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屋敷が、街が、家が、みんな燃えている
悲鳴と泣き声、怒声が聞こえる
隣の国が攻めてきた
目を瞑って、耳を押さえたくなる悲惨な光景
敵らしき人が何かを掲げている
見たくない
やめてっ!やめてっ!!
知っている黒い髪
ずっと見ていた顔
ボクの大好きな彼の頭部
目を逸らせたいのに、何故か釘付けにされてしまう
「ーーーッ!!!?」
声にならない声を上げ、手は宙を掻くように伸ばされたまま目が覚めた
息が荒く、体はガタガタと震えが止まらない
なに、あの夢…
今まで見た夢で一番怖かった
街全てが燃えていて、沢山の人の死体と焼ける臭い、悲鳴と怒号
そして、彼の……
あれは、スグじゃない…
遠くはないけど、今すぐではないはず…
もっと、もっと何かわかるものがあるはず…
震える身体を抱きしめながら、自分自身に言い聞かせる
旗…
彼の…後ろに旗があったはず…
明るくなったら、教えて貰わないと…もっと、もっと…知らなきゃ…
『リューク様、これはリューク様の紋章ですか?』
屋敷内でもよく目にするもの
黒い狼の横顔に金色の剣が斜めに描かれている
「そうだ。オレの紋章がコレになる
隣国からの防衛も兼ねているから、国王から承った剣を紋章に組み込むことを許されているんだ
これは、オレの誇りでもある」
隣国
ヒト族が多く住んでいて、この国に領土を狙っていると聞いたことがあった
捕まったら、奴隷にされるか殺されるか…あとは、死んだ方がマシだと言う仕打ちをされると聞かされたことがある
『隣国の、旗ってどんなのですか?』
心臓が早鐘を打つ
何となく、予感はあった…
赤い下地に双頭の黒いドラゴンが描かれた物を見せられる
「これだ。もし、この旗を見たら急いで逃げるんだ
万が一捕まれば、どうなるか…」
苦々しく話す彼に息が詰まる
夢で見たあの旗…
コクコクと頷く
逃げる手段を持たないボクだけど、彼の邪魔にはなりたくなくて…
『もっと色々教えてください。夢を見たら、すぐに伝えれるようにしたいから』
今はまだ言えない
あの未来が近づいてくる気がするから
まだもう少しだけ、色々確認してからじゃないと…
あれから、毎晩同じ夢を見る
もっと知りたいのに、見えない壁に阻まれて知ることが出来ない
「お願い!ボクのモノならなんでも差し出すから!もっと、もっと…」
ブチッ
背中に痛みが走った
ブチッブチッブチッ
何かが千切れる音と全身を駆け巡る痛み
残っているはずの翼の部分が痛い
羽根を抜かれた時のように
翼を折られた時のように
痛みで身体が硬直し、息ができない
「翼なんて要らない!!だから、もっと知るための脚を下さい!!」
痛みに耐えながら叫ぶ
誰に言っているのはわからないけれど、出せるだけの声を出して
バツンッ!
不意に背中から大きな音が聞こえ、雷にでも撃たれたような痛みが全身を襲う
「ぎぃやあああああっ!!!?」
付け根から切り落とされた痛みに視界が歪む
視線の先には、もう無くなっていたはずの左脚がしっかりとあり
「ありがと…ござ、ます…」
これで、もっと見に行ける
悲しい未来を変えに、行ける
目が覚めるといつも以上に身体が重い
背中の痛みで吐きそうになり、口元に手を添える
「っ…」
なんとか身体を起こすも翼がある部分が異様に重い
動かそうとしても、感覚がないことに気付き、夢のことを思い出し笑みを浮かべる
これで、今晩から動ける
悲鳴と泣き声、怒声が聞こえる
隣の国が攻めてきた
目を瞑って、耳を押さえたくなる悲惨な光景
敵らしき人が何かを掲げている
見たくない
やめてっ!やめてっ!!
知っている黒い髪
ずっと見ていた顔
ボクの大好きな彼の頭部
目を逸らせたいのに、何故か釘付けにされてしまう
「ーーーッ!!!?」
声にならない声を上げ、手は宙を掻くように伸ばされたまま目が覚めた
息が荒く、体はガタガタと震えが止まらない
なに、あの夢…
今まで見た夢で一番怖かった
街全てが燃えていて、沢山の人の死体と焼ける臭い、悲鳴と怒号
そして、彼の……
あれは、スグじゃない…
遠くはないけど、今すぐではないはず…
もっと、もっと何かわかるものがあるはず…
震える身体を抱きしめながら、自分自身に言い聞かせる
旗…
彼の…後ろに旗があったはず…
明るくなったら、教えて貰わないと…もっと、もっと…知らなきゃ…
『リューク様、これはリューク様の紋章ですか?』
屋敷内でもよく目にするもの
黒い狼の横顔に金色の剣が斜めに描かれている
「そうだ。オレの紋章がコレになる
隣国からの防衛も兼ねているから、国王から承った剣を紋章に組み込むことを許されているんだ
これは、オレの誇りでもある」
隣国
ヒト族が多く住んでいて、この国に領土を狙っていると聞いたことがあった
捕まったら、奴隷にされるか殺されるか…あとは、死んだ方がマシだと言う仕打ちをされると聞かされたことがある
『隣国の、旗ってどんなのですか?』
心臓が早鐘を打つ
何となく、予感はあった…
赤い下地に双頭の黒いドラゴンが描かれた物を見せられる
「これだ。もし、この旗を見たら急いで逃げるんだ
万が一捕まれば、どうなるか…」
苦々しく話す彼に息が詰まる
夢で見たあの旗…
コクコクと頷く
逃げる手段を持たないボクだけど、彼の邪魔にはなりたくなくて…
『もっと色々教えてください。夢を見たら、すぐに伝えれるようにしたいから』
今はまだ言えない
あの未来が近づいてくる気がするから
まだもう少しだけ、色々確認してからじゃないと…
あれから、毎晩同じ夢を見る
もっと知りたいのに、見えない壁に阻まれて知ることが出来ない
「お願い!ボクのモノならなんでも差し出すから!もっと、もっと…」
ブチッ
背中に痛みが走った
ブチッブチッブチッ
何かが千切れる音と全身を駆け巡る痛み
残っているはずの翼の部分が痛い
羽根を抜かれた時のように
翼を折られた時のように
痛みで身体が硬直し、息ができない
「翼なんて要らない!!だから、もっと知るための脚を下さい!!」
痛みに耐えながら叫ぶ
誰に言っているのはわからないけれど、出せるだけの声を出して
バツンッ!
不意に背中から大きな音が聞こえ、雷にでも撃たれたような痛みが全身を襲う
「ぎぃやあああああっ!!!?」
付け根から切り落とされた痛みに視界が歪む
視線の先には、もう無くなっていたはずの左脚がしっかりとあり
「ありがと…ござ、ます…」
これで、もっと見に行ける
悲しい未来を変えに、行ける
目が覚めるといつも以上に身体が重い
背中の痛みで吐きそうになり、口元に手を添える
「っ…」
なんとか身体を起こすも翼がある部分が異様に重い
動かそうとしても、感覚がないことに気付き、夢のことを思い出し笑みを浮かべる
これで、今晩から動ける
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