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1.召喚されました?
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「成功だぁ!!」
「やったぁー!聖女様ー!」
「文献の通りの美しさだな!」
「聖女さまー、聖女さまー!」
何かを喜んでいる声が聞こえる。
大勢の人の声。ちょっと野太い男の人の声。それと同時に、金属がこすれ合うカチャカチャとした音。
街イベントとは言え、参加者の大半は女性だ。
確かに、カメラマンとして参加している人や一般の人は男性の割合が多いけど、こんな歓声が上がることはない。
本当に、ここはあのイベント会場なのだろうか?
俺は、魔法陣の上に立っていたマキを助けるために手を伸ばして……そして……
恐る恐る目を開けると、高い天井から色とりどりの光が降り注いでいる。
何処かの教会なのか、ステンドグラスに似た窓からの光が、白い壁や天井に鮮やかな色を映し、さながら絵画のように見えてつい目を奪われる。
俺が今いる場所は、マキの足元に現れた金色の魔法陣と同じものだった。
魔法陣を中心に、周りには灰色のローブを着た、魔法使いが使っているような木でできた杖を持った人たちが数人。
それと、その周りを囲うように中世の甲冑みたいな物を着た人が大勢いた。
よく見ると、甲冑姿の人たちは、王侯貴族のような煌びやかな服を着た人たちを守っているようにも見える。
「どこだ……ここ……?」
さっきまで居たコスプレイベントの会場にいた人と余り遜色はないものの、明らかに雰囲気が違う。
今まで色んなアニメやら漫画やら小説ではよくある展開と思っていたことが、まさか自分に起こるなんて思ってもいなかっただけに、頭が回らない……
別に、アレが原因で死んだわけじゃないだろうから、これは召喚って考える方が正しいよな……?
本当に死んで転生していないって確証はないものの、今の自分の服装や手の大きさを見て変化がないことを確かめる。
うん。やっぱり騎士王のコスプレ姿のままだから、死んだわけじゃないと思う。
よくある、死んだら異世界に転生して、チート能力を貰える。って、お決まりのヤツじゃないっぽい。
神様にも会ってないしな。
……召喚の場合、どうだったっけ……?
なんか召喚に成功したのを喜んでいる様子なのはわかる。
ただ、一言だけ。これだけは言っておきたい。
「オイ、誰が聖女だって?」
俺が唯一ツッコミを入れることができたのは、コレだけだった。
明らかに男だとわかるように、地声で言ったせいか、騒いでいた周りの声がピタリと止む。
「…………」
静寂が広がり、明らかに戸惑っている様子が伺える。
「……聖女様、結構男らしいお声なんだな……」
誰かがポツリと呟いた声ですら聞こえるくらいの静けさに、何故か俺の方がいたたまれなくなる。
「あのぉ……ここはいったい」
沈黙が申し訳なくて、つい俺から質問してしまうものの、内心では「なんで俺が気を遣わなきゃいけねぇーんだよ」と悪態をついていた。
それなのに、誰も答えてくれる様子はない。
むしろ、誰が説明するんだって雰囲気で顔を見合わせているくらいだし……
「あのぉ……」
再度声を掛けようとした瞬間、急に貴族っぽい人たちや甲冑を着た人たちがザッと一歩引いて、道が開けた。
モーゼが海を割るみたいなやつ。
一気に道ができて、その真ん中を明らかに王族っぽい金髪の青年と、そんな彼を護衛するように少し後ろを歩く銀髪の男性。
当然のように見目麗しい二人の姿に、つい「めちゃくちゃコスプレさせたい!」って、欲がふつふつと湧いて来る。
ちょっと某王道ファンタジーゲームのコスプレしませんか?って、言いたいくらいに……
え?これメイクいらなくない?素でコレとかズルい。
西洋顔、マジで羨ましい……
じゃないっ!
当然のように開かれた道を歩き、俺の前まで来た王子様(仮)が、いきなり片膝を付いて俺の手を取ってくる。
これ、某ネズミの国とかでよく見るやつだ……
え?こんなプリンセスな展開本当にあっていいのか?
ってか、俺、男なんですけど?
「聖女様、いきなりこのような場所に召喚させたこと、お許しください。ただ、貴女様のお力をどうしてもお借りしたく、このような強行をお許しください」
ライオンボードと日焼け防止の手袋で作ったガントレット越しに、手の甲にそっと口づけをし、優しい笑みを向けてくる。
あんな微笑を見たら、普通の女の子なら一発アウトだと思う。そう。普通の女の子なら……
ホント、顔が良い……
めちゃくちゃ良い……
まぁ、めっちゃ歳下だろうけど……
「あのさ……悪いんだけど、絶対人違いだと思うんだよ……」
王子の手が添えられた手とは反対側の手で、困ったように頬をポリポリと掻きながら、人違いだってことを説明しようとする。
「いえ、間違いではありません!貴女様は文献通りの聖女様です!『そのもの青き衣をまといて、金色の野に降り立つ』と書かれているのです!貴女様は、まさにその文献通りの聖女様です!」
「いや、ナ●シカかよっ!?」
王子(仮)の真剣な眼差しと共に力強く説得されるも、つい素でツッコミを入れてしまう。
いや本当に、コレ駄目だろ。
ってか、そんな力説されても困るし。
「だーかーらー、絶対に人違いなんだって!そもそも、元は俺の足元に魔法陣が現れた訳でもないし、俺が聖女なわけないだろ!俺は男だ!」
力強く否定の言葉を口にするが、周りは困惑した顔をするだけで……
「戸惑うお気持ちもわかります。ですが、貴女様のお力が今はどうしても必要なのです」
あ、これ、人の話し一切聞かないやつだ……
どれだけ否定しても聞き入れて貰えそうにない雰囲気につい溜息を漏らす。
「聖女様、いきなり知らない世界に召喚されたこともあり混乱されていることでしょう。まずはステータスの確認を行い、お部屋に案内いたします。王への謁見は後程させていただきます」
「やったぁー!聖女様ー!」
「文献の通りの美しさだな!」
「聖女さまー、聖女さまー!」
何かを喜んでいる声が聞こえる。
大勢の人の声。ちょっと野太い男の人の声。それと同時に、金属がこすれ合うカチャカチャとした音。
街イベントとは言え、参加者の大半は女性だ。
確かに、カメラマンとして参加している人や一般の人は男性の割合が多いけど、こんな歓声が上がることはない。
本当に、ここはあのイベント会場なのだろうか?
俺は、魔法陣の上に立っていたマキを助けるために手を伸ばして……そして……
恐る恐る目を開けると、高い天井から色とりどりの光が降り注いでいる。
何処かの教会なのか、ステンドグラスに似た窓からの光が、白い壁や天井に鮮やかな色を映し、さながら絵画のように見えてつい目を奪われる。
俺が今いる場所は、マキの足元に現れた金色の魔法陣と同じものだった。
魔法陣を中心に、周りには灰色のローブを着た、魔法使いが使っているような木でできた杖を持った人たちが数人。
それと、その周りを囲うように中世の甲冑みたいな物を着た人が大勢いた。
よく見ると、甲冑姿の人たちは、王侯貴族のような煌びやかな服を着た人たちを守っているようにも見える。
「どこだ……ここ……?」
さっきまで居たコスプレイベントの会場にいた人と余り遜色はないものの、明らかに雰囲気が違う。
今まで色んなアニメやら漫画やら小説ではよくある展開と思っていたことが、まさか自分に起こるなんて思ってもいなかっただけに、頭が回らない……
別に、アレが原因で死んだわけじゃないだろうから、これは召喚って考える方が正しいよな……?
本当に死んで転生していないって確証はないものの、今の自分の服装や手の大きさを見て変化がないことを確かめる。
うん。やっぱり騎士王のコスプレ姿のままだから、死んだわけじゃないと思う。
よくある、死んだら異世界に転生して、チート能力を貰える。って、お決まりのヤツじゃないっぽい。
神様にも会ってないしな。
……召喚の場合、どうだったっけ……?
なんか召喚に成功したのを喜んでいる様子なのはわかる。
ただ、一言だけ。これだけは言っておきたい。
「オイ、誰が聖女だって?」
俺が唯一ツッコミを入れることができたのは、コレだけだった。
明らかに男だとわかるように、地声で言ったせいか、騒いでいた周りの声がピタリと止む。
「…………」
静寂が広がり、明らかに戸惑っている様子が伺える。
「……聖女様、結構男らしいお声なんだな……」
誰かがポツリと呟いた声ですら聞こえるくらいの静けさに、何故か俺の方がいたたまれなくなる。
「あのぉ……ここはいったい」
沈黙が申し訳なくて、つい俺から質問してしまうものの、内心では「なんで俺が気を遣わなきゃいけねぇーんだよ」と悪態をついていた。
それなのに、誰も答えてくれる様子はない。
むしろ、誰が説明するんだって雰囲気で顔を見合わせているくらいだし……
「あのぉ……」
再度声を掛けようとした瞬間、急に貴族っぽい人たちや甲冑を着た人たちがザッと一歩引いて、道が開けた。
モーゼが海を割るみたいなやつ。
一気に道ができて、その真ん中を明らかに王族っぽい金髪の青年と、そんな彼を護衛するように少し後ろを歩く銀髪の男性。
当然のように見目麗しい二人の姿に、つい「めちゃくちゃコスプレさせたい!」って、欲がふつふつと湧いて来る。
ちょっと某王道ファンタジーゲームのコスプレしませんか?って、言いたいくらいに……
え?これメイクいらなくない?素でコレとかズルい。
西洋顔、マジで羨ましい……
じゃないっ!
当然のように開かれた道を歩き、俺の前まで来た王子様(仮)が、いきなり片膝を付いて俺の手を取ってくる。
これ、某ネズミの国とかでよく見るやつだ……
え?こんなプリンセスな展開本当にあっていいのか?
ってか、俺、男なんですけど?
「聖女様、いきなりこのような場所に召喚させたこと、お許しください。ただ、貴女様のお力をどうしてもお借りしたく、このような強行をお許しください」
ライオンボードと日焼け防止の手袋で作ったガントレット越しに、手の甲にそっと口づけをし、優しい笑みを向けてくる。
あんな微笑を見たら、普通の女の子なら一発アウトだと思う。そう。普通の女の子なら……
ホント、顔が良い……
めちゃくちゃ良い……
まぁ、めっちゃ歳下だろうけど……
「あのさ……悪いんだけど、絶対人違いだと思うんだよ……」
王子の手が添えられた手とは反対側の手で、困ったように頬をポリポリと掻きながら、人違いだってことを説明しようとする。
「いえ、間違いではありません!貴女様は文献通りの聖女様です!『そのもの青き衣をまといて、金色の野に降り立つ』と書かれているのです!貴女様は、まさにその文献通りの聖女様です!」
「いや、ナ●シカかよっ!?」
王子(仮)の真剣な眼差しと共に力強く説得されるも、つい素でツッコミを入れてしまう。
いや本当に、コレ駄目だろ。
ってか、そんな力説されても困るし。
「だーかーらー、絶対に人違いなんだって!そもそも、元は俺の足元に魔法陣が現れた訳でもないし、俺が聖女なわけないだろ!俺は男だ!」
力強く否定の言葉を口にするが、周りは困惑した顔をするだけで……
「戸惑うお気持ちもわかります。ですが、貴女様のお力が今はどうしても必要なのです」
あ、これ、人の話し一切聞かないやつだ……
どれだけ否定しても聞き入れて貰えそうにない雰囲気につい溜息を漏らす。
「聖女様、いきなり知らない世界に召喚されたこともあり混乱されていることでしょう。まずはステータスの確認を行い、お部屋に案内いたします。王への謁見は後程させていただきます」
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