚はいつですか?今回辞めちゃうのは、別れるからってことじゃないですよね?寿退社ですよね?』

読むにつれて顔が赤くなってしまう
しかも、途中から嘆願書じゃなくなってるし

「あ~、とうとうひよにもバレちゃったか…」
いつの間にかオレの後ろに居た琥太郎こたろうがイタズラっぽい笑みを浮かべてオレの腰に腕を回してやがる

「コタ…櫻井、さん…こ、これ…知って…」
恥ずかし過ぎてパニックになっていると、チュッとリップ音を立てて頬にキスしてくる

それを見た女性スタッフたちからはきゃーっと黄色い歓声が上がっていた

「俺とひよが付き合ってるのはバレバレだったし、むしろバレてないって思ってたのはひよだけだったからな
本社の方は、さっき退職取り消しの事務処理をしてもらったから、安心してまたここで働けるよ
ひよがこの店から居なくなるほうが、店の売上げが下がる原因になるからな」

当然のようにオレを抱き締めてくる琥太郎こたろうの腕から逃げ出せない
無職になる心配はなくなったものの、職場に交際がバレていて、しかも応援されていることの恥ずかしさから頭を抱えてしまう


「こ、こんなことなら全部忘れた方がマシだーっ!?」
オレの虚しい叫び声が店舗内に響くも、この幸せを忘れることは出来ないだろう
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