厄災の青い鳥はしあわせな夢を見る

ゆあ

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彼は、ボクの夢を気味悪がらない
ボクが夢のコトを伝えると「ありがとう、そうならないよう対処しよう」と言ってくれる
今まで言われたことのない言葉を沢山くれる
ボクのコトを嫌わないでくれる



季節も変わり、暑い日が続いている
この前見た夢で日照りが続いて、街の人が困る夢を見た
水が足りなくて、井戸が干上がって、疫病が円満しだす
水不足がそもそもの原因だった


魔獣が紛れ込んで、衛兵の人が沢山、沢山死んだ…
なんとか倒せたみたいだけど、街はずっと暗いままで、悲しくて、寂しい
衛兵の人が減ったから、魔獣が入り易くなって…
城壁が脆くなっている場所の補修がなされ、強固になった


今年の秋は、豊穣みたい
沢山の実りに街の人たちもみんな喜んでて、毎日がお祭りみたい
寒い冬が来る前に…


彼の横に、綺麗な狼族の女性が一緒にいた
2人ともしあわせそうに笑っていて、でも、ボクの胸は苦しくなって…
これは…良い夢なんだと思う



夢を見たら、全部ノートに書き留めるようにした
彼はそれをちゃんと見てくれて、夢が現実にならないようにしてくれる

一つ、一つ、悲しかった夢が消えて、みんなが笑ってる夢に変わる
泣きながら目覚める日も少しずつ減っていった

でも、最後の夢だけは、ずっと変わらなくて…
あの夢を見る度に胸がギュッと締め付けられる
しあわせな夢なのに、どうしてだろう…






「ルリ、今日は少し遠出をしてみようか」
ベランダから街を眺めるのが日課になってきたある日、彼から外に出る提案がされた
この街に来て、初めて屋敷の外に出る

白い綺麗なワンピースを着せて貰い、右目を隠すように布を巻かれる
裾がヒラヒラしているから、こういう服の時は欠損している身体がわかりにくい

ボクを見る人は、いつも顔を歪めて不快だという顔になるから…
少しでも、わからないようにして貰えるのは嬉しかった
あの目は、寂しいし怖いから…


自分ではもう歩くことも飛ぶこともできないから、出掛けたり、移動する時は彼に抱き抱えて貰わないと何も出来なかった
だから、自分からは何も言えない
街にも行ってみたいけど、我儘は言えないから…
言われるままに連れて行かれるだけ
でも、少しでも彼と一緒に居れる時間は嬉しかった




馬のような獣魔に乗り、街が見渡せる小高い丘に連れて来られた
大きな木が生えており、その下で彼に背を預けるように座る

木漏れ日が優しく、気持ちのいい風が吹き抜ける
穏やかな時間だけが過ぎていき、ずっと続けばいいと願ってしまう

「ここからが一番綺麗にあの街が見えるんだよ
オレはいつもここに来る度、皆が幸せに暮らせるよう努めようと誓うんだ」

『きれいだね。ボクもココ、好き』
筆談にも慣れ、首から常に提げているメモ帳に文字を認める

『あなたの名前を教えてください』
ずっと聞きたかったこと

「あぁ、そういえば伝えていなかったか…
オレはあの街の領主をしている、リュークだ
ルリと同じ金眼だが、オレには魔力も何もないんだがな…」
笑いながら僕の頭を優しく撫でてくれ、頬にキスをしてくれる

最近、こうやってキスをしてくれるコトが増えた
触れた場所がこそばゆい
リューク、やっと名前を教えてもらった
領主様だから、やっぱりエラい人だったんだ…

リューク様、リュークさま、リューク

声にはならないけれど、何度も口にしてみる
名前を口にする度になんだか胸が熱くなる

『リューク様、ボクを助けてくれてありがとうございます』
今まで言えなかった気持ちを紙に書いて見せる



「この街には、ルリの力が必要なんだ。皆の為にも、これからも力を貸して欲しい」
頼られるのが、求めて貰えるのが嬉しかった

大きく、しっかりと頷き微笑みかけると、リューク様が嬉しそうに笑ってくれ、ボクの唇にキスをしてくれた

「ルリ、ありがとう。オレの大切な青い鳥」


ボクの力はリューク様とこの街の人たちの為に使おう
いっぱい夢を見て、みんなが幸せになれるように
嫌なコトが起こらない為に…




夢を見る度に最近は何かが溢れ落ちていく
まだ今は少しずつだけど、指の隙間から何かが溢れるように、ゆっくり、少しずつ…


生まれて初めて、この力を持てたことに神様に感謝した
神様なんて、居るのかもわからないし、今まではこの力のことを恨んでいたけれど…

だから、まだもう少しだけ…
リューク様がボクのコトを頼ってくれてる時間だけ…
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