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第四章
70.心機一転!
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彼が去った後、ドッと冷や汗が背中を伝い落ち、身体から力が抜けてしまい立つことができない。
「………………こわ、かった」
誰も居なくなった部屋で、手の甲で唇が赤くなるまでゴシゴシで擦り、悔しさから涙が溢れてくる。
「この世界のヤツ、人の気持ちを弄ぶヤツしかいねぇーのかよ!」
ふつふつと湧いてくる苛立ちから、涙がポロポロと零れ落ちる。
「もっと文句を言ってやればよかった……」
悔しさから、絞り出すような声しか出ない。
気持ちを落ち着けようと、背筋を伸ばして、深く息を吸っていると、入り口付近でビクッと震える小さな影が3つ見えた。
「……マコ、お兄ちゃん……えっと、ごめんね」
治療の列も終わって、列整理をしてきたコロリたちだった。
ジャジャマルが2人を庇う様に前に出て、その背に隠れるように震えているコロリが謝罪の言葉を口にする。
「いっぱい魔法使わせちゃって、ごめんなさい」
今にも泣き出しそうなコロリとピッコロの様子に、罪悪感が募っていく。
「あ~、ごめん!違うから!コロリたちに文句を言ったわけじゃないから!えっと、むしろ、色々手伝ってくれてありがとうな」
ピッコロが胸に大切そうに抱えている小さな籠の中には、たくさんの銀貨が入っており、それだけ多くの人を治療したのがわかる。
「お前らのお陰で、ひとりずつ診ることができたんだ。本当にありがとう」
子どもたちを宥めるように優しく声を掛け、お礼を兼ねて優しく頭を撫でてやる。
「あ、そうだ!なぁ、お礼も兼ねて甘くておいしい物でも食べに行かないか?俺が奢るからさ」
なんとかまた笑って欲しくて、子どもたちが好きそうなことを提案する。
コロリたちは困惑した顔を見合わせて、どうしようか悩んでいたけど、ジャジャマルのお腹がぐぅ~っと鳴り響いてしまう。
「……腹、へったぁ……」
「もぉ~、お兄ちゃん……」
「ジャジャマルくんのお腹は素直ですよね」
クスクスと笑い、いつもの笑顔を取り戻した子どもたちにホッとする。
「好きなの何でも奢ってやるから、いっぱい食えよ♪」
元気よく子どもたちに声を掛けると、嬉しそうに「おぉー!」と掛け声を上げていた。
ホント、子どもたちには悪いことをしてしまった。
いっぱい頑張ってくれたのに……
でも、それもこれも、あの男のせいだ!!
名前も知らないのに、いきなりあんなキスをしてくるなんて……
しかも、なんかよくわかんねぇー物を飲み込まされたし……
本当に、この世界ヤバすぎだろ!
はぁ……子どもたちには平和に育って欲しい……
◇ ◇ ◇
ピッコロから受け取った籠には、38枚の銀貨が入っていた。
ひとり銀貨1枚とか言っていたのに、なんで38枚なんだろ?
え?そんな大人数やったっけ?
精々20人くらいだっと思うんだけど……
「何人かが銀貨1枚じゃ安すぎるって言って、2枚入れてくれる人もいたの。あと、お菓子とかパンをくれる人もいたよ」
多くの人がそれ以上の報酬をくれていたらしい。
ホントこの街の人っていい人が多いね。
この旅が終わって、無事に帰って来れたら、この街に永住するのもいいかもしれない。
今日みたいに、マッサージ屋を開業したら、俺ひとりくらい慎ましく生活すれば生きていけそうだし……
2人と離ればなれになっても、子どもたちも居るから寂しくはないはず。
うん。それがいいかも。
まぁ、本当に無事に生きて帰って来れたらって、話になるけど……
生きて帰れる確証がないのがツラい。
「あのぉ、マコトさん、本当にいいんですか?」
ピッコロがまだちょっと戸惑った様子で聞いてくる。
せっかく懐いてくれたのに、子どもたちに気を遣わせちゃって本当にごめんなさい。
と、内心めちゃくちゃ謝る。
まぁ、今戸惑っているのは別のことだろうけどな♪
子どもたちが抱えているのは、お菓子のいっぱい入った紙袋だ。
子どもたちが大好きなお菓子を思う存分買ってあげた。
俺ひとりだったら、こんな大金手に入らなかったし、今までのお礼も兼ねている。
というか、今朝のモヤモヤとした気持ちを払拭してくれたしな。
まぁ、最後に変なヤツにキスされたことは、汚点でしかないけど……
「昨日急に帰っちゃったお詫びも兼ねてるから気にすんな。あと、今日まで仲良くしてくれたお礼だよ」
子どもたちに向かって、笑顔で礼を言う。
明日にはこの街を出なきゃいけない。
ずっと居たいけど、魔王の提示した期限もあるしね。
みんなが平和な世界ですくすく育って欲しいって願いもあるから、俺が魔王のところに辿りつかなきゃいけない。
「また、帰って来てくれる?」
コロリが寂しそうに言ってくるのを、優しく頭を撫でて応えてやる。
「うん。また戻ってくるよ。その時はこの街に住むのもいいなぁ~」
願望を口にすると、子どもたちは晴れやかな笑みを浮かべ、嬉しそうな声を上げていた。
2人とは、今晩ちゃんと話し合おう。
リークフリードさんが付いて来てくれるかはわからないけど、ルイミヤとはちゃんとお別れしなきゃだよな。
……ホントに、好きだったんだけどな……
聖女らしく、笑って祝福してやれば、いいのかな……
「マコお兄ちゃん、早く帰ってきてね。コロリ、お兄ちゃんのこと待ってるから」
幼いコロリの頭を優しく撫で、微笑みかける。
「ありがとな、コロリ。絶対帰って来るから」
子どもたちを見ていると、自分のちっぽけな悩みが馬鹿みたいに思えてくる。
うん。俺も早く新しい恋人を作ればいいや!
ルイミヤよりずっとカッコよくて優しい人。
俺のことを1番に想ってくれる人を見つけよう。
「………………こわ、かった」
誰も居なくなった部屋で、手の甲で唇が赤くなるまでゴシゴシで擦り、悔しさから涙が溢れてくる。
「この世界のヤツ、人の気持ちを弄ぶヤツしかいねぇーのかよ!」
ふつふつと湧いてくる苛立ちから、涙がポロポロと零れ落ちる。
「もっと文句を言ってやればよかった……」
悔しさから、絞り出すような声しか出ない。
気持ちを落ち着けようと、背筋を伸ばして、深く息を吸っていると、入り口付近でビクッと震える小さな影が3つ見えた。
「……マコ、お兄ちゃん……えっと、ごめんね」
治療の列も終わって、列整理をしてきたコロリたちだった。
ジャジャマルが2人を庇う様に前に出て、その背に隠れるように震えているコロリが謝罪の言葉を口にする。
「いっぱい魔法使わせちゃって、ごめんなさい」
今にも泣き出しそうなコロリとピッコロの様子に、罪悪感が募っていく。
「あ~、ごめん!違うから!コロリたちに文句を言ったわけじゃないから!えっと、むしろ、色々手伝ってくれてありがとうな」
ピッコロが胸に大切そうに抱えている小さな籠の中には、たくさんの銀貨が入っており、それだけ多くの人を治療したのがわかる。
「お前らのお陰で、ひとりずつ診ることができたんだ。本当にありがとう」
子どもたちを宥めるように優しく声を掛け、お礼を兼ねて優しく頭を撫でてやる。
「あ、そうだ!なぁ、お礼も兼ねて甘くておいしい物でも食べに行かないか?俺が奢るからさ」
なんとかまた笑って欲しくて、子どもたちが好きそうなことを提案する。
コロリたちは困惑した顔を見合わせて、どうしようか悩んでいたけど、ジャジャマルのお腹がぐぅ~っと鳴り響いてしまう。
「……腹、へったぁ……」
「もぉ~、お兄ちゃん……」
「ジャジャマルくんのお腹は素直ですよね」
クスクスと笑い、いつもの笑顔を取り戻した子どもたちにホッとする。
「好きなの何でも奢ってやるから、いっぱい食えよ♪」
元気よく子どもたちに声を掛けると、嬉しそうに「おぉー!」と掛け声を上げていた。
ホント、子どもたちには悪いことをしてしまった。
いっぱい頑張ってくれたのに……
でも、それもこれも、あの男のせいだ!!
名前も知らないのに、いきなりあんなキスをしてくるなんて……
しかも、なんかよくわかんねぇー物を飲み込まされたし……
本当に、この世界ヤバすぎだろ!
はぁ……子どもたちには平和に育って欲しい……
◇ ◇ ◇
ピッコロから受け取った籠には、38枚の銀貨が入っていた。
ひとり銀貨1枚とか言っていたのに、なんで38枚なんだろ?
え?そんな大人数やったっけ?
精々20人くらいだっと思うんだけど……
「何人かが銀貨1枚じゃ安すぎるって言って、2枚入れてくれる人もいたの。あと、お菓子とかパンをくれる人もいたよ」
多くの人がそれ以上の報酬をくれていたらしい。
ホントこの街の人っていい人が多いね。
この旅が終わって、無事に帰って来れたら、この街に永住するのもいいかもしれない。
今日みたいに、マッサージ屋を開業したら、俺ひとりくらい慎ましく生活すれば生きていけそうだし……
2人と離ればなれになっても、子どもたちも居るから寂しくはないはず。
うん。それがいいかも。
まぁ、本当に無事に生きて帰って来れたらって、話になるけど……
生きて帰れる確証がないのがツラい。
「あのぉ、マコトさん、本当にいいんですか?」
ピッコロがまだちょっと戸惑った様子で聞いてくる。
せっかく懐いてくれたのに、子どもたちに気を遣わせちゃって本当にごめんなさい。
と、内心めちゃくちゃ謝る。
まぁ、今戸惑っているのは別のことだろうけどな♪
子どもたちが抱えているのは、お菓子のいっぱい入った紙袋だ。
子どもたちが大好きなお菓子を思う存分買ってあげた。
俺ひとりだったら、こんな大金手に入らなかったし、今までのお礼も兼ねている。
というか、今朝のモヤモヤとした気持ちを払拭してくれたしな。
まぁ、最後に変なヤツにキスされたことは、汚点でしかないけど……
「昨日急に帰っちゃったお詫びも兼ねてるから気にすんな。あと、今日まで仲良くしてくれたお礼だよ」
子どもたちに向かって、笑顔で礼を言う。
明日にはこの街を出なきゃいけない。
ずっと居たいけど、魔王の提示した期限もあるしね。
みんなが平和な世界ですくすく育って欲しいって願いもあるから、俺が魔王のところに辿りつかなきゃいけない。
「また、帰って来てくれる?」
コロリが寂しそうに言ってくるのを、優しく頭を撫でて応えてやる。
「うん。また戻ってくるよ。その時はこの街に住むのもいいなぁ~」
願望を口にすると、子どもたちは晴れやかな笑みを浮かべ、嬉しそうな声を上げていた。
2人とは、今晩ちゃんと話し合おう。
リークフリードさんが付いて来てくれるかはわからないけど、ルイミヤとはちゃんとお別れしなきゃだよな。
……ホントに、好きだったんだけどな……
聖女らしく、笑って祝福してやれば、いいのかな……
「マコお兄ちゃん、早く帰ってきてね。コロリ、お兄ちゃんのこと待ってるから」
幼いコロリの頭を優しく撫で、微笑みかける。
「ありがとな、コロリ。絶対帰って来るから」
子どもたちを見ていると、自分のちっぽけな悩みが馬鹿みたいに思えてくる。
うん。俺も早く新しい恋人を作ればいいや!
ルイミヤよりずっとカッコよくて優しい人。
俺のことを1番に想ってくれる人を見つけよう。
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