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第二章
30.危機一髪
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「ルィ……助けっ……!」
「冷たき風よ、凍てつけ」
「ぎゃあっ!!!」
微かに魔法の詠唱が聞こえたと同時に、俺の下着を剥ぎ取ろうとしていた女装変態野郎が、いきなり股間を押さえながら叫び声を上げた。
何が起こったのか変わらず、無我夢中で男の腹を蹴り上げる。
そんなに力は入らなかったはずなのに、男は勢いよく後ろに倒れてくれたおかげでなんとか距離を取ることができた。
早く、早く……今のうちに逃げなきゃ……
頭ではわかっているけど、手が震えてしまって、なかなかズラされたパンツを穿きなおすことができない。
そうしているうちに、男がふらふらと立ち上がり、股間を押さえたまま俺の顔を恨めし気に睨み付けてきた。
「っあ……ちがっ……」
俺がやったわけじゃないのに、殺意に満ちた目が俺を映している。
鬼のように顔を真っ赤にして、血走った目が怖くて仕方がない。
手で押さえている股間の辺りはなぜか、小さな氷が付いており、布越しでも分かるくらい冷気のモヤが漂っている。
「こぉのぉガキィ!」
怒声を上げながら、拳を振り上げて襲い掛かってくる男から目が離せなかった。
逃げようと足に力を入れるも、腰が抜けて立つことすら出来なくて、腕で頭を覆って目を強く瞑った。
殴られると思っていたけど、いつまで経っても痛みは訪れない。
むしろ、誰かが殴られて倒れた音が聞こえる。
恐る恐る目を開けると、目の前にさっきまで会いたくて、助けて欲しくて仕方なかった彼の顔があった。
「マコ、怪我はないか。助けるのが遅くなってすまない」
俺に怪我がないかを確認して、そのまま強くルイミヤに抱きしめられた。
ルイミヤの顔を見た瞬間、安堵から全身の力が抜けそうになるも何とか堪える。
「ルイ、ミヤ……」
助けてくれたルイミヤに礼を言おうとするも、俺の声は震えていて、小さな声しか出なった。
服装も乱れ、土で汚れた俺の姿を見て、ルイミヤの綺麗な顔が一瞬歪んだのを目にしてしまう。
「ぁ……ご、めん……」
自分の今の姿を思い出し、胸が締め付けられたように痛んだ。
最後まで犯されていないとはいえ、襲われたことには変わりない。
汚れた自分なんかに触れたら、ルイミヤまで汚れちゃうよな……
ルイミヤに……見られたくなかった、な……
唇を噛み締めて、ゆっくりと息を吸いこんで涙が零れ落ちないように、心を落ち着ける。
「ごめん……」
アイツのせいで、ブラウスのボタンが弾け飛んでしまったから、手で押さえていないと胸が見えてしまう。
あんな奴に触られて、嘗められた場所を、今はルイミヤには見られたくない。
片手でブラウスの胸元を強く握り締め、空いた方の手で、ルイミヤの胸を押して少しだけ距離を作った。
「まさか、俺なんかを襲う変態がいるなんて……思っても、いなかった」
これ以上ルイミヤに心配をかけたくなくて、平気だと言うように無理矢理笑みを作るも、震えを止めることもできなくて、歪な笑みになってしまった。
俺の顔を見て、なぜかルイミヤの方が辛そうに顔を歪め、土埃で汚れることも気にせず、強く抱きしめてくれた。
「マコ、助けるのが遅くなった」
ルイミヤの温もりに包まれた瞬間、緊張の糸がプツンッと切れてしまったように、涙が次から次へと溢れ出してくる。
「ひぃっく……ごめ、ごめん」
「マコト、怖い思いをさせて、本当にすまない」
ルイミヤにしがみついて泣いている俺の頭を、安心させるように優しく撫でてくれた。
俺の方が年上なのに、今はルイミヤに抱きしめて貰えるだけで安心できる。
もっと触れて貰いたくて、縋るようにルイミヤを見つめていると……
「オレを無視するな!お前も一緒に犯してっ!?ひぃん!!」
さっきまで地面に伏して、股間を押さえながらもがき苦しんでいた変態野郎が、また襲い掛かってくると思いきや、引き攣った悲鳴を上げた。
「邪魔をするな」
ルイミヤが、今すぐにでも殺しかねないような気迫で変態女装野郎を睨み付け、いつでも魔法が撃てるよう手を向けていた。
「今すぐ失せろ。二度とマコと私の前にその汚い顔を見せるな」
怒鳴っているわけでもないのに、氷のように冷たいルイミヤの声で告げられ、変態女装野郎はガタガタと怯えながら逃げて行った。
「冷たき風よ、凍てつけ」
「ぎゃあっ!!!」
微かに魔法の詠唱が聞こえたと同時に、俺の下着を剥ぎ取ろうとしていた女装変態野郎が、いきなり股間を押さえながら叫び声を上げた。
何が起こったのか変わらず、無我夢中で男の腹を蹴り上げる。
そんなに力は入らなかったはずなのに、男は勢いよく後ろに倒れてくれたおかげでなんとか距離を取ることができた。
早く、早く……今のうちに逃げなきゃ……
頭ではわかっているけど、手が震えてしまって、なかなかズラされたパンツを穿きなおすことができない。
そうしているうちに、男がふらふらと立ち上がり、股間を押さえたまま俺の顔を恨めし気に睨み付けてきた。
「っあ……ちがっ……」
俺がやったわけじゃないのに、殺意に満ちた目が俺を映している。
鬼のように顔を真っ赤にして、血走った目が怖くて仕方がない。
手で押さえている股間の辺りはなぜか、小さな氷が付いており、布越しでも分かるくらい冷気のモヤが漂っている。
「こぉのぉガキィ!」
怒声を上げながら、拳を振り上げて襲い掛かってくる男から目が離せなかった。
逃げようと足に力を入れるも、腰が抜けて立つことすら出来なくて、腕で頭を覆って目を強く瞑った。
殴られると思っていたけど、いつまで経っても痛みは訪れない。
むしろ、誰かが殴られて倒れた音が聞こえる。
恐る恐る目を開けると、目の前にさっきまで会いたくて、助けて欲しくて仕方なかった彼の顔があった。
「マコ、怪我はないか。助けるのが遅くなってすまない」
俺に怪我がないかを確認して、そのまま強くルイミヤに抱きしめられた。
ルイミヤの顔を見た瞬間、安堵から全身の力が抜けそうになるも何とか堪える。
「ルイ、ミヤ……」
助けてくれたルイミヤに礼を言おうとするも、俺の声は震えていて、小さな声しか出なった。
服装も乱れ、土で汚れた俺の姿を見て、ルイミヤの綺麗な顔が一瞬歪んだのを目にしてしまう。
「ぁ……ご、めん……」
自分の今の姿を思い出し、胸が締め付けられたように痛んだ。
最後まで犯されていないとはいえ、襲われたことには変わりない。
汚れた自分なんかに触れたら、ルイミヤまで汚れちゃうよな……
ルイミヤに……見られたくなかった、な……
唇を噛み締めて、ゆっくりと息を吸いこんで涙が零れ落ちないように、心を落ち着ける。
「ごめん……」
アイツのせいで、ブラウスのボタンが弾け飛んでしまったから、手で押さえていないと胸が見えてしまう。
あんな奴に触られて、嘗められた場所を、今はルイミヤには見られたくない。
片手でブラウスの胸元を強く握り締め、空いた方の手で、ルイミヤの胸を押して少しだけ距離を作った。
「まさか、俺なんかを襲う変態がいるなんて……思っても、いなかった」
これ以上ルイミヤに心配をかけたくなくて、平気だと言うように無理矢理笑みを作るも、震えを止めることもできなくて、歪な笑みになってしまった。
俺の顔を見て、なぜかルイミヤの方が辛そうに顔を歪め、土埃で汚れることも気にせず、強く抱きしめてくれた。
「マコ、助けるのが遅くなった」
ルイミヤの温もりに包まれた瞬間、緊張の糸がプツンッと切れてしまったように、涙が次から次へと溢れ出してくる。
「ひぃっく……ごめ、ごめん」
「マコト、怖い思いをさせて、本当にすまない」
ルイミヤにしがみついて泣いている俺の頭を、安心させるように優しく撫でてくれた。
俺の方が年上なのに、今はルイミヤに抱きしめて貰えるだけで安心できる。
もっと触れて貰いたくて、縋るようにルイミヤを見つめていると……
「オレを無視するな!お前も一緒に犯してっ!?ひぃん!!」
さっきまで地面に伏して、股間を押さえながらもがき苦しんでいた変態野郎が、また襲い掛かってくると思いきや、引き攣った悲鳴を上げた。
「邪魔をするな」
ルイミヤが、今すぐにでも殺しかねないような気迫で変態女装野郎を睨み付け、いつでも魔法が撃てるよう手を向けていた。
「今すぐ失せろ。二度とマコと私の前にその汚い顔を見せるな」
怒鳴っているわけでもないのに、氷のように冷たいルイミヤの声で告げられ、変態女装野郎はガタガタと怯えながら逃げて行った。
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