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第一章
6.本当の姿
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クローゼットの中から俺がとりあえず選んだのは、一番シンプルそうなシフォン生地のワンピース。
袖のレースも綺麗だし、淡い黄色の生地も綺麗だったから。
あと、腹の回りを圧迫するようなデザインじゃないのが、唯一このドレスだけだったから……
本当に、これが一番の重要ポイントだな。
他の物は、コルセットだったり、リボンで締め上げたりするタイプだった。
コレ、一人で着るなんて無理じゃね?誰か呼んで、着付けしてもらわなきゃ着ることできないんじゃないか?
って、色々な疑問が頭をよぎった。
コスプレ衣装として、腰のベルトに付けていた小さなポシェットから眼鏡とコンタクトケースを取り出す。
青色のカラコンのままでもいいんだけど、ずっと付けているのはさすがに目に負担がかかるから、コンタクトケースに戻す。
本当はちゃんと洗ってから戻したいのだけど、洗浄液も今はないから我慢だ。
部屋に設置されていた全身が写る大きな鏡の前で、ヒラリと一回転して、自身の姿を確認する。
付け睫毛は流石に外したものの、まだメイクを落としていない。
変な癖のついてしまった黒い地毛は手櫛でなんとか落ち着かせた。
何となく女性っぽさが残る中途半端な恰好になってしまったものの、今は仕方がない。
「はぁ……本当は嫌だけど、仕方ないよな……。あとでメイド長さんにお願いして男物の服を見繕って貰おう。って、そうだ。王子待たせてんだった」
自分の姿に不満が残るものの、王子を扉の外に待たせているのを思い出し、慌てて声を掛ける。
「お待たせしました。入っていただいて大丈夫ですよ」
ほどなく、ゆっくりと警戒するように扉が開かれ、おずおずと入って来た第三王子。
たしか、名前はルイミヤ殿下だったっけ?
と、その後ろに控えていたのは、銀色の髪に赤い瞳を持った騎士さんだった。
そいや、この騎士の人、俺が最初に召喚された時も殿下の側に居たなぁ~……
襟足の長い柔らかそうな金髪に、透き通った水色の瞳。
どこからどう見ても王子様って感じのルイミヤ殿下とは対照的な騎士の人。
短い銀髪に、血のように赤い切れ長の眼が少し冷たい印象を与えている。
白銀の鎧に胸元には、瞳と同じ色の赤色の宝石が嵌め込まれた勲章を着けていた。
多分、年は30歳くらいかな?俺よりも少し年上だと思うけど、この世界の人の年齢なんてわからないからな……
精悍な顔立ちが、結構俺の好みなんだよね~。
殿下はまだ幼さの残る18くらいか?ん~、可愛いけど俺の範疇ではない。どちらかっていうと、弟で欲しいタイプ!
マキが見たら、絶対に二人とも撮影の餌食になってそうだけど……
と、ぼんやりと考えながら二人をつい見つめてしまう。
「聖女マコト様、先程は本当に失礼……誰だ、貴様!!」
まだほんのりと頬が赤かった殿下だったが、俺の顔を見るなり、いきなり声を荒げて怒鳴ってくる。
「え?俺?俺はさっきから聖女って言われている真琴ですけど?」
銀髪の騎士さんなんて、殿下の声と同時に、剣に手を掛けて警戒している。
「いやいやいや、いきなり攻撃しようとしないでくださいよ!」
今すぐにでも攻撃してきそうな二人に、慌てて手を上げて説明してみる。
「えっと、あ、さっきまでウィッグ被っていたからだって。本当はこっちが本当の姿なの!それに、俺は男だって説明しただろ!」
しどろもどろに説明するも、まだ疑わし気に俺を睨み付けてくる二人にどう説明するべきか頭を抱える。
「あ……頭、あるじゃん」
慌ててベッドにおいて置いたウィッグを持ってきて二人に見せる。
「これ。これ被っていたんだって。衣装だとくつろげないから、服はクローゼットの中の物をお借りしたけど……でも、女物しかなかったから、仕方なくコレ着ただけで。決して、俺が女ってわけじゃないから!」
何を否定して、何を説明しているのか、自分でもわからなくなってきた。
ウィッグを見て、怪訝そうに眉をひそめるルイミヤ殿下。
綺麗なお顔なのに、眉間に深い皺が寄ってしまって……
「瞳の色はどうやって変化させたんだ?先程まで、宝石のような美しい青い瞳だっただろう?今は、……黒になっているじゃないか」
俺の目をジッと睨み付けながら、まだ剣の柄に握り締めながら質問してくる。
「あ~、あれはカラコン。えっと、目の色を変えられる道具を入れていたの。今は疲れたから外したんだよ」
信じてくれよ。と言うように胸の前で両手を組み、ウルウルした目で上目遣いに見つめる。
俺の哀願に、まだちょっと怪しんでいるようだったが、ルイミヤ殿下も騎士の人も、やっと剣から手を離してくれた。
「…………わかった。信じよう」
たっぷりの沈黙のあと、ポツリと呟き、俺の部屋に用意されていた広いソファー腰掛けた。
俺、部屋に入るのは許可したけど、座っていいなんて言ってないのに……
むしろ、俺にも向かい側に座るように指示してくる。
なんか、最初と態度が違うくないか?
「聖女マコト様のステータスを解読させたので、内容を伝えたい」
袖のレースも綺麗だし、淡い黄色の生地も綺麗だったから。
あと、腹の回りを圧迫するようなデザインじゃないのが、唯一このドレスだけだったから……
本当に、これが一番の重要ポイントだな。
他の物は、コルセットだったり、リボンで締め上げたりするタイプだった。
コレ、一人で着るなんて無理じゃね?誰か呼んで、着付けしてもらわなきゃ着ることできないんじゃないか?
って、色々な疑問が頭をよぎった。
コスプレ衣装として、腰のベルトに付けていた小さなポシェットから眼鏡とコンタクトケースを取り出す。
青色のカラコンのままでもいいんだけど、ずっと付けているのはさすがに目に負担がかかるから、コンタクトケースに戻す。
本当はちゃんと洗ってから戻したいのだけど、洗浄液も今はないから我慢だ。
部屋に設置されていた全身が写る大きな鏡の前で、ヒラリと一回転して、自身の姿を確認する。
付け睫毛は流石に外したものの、まだメイクを落としていない。
変な癖のついてしまった黒い地毛は手櫛でなんとか落ち着かせた。
何となく女性っぽさが残る中途半端な恰好になってしまったものの、今は仕方がない。
「はぁ……本当は嫌だけど、仕方ないよな……。あとでメイド長さんにお願いして男物の服を見繕って貰おう。って、そうだ。王子待たせてんだった」
自分の姿に不満が残るものの、王子を扉の外に待たせているのを思い出し、慌てて声を掛ける。
「お待たせしました。入っていただいて大丈夫ですよ」
ほどなく、ゆっくりと警戒するように扉が開かれ、おずおずと入って来た第三王子。
たしか、名前はルイミヤ殿下だったっけ?
と、その後ろに控えていたのは、銀色の髪に赤い瞳を持った騎士さんだった。
そいや、この騎士の人、俺が最初に召喚された時も殿下の側に居たなぁ~……
襟足の長い柔らかそうな金髪に、透き通った水色の瞳。
どこからどう見ても王子様って感じのルイミヤ殿下とは対照的な騎士の人。
短い銀髪に、血のように赤い切れ長の眼が少し冷たい印象を与えている。
白銀の鎧に胸元には、瞳と同じ色の赤色の宝石が嵌め込まれた勲章を着けていた。
多分、年は30歳くらいかな?俺よりも少し年上だと思うけど、この世界の人の年齢なんてわからないからな……
精悍な顔立ちが、結構俺の好みなんだよね~。
殿下はまだ幼さの残る18くらいか?ん~、可愛いけど俺の範疇ではない。どちらかっていうと、弟で欲しいタイプ!
マキが見たら、絶対に二人とも撮影の餌食になってそうだけど……
と、ぼんやりと考えながら二人をつい見つめてしまう。
「聖女マコト様、先程は本当に失礼……誰だ、貴様!!」
まだほんのりと頬が赤かった殿下だったが、俺の顔を見るなり、いきなり声を荒げて怒鳴ってくる。
「え?俺?俺はさっきから聖女って言われている真琴ですけど?」
銀髪の騎士さんなんて、殿下の声と同時に、剣に手を掛けて警戒している。
「いやいやいや、いきなり攻撃しようとしないでくださいよ!」
今すぐにでも攻撃してきそうな二人に、慌てて手を上げて説明してみる。
「えっと、あ、さっきまでウィッグ被っていたからだって。本当はこっちが本当の姿なの!それに、俺は男だって説明しただろ!」
しどろもどろに説明するも、まだ疑わし気に俺を睨み付けてくる二人にどう説明するべきか頭を抱える。
「あ……頭、あるじゃん」
慌ててベッドにおいて置いたウィッグを持ってきて二人に見せる。
「これ。これ被っていたんだって。衣装だとくつろげないから、服はクローゼットの中の物をお借りしたけど……でも、女物しかなかったから、仕方なくコレ着ただけで。決して、俺が女ってわけじゃないから!」
何を否定して、何を説明しているのか、自分でもわからなくなってきた。
ウィッグを見て、怪訝そうに眉をひそめるルイミヤ殿下。
綺麗なお顔なのに、眉間に深い皺が寄ってしまって……
「瞳の色はどうやって変化させたんだ?先程まで、宝石のような美しい青い瞳だっただろう?今は、……黒になっているじゃないか」
俺の目をジッと睨み付けながら、まだ剣の柄に握り締めながら質問してくる。
「あ~、あれはカラコン。えっと、目の色を変えられる道具を入れていたの。今は疲れたから外したんだよ」
信じてくれよ。と言うように胸の前で両手を組み、ウルウルした目で上目遣いに見つめる。
俺の哀願に、まだちょっと怪しんでいるようだったが、ルイミヤ殿下も騎士の人も、やっと剣から手を離してくれた。
「…………わかった。信じよう」
たっぷりの沈黙のあと、ポツリと呟き、俺の部屋に用意されていた広いソファー腰掛けた。
俺、部屋に入るのは許可したけど、座っていいなんて言ってないのに……
むしろ、俺にも向かい側に座るように指示してくる。
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