【完結】キミの記憶が戻るまで

こうらい ゆあ

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side-琥太郎

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琥太郎こたろう、おかえりなさい!」
家に帰ると当たり前のようにまもるが部屋で待っていた
合鍵を渡した覚えはないが、前の俺が渡していたんだろうと納得することにした

「退院してすぐだったのに、お疲れ様。どう?大丈夫?何か思い出しちゃった?」
帰って来て早々に抱き着いてくる彼を愛し気に抱き締めるも、何故が彼と触れ合うとモヤモヤした気持ちになり、鳥肌が立つ


「疲れた。今日はまもるに癒やして欲しいなぁ…」
違和感を払拭しようと頬にキスをする
何故が、どうしても唇にキスをすることに躊躇してしまい、誤魔化すように頬や瞼にしていく

擽ったそうに身を捩るも嬉しそうにクスクス笑う彼に、疲れが癒されていく

琥太郎こたろう、今日は…抱いて欲しいなぁ~。ずっと入院してたから我慢してたでしょ?」

上目遣いに誘ってくる仕草が可愛く、つい頬がニヤける
「俺の恋人は可愛くてエッチで素敵だな。いっぱい可愛がってやるから、一緒にお風呂入ろう?」

細い彼の腰を抱き、そのまま抱き上げて浴室に向かう




脱衣所でお互いに服を脱がせあう
初めてのことのように恥ずかしがる彼に嬉しくなり、白く艶やかな肌を晒すまもるに胸が高鳴る

だが、何故が自身の息子は全く反応しない



え?ま、まさか…俺、不能になってるんじゃ…


一抹の不安が過ぎるも、まもるには気付かれないように笑みを浮かべる

琥太郎こたろう?僕頑張るから、ね?」
俺のモノに触れようとしてきた瞬間、無意識にまもるの身体を押し退けるようにしてしまい

「あ、あれ?ごめん」
琥太郎こたろう?やっぱり…僕じゃダメなの?」
俺の対応に怒ったのか、俯いてわなわなと肩を震わせながら拳を握り込むまもる

「そんなにアイツの方がいいの?せっかく忘れたのに!!やっと僕のモノになってくれたのに!
なんで!どうして!僕の方がアレより可愛いし、僕の方がアレより琥太郎こたろうのこと愛してるのに!!」

急にヒステリックに叫び出し、俺の胸を叩いて泣き出すまもるに戸惑ってしまう
叫んでいる内容が何かおかしく、頭の芯がスゥーっと冷たくなっていくのがわかる


まもる、どういうことだ?」

暴れる彼の肩を押さえて制止させ、目を見て話そうと視線を合わせるように屈む
しかし、駄々を捏ねるように暴れ、まともに顔を見ようとしない

「僕の恋人になってよ!アイツのこと、覚えてないんでしょ?僕の方が恋人に相応しいってことでしょ!」

ずっと引っ掛かっていたこと
本当に、コイツは俺の恋人なのか…
なんで、触れようとすると身体が拒絶したがるのか…


無意識に声が低く、冷たくなる
「どういうことだ?お前が俺の恋人って言うのは嘘なのか?ちゃんと説明しろ」

ビクッと震え、怯えた表情をするまもるを睨み付けると、脱ぎ捨てていた服を拾い集めて浴室から逃げるようにリビングに走り去っていった



「はぁ…、ちゃんと、話し合わないとな…
それに、本当の俺のことを思い出さないと…」

冷え切った身体を温めるように一人で少し熱めのシャワーを浴びる

目を閉じると、なぜか思い浮かぶのはストーカーだと教え込まれたあの平凡な男の顔ばかりで

「ひよ…」
無意識に口から零れた名前に目を見開く
「朝陽…、あさひ…、あさひ」

名前を口にする度に、色々なものが思い出されていく

朝陽の笑った顔、拗ねて怒った顔、いっぱい愛し合って、泣かせて、最後は幸せそうに笑う、俺の一番大切な人


「……なんで、今まで忘れてたんだ…」
最後に会った病院でのことを思い出し、朝陽の今にも泣き出しそうな顔
俺が傷付けた

絶望感が募り、自分を殴りたくなる

「ストーカーは、アイツじゃないか…
でも、今記憶が戻ったのがバレると、朝陽に何をするかわからないな…」


浴室から出ると、アイツは何処にも居なかった
扉も開け放ったまま、出て行ったらしい

色々と問い詰めたいことがあったが、一先ずアイツが居なくなったことに安堵した
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