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第二章
24.この世界でも男装ってあるんだ…
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アスペンデールの町を出発して、早1ヶ月。
次の目的地である町までもう少しってところまで来たらしいけど、俺たちは今、別の村に滞在している。
今までにも宿泊が可能な村とか町が見つかったら、寄っていたんだけど、いつもなら一泊したらすぐに旅に出るって感じなんだよね。
今回もその予定だったんだけど、この村の『世にも奇妙なお祭り』に巻き込まれてしまったのが原因で、俺たちは足止めを食らっていた。
元をたどると昨日の昼間、ここの近くを通ったのが運の尽きだったんだと思う。
◇ ◇ ◇
魔王の待っている魔国に到着するまでは、まだまだ道のりは長く、国境まで半分も到達できてないらしい。
だいぶ旅にも慣れてきたって言っても、先はまだ遠いって言われて心が折れそうになる。
ルイミヤは、最初の時と比べたら雲泥の差があるくらい、俺に甘くなっている。
すぐに「疲れてないか?」とか、「休憩するか?」って聞いてくる。
しかも、夜は「寒くないか?」って、聞きながら俺のこと抱きしめてくれてさ……
もう、リークフリードさんの視線が突き刺すように痛くて仕方ない。
ルイミヤと仲良くなれたのは嬉しいけど、欲を言えば、リークフリードさんとももうちょっと仲良くなりたいんよな。
まぁ、俺は恋敵みたいだから、難しいのかな……
ルイミヤ、罪づくりな男だよ、本当。
そんなわけで、天気のいい今日も、ゆったりまったり、無理なくご安全な旅を続けていたんだ。
そんな俺たちの向かう先に、何やら困り果てた様子の見目麗しい人がひとり、道の端で頭を抱えてうずくまりながら唸っていた。
こういう場合、トラブル回避のために無視するのが一番ってのはわかっているんだけど、困った人をほっとけないのが俺なんだよね。
二人が明らかに関わるのは止めとけって顔をしているのを他所に、ついつい声を掛けちゃった。てへっ
「お兄さん大丈夫ですか?気分が悪かったり、痛かったりする?」
うずくまっている人の前に膝をつき、視線を合わせるようにして声を掛ける。
「え、あ……大丈夫、です。ちょっと、足を怪我してしまっただけなので……」
ん?お兄さんだと思っていたのに、思っているよりも声が高いというか、青年役の多い女性声優のようなちょっと甘い声。
そう、俺も好きだった緒●恵●さんっぽい感じ。
うん、蔵馬とかめちゃくちゃ好きだったよ。
コスはしてないけど……。
俺がやっても似合わないしね。
「ん?あれ?お兄さんじゃなくて、お姉さん?」
声を聞いてなぜか焦ってしまった。
服装とか色々、パッと見は男性に見えていたんだけど、声を聞いて改めて顔を見ると、どう見ても女性だった。
この世界で男装とか女装している人なんて、まだ会ったこともなかったからびっくりしたよ。
「って、足を怪我しているなんて大変じゃん。怪我の具合にもよるけど、俺でよかったら治療しますよ」
男装のお姉さんを安心させるように、軽く微笑みかけてみる。
ルイミヤみたいに天使の笑顔ってわけじゃないけど、仏頂面で話しかけるより安心してもらえるだろ。
彼女は俺とルイミヤ、リークフリードさんの顔を順番に見て、まだ少し警戒しながらも、「ありがとうございます」と小さな声で言ってくれた。
怪我をしているのは、右の足首だけみたいだ。
捻ったのか、青い痣になっていて、見ていて痛そうだった。
「光よ、癒せ!」
俺が魔法を詠唱すると、彼女の足首に淡い光の粒子が纏わりつく。
「すごい……」
ぽそっと彼女が感嘆の声を上げてくれるとつい嬉しくてクスっと笑ってしまう。
静かに光の粒子は消えたころには、さっきまで痛そうな青痣も綺麗になくなり、腫れも引いているようだった。
無事に治療できたみたいで、俺自身もホッとする。
捻挫だから傷跡とかの心配はないと思うけど、こんな場所で怪我して動けないとか不安だもんね。
特に女性だと何があるかわかんないしさ……
それにしても、なんか最近ちょっとだけレベルアップした気がするんだよね。
切り傷とかは未だに直りが悪いけど、擦り傷くらいなら治りが早くなっている気がする。
ルイミヤとの特訓が功をなしているのかな?
「これで大丈夫。他に痛いところとかない?」
優しく笑みを浮かべて声を掛けるも、彼女は驚いたように目を見開いていて
「え?治癒魔法なんてそんな、聖女様みたいな!え!?」
なんかめちゃくちゃ動揺している様子に、逆に申し訳なくなってくる……
「お嬢さん、他に痛いところはないだろうか?」
ルイミヤが天使のような笑みを浮かべ、まだ座り込んでいる彼女に手を差し伸べる。
ルイミヤのあの笑みを直視してしまったせいか、彼女は首まで真っ赤になったうえ、ぽぉーっと見つめている。
うん。わかる。めっちゃ見惚れるよね。
王子様ってこういうのか~ってしみじみと思うもん。
「歩けるか?」
ルイミヤの手を借りて立ち上がらせてもらった後、コクコクと何度も首を縦に振って肯定している。
「はい!えっと、治療してくださりありがとうございます!私はリリアンと言います」
さっきまでの動揺はどこへやら、もう目はルイミヤに釘付けだ。
「あの、もしよろしければ、私の村に来ていただけないでしょうか?お礼もしたいですし、なんでしたら今日からお祭りもあるので来ていただきたいです!」
結構必死な感じで、ルイミヤの手をしっかり握ってお誘いする男装のお姉さん、基リリアンさん。
ちょっと宝塚っぽい感じでカッコ可愛いけど、ルイミヤは……
って、別に俺は関係ないから!
ルイミヤに手を出すと、リークフリードさんっていう怖~いお兄さんが睨み付けて来るよ~。
って、あれ?リークフリードさん全然怒っている様子もないし、むしろなんか穏やかな表情なんだけど。
え?あの人では恋のライバルにもならないってことか?
次の目的地である町までもう少しってところまで来たらしいけど、俺たちは今、別の村に滞在している。
今までにも宿泊が可能な村とか町が見つかったら、寄っていたんだけど、いつもなら一泊したらすぐに旅に出るって感じなんだよね。
今回もその予定だったんだけど、この村の『世にも奇妙なお祭り』に巻き込まれてしまったのが原因で、俺たちは足止めを食らっていた。
元をたどると昨日の昼間、ここの近くを通ったのが運の尽きだったんだと思う。
◇ ◇ ◇
魔王の待っている魔国に到着するまでは、まだまだ道のりは長く、国境まで半分も到達できてないらしい。
だいぶ旅にも慣れてきたって言っても、先はまだ遠いって言われて心が折れそうになる。
ルイミヤは、最初の時と比べたら雲泥の差があるくらい、俺に甘くなっている。
すぐに「疲れてないか?」とか、「休憩するか?」って聞いてくる。
しかも、夜は「寒くないか?」って、聞きながら俺のこと抱きしめてくれてさ……
もう、リークフリードさんの視線が突き刺すように痛くて仕方ない。
ルイミヤと仲良くなれたのは嬉しいけど、欲を言えば、リークフリードさんとももうちょっと仲良くなりたいんよな。
まぁ、俺は恋敵みたいだから、難しいのかな……
ルイミヤ、罪づくりな男だよ、本当。
そんなわけで、天気のいい今日も、ゆったりまったり、無理なくご安全な旅を続けていたんだ。
そんな俺たちの向かう先に、何やら困り果てた様子の見目麗しい人がひとり、道の端で頭を抱えてうずくまりながら唸っていた。
こういう場合、トラブル回避のために無視するのが一番ってのはわかっているんだけど、困った人をほっとけないのが俺なんだよね。
二人が明らかに関わるのは止めとけって顔をしているのを他所に、ついつい声を掛けちゃった。てへっ
「お兄さん大丈夫ですか?気分が悪かったり、痛かったりする?」
うずくまっている人の前に膝をつき、視線を合わせるようにして声を掛ける。
「え、あ……大丈夫、です。ちょっと、足を怪我してしまっただけなので……」
ん?お兄さんだと思っていたのに、思っているよりも声が高いというか、青年役の多い女性声優のようなちょっと甘い声。
そう、俺も好きだった緒●恵●さんっぽい感じ。
うん、蔵馬とかめちゃくちゃ好きだったよ。
コスはしてないけど……。
俺がやっても似合わないしね。
「ん?あれ?お兄さんじゃなくて、お姉さん?」
声を聞いてなぜか焦ってしまった。
服装とか色々、パッと見は男性に見えていたんだけど、声を聞いて改めて顔を見ると、どう見ても女性だった。
この世界で男装とか女装している人なんて、まだ会ったこともなかったからびっくりしたよ。
「って、足を怪我しているなんて大変じゃん。怪我の具合にもよるけど、俺でよかったら治療しますよ」
男装のお姉さんを安心させるように、軽く微笑みかけてみる。
ルイミヤみたいに天使の笑顔ってわけじゃないけど、仏頂面で話しかけるより安心してもらえるだろ。
彼女は俺とルイミヤ、リークフリードさんの顔を順番に見て、まだ少し警戒しながらも、「ありがとうございます」と小さな声で言ってくれた。
怪我をしているのは、右の足首だけみたいだ。
捻ったのか、青い痣になっていて、見ていて痛そうだった。
「光よ、癒せ!」
俺が魔法を詠唱すると、彼女の足首に淡い光の粒子が纏わりつく。
「すごい……」
ぽそっと彼女が感嘆の声を上げてくれるとつい嬉しくてクスっと笑ってしまう。
静かに光の粒子は消えたころには、さっきまで痛そうな青痣も綺麗になくなり、腫れも引いているようだった。
無事に治療できたみたいで、俺自身もホッとする。
捻挫だから傷跡とかの心配はないと思うけど、こんな場所で怪我して動けないとか不安だもんね。
特に女性だと何があるかわかんないしさ……
それにしても、なんか最近ちょっとだけレベルアップした気がするんだよね。
切り傷とかは未だに直りが悪いけど、擦り傷くらいなら治りが早くなっている気がする。
ルイミヤとの特訓が功をなしているのかな?
「これで大丈夫。他に痛いところとかない?」
優しく笑みを浮かべて声を掛けるも、彼女は驚いたように目を見開いていて
「え?治癒魔法なんてそんな、聖女様みたいな!え!?」
なんかめちゃくちゃ動揺している様子に、逆に申し訳なくなってくる……
「お嬢さん、他に痛いところはないだろうか?」
ルイミヤが天使のような笑みを浮かべ、まだ座り込んでいる彼女に手を差し伸べる。
ルイミヤのあの笑みを直視してしまったせいか、彼女は首まで真っ赤になったうえ、ぽぉーっと見つめている。
うん。わかる。めっちゃ見惚れるよね。
王子様ってこういうのか~ってしみじみと思うもん。
「歩けるか?」
ルイミヤの手を借りて立ち上がらせてもらった後、コクコクと何度も首を縦に振って肯定している。
「はい!えっと、治療してくださりありがとうございます!私はリリアンと言います」
さっきまでの動揺はどこへやら、もう目はルイミヤに釘付けだ。
「あの、もしよろしければ、私の村に来ていただけないでしょうか?お礼もしたいですし、なんでしたら今日からお祭りもあるので来ていただきたいです!」
結構必死な感じで、ルイミヤの手をしっかり握ってお誘いする男装のお姉さん、基リリアンさん。
ちょっと宝塚っぽい感じでカッコ可愛いけど、ルイミヤは……
って、別に俺は関係ないから!
ルイミヤに手を出すと、リークフリードさんっていう怖~いお兄さんが睨み付けて来るよ~。
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え?あの人では恋のライバルにもならないってことか?
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