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【白い四葩に一途な愛を】
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真っ暗な部屋に戻り、明かりを灯す。
最近は間接照明にだけスイッチを入れて、部屋全体を見ない様にしている。
彼を想ってしまう物を見るのが辛いから……
これが、オレに出来る唯一の対処法だった。
部屋のあちこちに2人の思い出の品を隠す様に、この4ヶ月で吐いた花を至る所に飾った。
透明のガラスの器に水を張り、花弁を浮かべる。
昔、母さんが吐いていた花を飾る時と同じ方法。
あの時は、なかなか枯れない花を不思議に思っていたけれど、今になってよくわかる。
彼への想いが強ければ強い程、枯れることなどないってこと……
母さんが、父さんを想ってずっと吐いていた花が枯れるわけもないこと……
恨み言を口にしながらも、想いを募らせて、毎日花を吐いていたことも……
「ホントに、オレ、母さんにそっくりなんだなぁ……」
水に浮かぶ紫陽花を指先でチョンチョンと突きながら呟く。
オレが吐き出す花は、何故か紫陽花だけだった。
普通は色々な種類の花を吐くらしい。
その人への切実な想いを、その花言葉が代弁してくれる。
『私を想って』
『あなただけを見つめる』
『この恋に気づいて』
『私のものになって』
パンジーや向日葵、リナリア、クローバー……
想い花病を患った人が吐くことの多い、代表的な花たち……
片想いを募らせた人にぴったりの花たち……
でも、オレが吐き出すのは紫陽花だけ……
母さんと一緒で、他の花を吐いたことはない。
色や品種によって花言葉が異なる紫陽花。
國士が好きだって言ってくれた花……
【色鮮やかな青色】
『無情、貴方は美しいが冷淡だ』
國士の横顔を見るたびに、この花を吐き出してしまう。
子どもの頃からカッコよくて、オレの憧れの人。
他の人には結構冷たい対応をするクセに、オレには無邪気な笑みを見せてくれて……
あの笑顔を見られるのはオレだけなんだって知った時は、嬉しすぎて人目も憚らず抱き付いてしまった。
カッコいいのに、可愛いところもいっぱいある、オレの大好きな人。
【緑から紫や赤にグラデーションが綺麗な秋色】
『辛抱強い愛』
どちらかって言うと、未練がましいって言われる方が合っているんじゃないかな?
どれだけ嫌われても、忘れられても、どれだけ……
それでも諦めることが出来ない。
諦めたくなんてない……
愛しくて仕方ない。
【アナベル、白っぽい緑】
『ひたむきな愛』
オレの初めては全て國士に捧げた。
初恋も、愛も、ファーストキスも國士だったなぁ~。
2人とも初めてだったから心臓がバクバクし過ぎて、全然わからなくて……
「ごめん。もう一回いい?」って國士が申し訳無さそうに言うのが可愛かった。
オレも何度も頷いて、次は触感を確かめるようにゆっくり口付けをした。
身体だって、國士しか受け入れたことなんてない。
國士だけがオレの気持ち良い場所も、スグにイッてしまう場所も……
全部、國士だけが知ってる。
お腹の奥、自分でも触ることの出来ない場所も、國士のモノで満たして貰った。
全部、全部、愛しい彼に捧げた。
だから、オレは……もう二度と思い出して貰えなくても、オレの全ては國士のモノだから……
【赤に近いピンク】
『強い愛情』
國士以上に誰を愛せるって言うんだろ?
あとは、想い人のことを完全に忘れるコト……
花落病症候群は花を吐き出す病の総称でしかない。
そのうちの一つに、忘れ花病というものがある。
思い詰めた失恋が原因で発症とされる病だ。
この病を患った場合、吐き出される花と共に失恋相手の記憶が失われていく。
つまり、その人との記憶がなくなれば、花を吐くことなんてなくなる……
最後は、他の人を好きになって、その人と結ばれるコト……
オレの場合は、コレか忘れ花病にかかるかのどちらかしか完治する方法はない。
他の人を好きになる…?
國士のことを忘れて、別の人に恋をする?
國士を忘れて生きる?
新しい恋をすれば……
こんな苦しい想いをすることもなくなる……
死ななくて済む……
けど、どっちもあり得ない……
もしオレが國士以外の人を好きになったら……
そうなったら、オレがオレじゃなくなっちゃいそうなんだよな……
オレの好きな人は、愛しているのは、この世でたった1人だけ……
國士、オレのこと忘れても、嫌悪していても、オレが愛してるのは國士だけだよ。
最近は間接照明にだけスイッチを入れて、部屋全体を見ない様にしている。
彼を想ってしまう物を見るのが辛いから……
これが、オレに出来る唯一の対処法だった。
部屋のあちこちに2人の思い出の品を隠す様に、この4ヶ月で吐いた花を至る所に飾った。
透明のガラスの器に水を張り、花弁を浮かべる。
昔、母さんが吐いていた花を飾る時と同じ方法。
あの時は、なかなか枯れない花を不思議に思っていたけれど、今になってよくわかる。
彼への想いが強ければ強い程、枯れることなどないってこと……
母さんが、父さんを想ってずっと吐いていた花が枯れるわけもないこと……
恨み言を口にしながらも、想いを募らせて、毎日花を吐いていたことも……
「ホントに、オレ、母さんにそっくりなんだなぁ……」
水に浮かぶ紫陽花を指先でチョンチョンと突きながら呟く。
オレが吐き出す花は、何故か紫陽花だけだった。
普通は色々な種類の花を吐くらしい。
その人への切実な想いを、その花言葉が代弁してくれる。
『私を想って』
『あなただけを見つめる』
『この恋に気づいて』
『私のものになって』
パンジーや向日葵、リナリア、クローバー……
想い花病を患った人が吐くことの多い、代表的な花たち……
片想いを募らせた人にぴったりの花たち……
でも、オレが吐き出すのは紫陽花だけ……
母さんと一緒で、他の花を吐いたことはない。
色や品種によって花言葉が異なる紫陽花。
國士が好きだって言ってくれた花……
【色鮮やかな青色】
『無情、貴方は美しいが冷淡だ』
國士の横顔を見るたびに、この花を吐き出してしまう。
子どもの頃からカッコよくて、オレの憧れの人。
他の人には結構冷たい対応をするクセに、オレには無邪気な笑みを見せてくれて……
あの笑顔を見られるのはオレだけなんだって知った時は、嬉しすぎて人目も憚らず抱き付いてしまった。
カッコいいのに、可愛いところもいっぱいある、オレの大好きな人。
【緑から紫や赤にグラデーションが綺麗な秋色】
『辛抱強い愛』
どちらかって言うと、未練がましいって言われる方が合っているんじゃないかな?
どれだけ嫌われても、忘れられても、どれだけ……
それでも諦めることが出来ない。
諦めたくなんてない……
愛しくて仕方ない。
【アナベル、白っぽい緑】
『ひたむきな愛』
オレの初めては全て國士に捧げた。
初恋も、愛も、ファーストキスも國士だったなぁ~。
2人とも初めてだったから心臓がバクバクし過ぎて、全然わからなくて……
「ごめん。もう一回いい?」って國士が申し訳無さそうに言うのが可愛かった。
オレも何度も頷いて、次は触感を確かめるようにゆっくり口付けをした。
身体だって、國士しか受け入れたことなんてない。
國士だけがオレの気持ち良い場所も、スグにイッてしまう場所も……
全部、國士だけが知ってる。
お腹の奥、自分でも触ることの出来ない場所も、國士のモノで満たして貰った。
全部、全部、愛しい彼に捧げた。
だから、オレは……もう二度と思い出して貰えなくても、オレの全ては國士のモノだから……
【赤に近いピンク】
『強い愛情』
國士以上に誰を愛せるって言うんだろ?
あとは、想い人のことを完全に忘れるコト……
花落病症候群は花を吐き出す病の総称でしかない。
そのうちの一つに、忘れ花病というものがある。
思い詰めた失恋が原因で発症とされる病だ。
この病を患った場合、吐き出される花と共に失恋相手の記憶が失われていく。
つまり、その人との記憶がなくなれば、花を吐くことなんてなくなる……
最後は、他の人を好きになって、その人と結ばれるコト……
オレの場合は、コレか忘れ花病にかかるかのどちらかしか完治する方法はない。
他の人を好きになる…?
國士のことを忘れて、別の人に恋をする?
國士を忘れて生きる?
新しい恋をすれば……
こんな苦しい想いをすることもなくなる……
死ななくて済む……
けど、どっちもあり得ない……
もしオレが國士以外の人を好きになったら……
そうなったら、オレがオレじゃなくなっちゃいそうなんだよな……
オレの好きな人は、愛しているのは、この世でたった1人だけ……
國士、オレのこと忘れても、嫌悪していても、オレが愛してるのは國士だけだよ。
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