【完結】キミの記憶が戻るまで

こうらい ゆあ

文字の大きさ
上 下
3 / 25
side-朝陽

2

しおりを挟む
「あ、そこはちょっと待って。先にソースとかレードルで計ってからの方がいいから」

オープンまで3日を切り、キッチンメンバーに軽食の手順を覚えさせる
比較的経験者が多いのは助かるが、やはりキッチンメンバーでも今回のアルバイトが初めて。という子も数人おり、出来るだけ丁寧に指導していく

モーニングタイムやランチタイムは戦争状態になるから、今のうちにレシピを頭に叩き込み、少しでも効率良く作れるようにちょっとしたアドバイスを伝えていく

「竹内、そろそろ休憩~」
司馬が声を掛けてくれ、他のスタッフにも声を掛けていく

「竹内、今日の帰り飯行こうぜ。明日からはそんな余裕もなくなるし、今のうちにこっちの美味いもの食いに行こうぜ♪」
軽くウィンクをしながら話し掛けて来る司馬につい笑みが溢れる
「あ、オレこっちで食べたい物あんだ!しっかり英気を養う為にも行こう!」


ガシャンッ
パリンッ


何かが盛大に割れる音が奥から聴こえ、司馬と顔を見合わせて慌てて音のした方に向かった

バックヤードに入ると、甘いジュースの香りと割れた瓶が散らばっているのを見て、何があったのかを察する
慌てて割れたガラスを集めている子を制止し
「ダメだよ。怪我するから、とりあえずキミはこっちに。司馬、ごめん。他の子たちと掃除任せていい?オレはこの子の手当してくる」
先程のガラスで切ったのか、指先からはポタポタと血が溢れているのを見て慌てて綺麗なタオルを取り、これ以上血痕が落ちないように抑えながらその場から事務所に移動した


「はい。これで大丈夫!でも、あぁいう時こそ、冷静にならないと。
キミが、ここの副店長になるんだし、焦らなきゃ仕事は一番丁寧なんだからさ
誰でも最初から完璧な人なんていないし、みんなでこの店を作るんだからさ、一緒に頑張ろ」
さっきまでパニックになっていたのか、落ち着いた途端ボロボロ泣き出した彼女の頭を優しく撫でてやり、泣き止んでくれるのを静かに待った

「とりあえず、今日は水仕事は他のメンバーに任せていいから
傷も酷いようなら後で病院には行ってな」

徐々に落ち着きを取り戻し、新しいタオルで涙を拭いながら
「ありがとうございます。色々焦ってしまって…」

「引越してきたばかりってのもあるだろ?今はオレと司馬もいるから頼ってくれよ。それで、オープン初日の戦争を勝ち抜こうぜ♪」
司馬みたいにカッコよく言いながらウィンクをしてみるも、元々あまりウィンクが得意じゃないせいで両目を瞑ってしまい
「ふふっ、竹内さん、ウィンク出来てないじゃないですか。可愛すぎですよ」

カッコよくは出来なかったが、笑って貰えたのでヨシとしよう…
ちょっと、いや、かなりオレ的にはダメージがきたけど…
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

幸せになりたかった話

幡谷ナツキ
BL
 このまま幸せでいたかった。  このまま幸せになりたかった。  このまま幸せにしたかった。  けれど、まあ、それと全部置いておいて。 「苦労もいつかは笑い話になるかもね」  そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

処理中です...