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よく来ていた広い公園のベンチに2人でゆっくり座る
本当はどこかお店に入ろうと思ってたのに、何故か足はここに向かっていた
「ここ、よく一緒に来たな…」
どこか懐かしむ彼の表情に胸が締め付けられる
「すみません。オレ、よく覚えてなくて…」
家からも職場からも近いんだから、よく来ていてもおかしくないのに、自分だけが憶えていない場所のことを言われるとモヤモヤする
「櫻井さん、何か飲みます?そこの自販機ですけど、奢りますよ?」
少し離れた場所で煌々と光る自販機を指差し、少しだけ1人になりたくて提案する
「ありがとう、いいよ。一緒に行こう?」
当たり前のように手を握って引かれる
あまりにもスマートな行動に手を振り払うことも、文句を言うことも出来ない
ただ、握った手が熱かった
「あ、コンポタある。……ラーメンスープとおでんって…いつ見てもここのラインナップどうなってんだろ…」
変わり種の多い自販機の内容を見てつい笑ってしまい、ポケットから小銭を取り出して入れる
「櫻井さん、お好きなのどーぞ。」
ニッコリ笑って見せつつ、ラーメンスープを指差す
「竹内くん、こういうの好きだよな。豚骨ラーメンのスープってww
俺がこれにしたら、お前はコッチにしろよ?」
悪戯っぽく微笑んで押されたのは『和だし』と書かれた缶だった
「ちょっ、それ美味いの?出汁ってwww」
つい笑いが出てしまい、仕返しのようにラーメンスープを選んで彼に渡す
「奢ったんだからちゃんと飲んで、感想まで言ってくださいよ!これで不味かったら、明日のお昼奢ってください」
クスクス笑いながら、それぞれスープ缶を開け口を付けた瞬間
「うまっ!?」
「え、すごっ!」
予想以上の美味しさに2人揃って驚きの声を上げてしまい、顔を見て笑ってしまう
「これ、麺と焼豚欲しい。あと、ビールと餃子」
「この出汁でお茶漬けやるのもいいかも。ってか、これだけでも結構イケる」
それぞれの感想に更に笑ってしまい、今までの緊張が解れといく
「はぁぁ…、さっきまで緊張してたのがバカみたい。
櫻井さん、オレの話し聞いてくれる?」
彼にしっかり向き直り、話し始める
「オレ、今年いっぱいで退職することにしたんだ。
まぁ、有給残ってるから、在籍は1月いっぱいまでだけど、働くのは今年の最後の営業まで。あと、ココじゃない何処かに引っ越そうと思う。
場所はまだ決めてないし、次の仕事も決まってないけど…
心機一転、頑張ってみようかな。って!」
話していて、泣きそうになるのをニッカリ笑って誤魔化す
彼の悲痛な顔に、つい口元が震えてしまうも、バレないように顔を背け
「12月入ったら、店も忙しいし、こうやって会うのは今月いっぱいで終わりにしてください。
次の休日の約束は、ちゃんと行くから…だから、お願い、します…」
声が震えてしまう
嫌いなわけじゃないけど、好きなりたくない
「そうか…。朝陽が、そう決めたなら…
俺のことを忘れる原因を作ったのも、俺だから…、仕方ないよな…」
彼の声が震えているのがわかる
泣いてるのかもしれない
でも、今顔を見たら、折角決心したのに揺らいでしまいそうで、振り返ることが出来なかった
「朝陽、ごめんな。でも、俺が諦めきれない。だから、今月いっぱいは俺にチャンスをくれないか?
また好きになって貰えるように、口説かせて欲しい」
振り返ると、頭を下げて頼み込む彼がいた
知らないはずなのに、なぜか懐かしさを感じてしまう
前にもこんなやり取りをしたことがあったような気がした
「今月、だけですよ…。今月、だけ…貴方に口説かれてみます」
本当はどこかお店に入ろうと思ってたのに、何故か足はここに向かっていた
「ここ、よく一緒に来たな…」
どこか懐かしむ彼の表情に胸が締め付けられる
「すみません。オレ、よく覚えてなくて…」
家からも職場からも近いんだから、よく来ていてもおかしくないのに、自分だけが憶えていない場所のことを言われるとモヤモヤする
「櫻井さん、何か飲みます?そこの自販機ですけど、奢りますよ?」
少し離れた場所で煌々と光る自販機を指差し、少しだけ1人になりたくて提案する
「ありがとう、いいよ。一緒に行こう?」
当たり前のように手を握って引かれる
あまりにもスマートな行動に手を振り払うことも、文句を言うことも出来ない
ただ、握った手が熱かった
「あ、コンポタある。……ラーメンスープとおでんって…いつ見てもここのラインナップどうなってんだろ…」
変わり種の多い自販機の内容を見てつい笑ってしまい、ポケットから小銭を取り出して入れる
「櫻井さん、お好きなのどーぞ。」
ニッコリ笑って見せつつ、ラーメンスープを指差す
「竹内くん、こういうの好きだよな。豚骨ラーメンのスープってww
俺がこれにしたら、お前はコッチにしろよ?」
悪戯っぽく微笑んで押されたのは『和だし』と書かれた缶だった
「ちょっ、それ美味いの?出汁ってwww」
つい笑いが出てしまい、仕返しのようにラーメンスープを選んで彼に渡す
「奢ったんだからちゃんと飲んで、感想まで言ってくださいよ!これで不味かったら、明日のお昼奢ってください」
クスクス笑いながら、それぞれスープ缶を開け口を付けた瞬間
「うまっ!?」
「え、すごっ!」
予想以上の美味しさに2人揃って驚きの声を上げてしまい、顔を見て笑ってしまう
「これ、麺と焼豚欲しい。あと、ビールと餃子」
「この出汁でお茶漬けやるのもいいかも。ってか、これだけでも結構イケる」
それぞれの感想に更に笑ってしまい、今までの緊張が解れといく
「はぁぁ…、さっきまで緊張してたのがバカみたい。
櫻井さん、オレの話し聞いてくれる?」
彼にしっかり向き直り、話し始める
「オレ、今年いっぱいで退職することにしたんだ。
まぁ、有給残ってるから、在籍は1月いっぱいまでだけど、働くのは今年の最後の営業まで。あと、ココじゃない何処かに引っ越そうと思う。
場所はまだ決めてないし、次の仕事も決まってないけど…
心機一転、頑張ってみようかな。って!」
話していて、泣きそうになるのをニッカリ笑って誤魔化す
彼の悲痛な顔に、つい口元が震えてしまうも、バレないように顔を背け
「12月入ったら、店も忙しいし、こうやって会うのは今月いっぱいで終わりにしてください。
次の休日の約束は、ちゃんと行くから…だから、お願い、します…」
声が震えてしまう
嫌いなわけじゃないけど、好きなりたくない
「そうか…。朝陽が、そう決めたなら…
俺のことを忘れる原因を作ったのも、俺だから…、仕方ないよな…」
彼の声が震えているのがわかる
泣いてるのかもしれない
でも、今顔を見たら、折角決心したのに揺らいでしまいそうで、振り返ることが出来なかった
「朝陽、ごめんな。でも、俺が諦めきれない。だから、今月いっぱいは俺にチャンスをくれないか?
また好きになって貰えるように、口説かせて欲しい」
振り返ると、頭を下げて頼み込む彼がいた
知らないはずなのに、なぜか懐かしさを感じてしまう
前にもこんなやり取りをしたことがあったような気がした
「今月、だけですよ…。今月、だけ…貴方に口説かれてみます」
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