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side-朝陽

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「お疲れ~」
予定通り、仕事終わりに司馬と飲みに行くことにした

仕事中は、忙しさに集中しているから、何も考えなくて済んでいた
やる事は山積み、教える事も、準備も…

でも、1人になると…つい、着信のないスマホを見てしまう
メールの着信があると慌てて確認し、ただのDMだった時の絶望感
期待ばかりが先行し、違った時の寂しさに泣きそうになる

毎晩、必ず連絡が来ていたのに…
あの日から、琥太郎こたろうからの連絡は一切ない



「それで、お前は本当にこっちに戻ってきて大丈夫だったのか?櫻井さくらいさん、やっと今日退院したって本社の奴から連絡きたけど、なんか全然雰囲気が違うって本社の奴らがビビって愚痴ってきてたぞ。…お前、なんか知ってるんだろ?」
ビールを煽りながら真剣な表情で問い詰めてくる

「あ、司馬!これ食ってみろよ。めっちゃトロトロ!これが本場のもつ鍋かぁ~」
モツとキャベツを一緒に頬張りながら、なんとか話題を変えようと司馬の器にも鍋の具を注いで誤魔化そうとするも

「おい、誤魔化すなよ?お前らが付き合ってんのは知ってんだからな。
なぁ、なんかあったんだろ?竹内が無理してんの、わかってるから…」

司馬の真剣な表情に、ずっと無理に元気よく振る舞っていた緊張の糸が切れ、泣き出しそうな顔を見られないように俯く

「記憶、喪失なんだって…
オレのこと、すっかり忘れちゃったらしい。あと、コタ…櫻井さくらいさんには別に本当の恋人がいたみたい…。オレと違って、可愛い人でさ…モデルとかしてるんじゃないかってくらい、目もおっきいし、フワフワの髪で可愛くてさ…
オレ、今まで知らなかった…んだ…。
今回の出張から戻ったら、同棲するって、言ってたのに…」

話しながら涙が溢れ出し、声が震えてしまう
膝の上でキツく拳を握って堪えようとするも、今まで我慢していたものが溢れ出し、止めることができない

ポタポタと涙が溢れ、ジーンズに滲みを作っていく

「竹内…、そんなことになってたのか…
でも、櫻井さくらいさんに別の恋人がいたってのはおかしいだろ!あんな独占欲丸出しの、竹内に近付く奴は殺すって殺気出してた人だぞ。それに、俺が何度牽制されたか…」

オレの頭を撫でながら慰めてくれる司馬に小さくありがとうと呟く

「でも、オレのことは忘れてるのに、その人が恋人だってことは覚えてるんだ…
つまり、オレよりもその人の方が愛してたってことだろ…」
服の袖で目元を擦り、涙を拭い、これ以上この話しを続けたくないと言うようにしっかり顔を上げ

「ごめん、こんな暗い話はもう終わりにしよ!せっかく美味しい飯食ってんのに、気分滅入ること言ってごめん!」
パンっと自分の顔の前で手を合わせてごめん。のポーズを取る



「なぁ、俺じゃダメなのか?」


手を下ろし、司馬の顔を見ると、いつになく真剣な顔で俺の顔を覗き込んできていた

頬に触れる手が温かくて、その優しさに逃げることができない

「俺は、ずっと竹内のことが好きだ。櫻井さくらいさんが居るし、お前が幸せそうにしてたから諦めてたけど…
お前を泣かせるアイツなんてやめて、俺にしろよ」

キスせれそうなほど近くに顔が近づき、慌てて司馬の口元に手を当てて回避する
「なっ!?じょ、冗談はやめろよ!今、本当に…」

司馬の唇に触れる手が熱い
その手を取られ、手の甲にそっと口付けをされる

「俺は本気だから。竹内の気持ちが落ち着くまで俺は待つよ。だから、ちゃんと俺とのこと、考えてくれないか?」
離された手を慌てて引っ込めるも頭も手も、触れられた場所もいつもより熱く、焦っているのを誤魔化すようにビールを一気に煽る



その後の事は、何も覚えていない…
ただ、ひたすらお酒を飲んだような気がする


気付いたら、そこは今借りているウィークリーマンションのオレの部屋だった
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