17 / 27
【白い四葩に一途な愛を】
15
しおりを挟む ――結婚から約一年後。
理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。
悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。
「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」
今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、
「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」
急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。
実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。
初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。
「……これって、やっぱり……」
悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。
「……とりあえず、調べてみないとね」
悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。
トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、
「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」
そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。
「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」
本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。
「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」
何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。
その夜、
「……やっぱり」
悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。
「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」
実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。
何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。
「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」
そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。
翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。
「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」
帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。
急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。
「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」
忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。
それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、
「姉さん!」
いつになく慌てた表情の朔太郎が、
「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」
一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。
悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。
「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」
今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、
「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」
急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。
実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。
初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。
「……これって、やっぱり……」
悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。
「……とりあえず、調べてみないとね」
悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。
トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、
「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」
そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。
「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」
本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。
「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」
何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。
その夜、
「……やっぱり」
悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。
「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」
実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。
何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。
「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」
そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。
翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。
「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」
帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。
急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。
「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」
忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。
それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、
「姉さん!」
いつになく慌てた表情の朔太郎が、
「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」
一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
130
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる