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【白い四葩に一途な愛を】
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どれくらい泣いていたのかわからない。
外が白く明るくなる頃。
涙も声も枯れ果て、泣く元気もなくなった頃。
やっと、気持ちの整理がついた。
もう思い残すことは此処にはないから……
ゆっくりと汚れて皺になってしまったスーツに袖を通し、身だしなみを整えていく。
自分が出したモノが乾いて貼り付くパネルを雑巾で拭い、床に出来た國士の精の跡も綺麗に掃除していく。
数時間前、何もなかったように……
此処で行われた行為なんて、何もなかったように……
誰にも、このことがバレないように……
汚してしまった箇所を一つ一つ、丁寧に掃除していく。
オレが此処で働いていたっとことを、自分がいた痕跡を消し去るように。
「はぁ……こんな、もんかな……」
ピカピカになった秘書用のデスクと、國士の社長用のデスクを見てクスッと笑う。
「國士のは、物自体が少ないから掃除しやすかったなぁ~」
國士のデスクをソッと愛おし気に撫でる。
「天河が言ってた通り、國士、オレだけ特別に優しかったんだな……。オレのこと、本当に愛してくれてたんだ……」
最後に抱いて貰ったときのコトを思い出し、今までの抱き方との違いに苦笑いしてしまう。
「はぁ…腰も尻もイテェー! どんだけ叩くんだよ! 國士に叩かれたのなんて、初めてだったな……」
口に出してしまうとまた寂しくなってしまい、大きく息を吸ってから、スーツのポケットからぐちゃぐちゃになってしまった白い封筒を取り出す。
「あちゃ~、鞄に入れとけば良かった。まさか、最後に抱いて貰えるなんて、思ってもみなかったからな……」
手で皺を伸ばすように丁寧に押さえ付ける。
「こんなぐちゃぐちゃにしちゃって、ごめんな……」
少しだけマシになった白い封筒、『辞表』と書かれた白い封筒を社長デスクに置く。
こんな事にならなくても、今日コレを出すつもりだった。
國士に会わなくても、今日というか、昨日で辞めるつもりだった。
もう、身体が言う事を聞いてくれないのがわかっていたから……
いつ迷惑を掛けてしまうかわからなかったから……
「國士、ごめんな。嫌な思いさせて……。でも、オレは今でもお前のこと、愛してるよ。オレの初恋も、恋人も、想い人も、全部……國士だけだよ」
誰も居ない部屋でポツリと呟く。
此処に居ない愛しい人への告白をし、そっと部屋を出た。
帰る前に、もう一つだけ……
天河の部屋、副社長である天河の部屋の前に立つ。
当然扉には鍵が掛かっていた。
「そりゃ、そうだよな……。やっぱりこうするしかないか……」
鞄から大きめの封筒を取り出し、元々用意していた封筒や家のスペアキーを入れていく。
オレの最後の『お願い』を記した大切な手紙。
自ら書いたはずの手紙を見て、つい苦笑してしまう。
「國士、絶対鍵捨ててるだろうしな……。もし、もし……本当に記憶が戻るんだったら、コレないと困るだろうし……。天河、いつもありがとう。それと、いつも損な役回りばっかりさせちゃってごめん。本当に、色々ごめんな……」
ここに居ない彼を想い、扉に額を付けて祈る。
この手紙がちゃんと天河に届きますように……
細やかな願いを込めて、封筒を扉の下の隙間に差し込んだ。
「これでヨシ! 掃除の人が来ちゃうし、早く帰ろう! オレも、色々準備しないと、な……」
さっきまでの憂鬱な気持ちを拭い去り、晴々とした表情で会社を出る。
まだ夜が明け始めたばかりの空は、夜が残る紫色の空に鮮やかな橙色の光が下から差して、重なり合った場所が淡い桃色のように白く輝いていた。
外が白く明るくなる頃。
涙も声も枯れ果て、泣く元気もなくなった頃。
やっと、気持ちの整理がついた。
もう思い残すことは此処にはないから……
ゆっくりと汚れて皺になってしまったスーツに袖を通し、身だしなみを整えていく。
自分が出したモノが乾いて貼り付くパネルを雑巾で拭い、床に出来た國士の精の跡も綺麗に掃除していく。
数時間前、何もなかったように……
此処で行われた行為なんて、何もなかったように……
誰にも、このことがバレないように……
汚してしまった箇所を一つ一つ、丁寧に掃除していく。
オレが此処で働いていたっとことを、自分がいた痕跡を消し去るように。
「はぁ……こんな、もんかな……」
ピカピカになった秘書用のデスクと、國士の社長用のデスクを見てクスッと笑う。
「國士のは、物自体が少ないから掃除しやすかったなぁ~」
國士のデスクをソッと愛おし気に撫でる。
「天河が言ってた通り、國士、オレだけ特別に優しかったんだな……。オレのこと、本当に愛してくれてたんだ……」
最後に抱いて貰ったときのコトを思い出し、今までの抱き方との違いに苦笑いしてしまう。
「はぁ…腰も尻もイテェー! どんだけ叩くんだよ! 國士に叩かれたのなんて、初めてだったな……」
口に出してしまうとまた寂しくなってしまい、大きく息を吸ってから、スーツのポケットからぐちゃぐちゃになってしまった白い封筒を取り出す。
「あちゃ~、鞄に入れとけば良かった。まさか、最後に抱いて貰えるなんて、思ってもみなかったからな……」
手で皺を伸ばすように丁寧に押さえ付ける。
「こんなぐちゃぐちゃにしちゃって、ごめんな……」
少しだけマシになった白い封筒、『辞表』と書かれた白い封筒を社長デスクに置く。
こんな事にならなくても、今日コレを出すつもりだった。
國士に会わなくても、今日というか、昨日で辞めるつもりだった。
もう、身体が言う事を聞いてくれないのがわかっていたから……
いつ迷惑を掛けてしまうかわからなかったから……
「國士、ごめんな。嫌な思いさせて……。でも、オレは今でもお前のこと、愛してるよ。オレの初恋も、恋人も、想い人も、全部……國士だけだよ」
誰も居ない部屋でポツリと呟く。
此処に居ない愛しい人への告白をし、そっと部屋を出た。
帰る前に、もう一つだけ……
天河の部屋、副社長である天河の部屋の前に立つ。
当然扉には鍵が掛かっていた。
「そりゃ、そうだよな……。やっぱりこうするしかないか……」
鞄から大きめの封筒を取り出し、元々用意していた封筒や家のスペアキーを入れていく。
オレの最後の『お願い』を記した大切な手紙。
自ら書いたはずの手紙を見て、つい苦笑してしまう。
「國士、絶対鍵捨ててるだろうしな……。もし、もし……本当に記憶が戻るんだったら、コレないと困るだろうし……。天河、いつもありがとう。それと、いつも損な役回りばっかりさせちゃってごめん。本当に、色々ごめんな……」
ここに居ない彼を想い、扉に額を付けて祈る。
この手紙がちゃんと天河に届きますように……
細やかな願いを込めて、封筒を扉の下の隙間に差し込んだ。
「これでヨシ! 掃除の人が来ちゃうし、早く帰ろう! オレも、色々準備しないと、な……」
さっきまでの憂鬱な気持ちを拭い去り、晴々とした表情で会社を出る。
まだ夜が明け始めたばかりの空は、夜が残る紫色の空に鮮やかな橙色の光が下から差して、重なり合った場所が淡い桃色のように白く輝いていた。
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