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「最後の発情期からどれくらい経ちます?」
Ωの男性でも検査可能な産婦人科の病院
男女とは別に、α・β・Ωの性別が存在する
Ωは、男女共に妊娠・出産に特化した体質に進化した人種のことだ
男性のΩなら妊娠も出産も可能な今だが、Ω男性の妊娠の検査を受け入れてくれる産婦人科は、通常よりもやはり少ない
やっと見つけた隣町のこの病院も、予約するのに時間が掛かってしまった
早く病院に行かなきゃって気持ちはあったのに、予約もなかなか取れなくて…
診察を受ける為のお金も用意しなくちゃいけなくて…
給料日のこともあり、あの日、検査薬の結果を見た日から受診するまでに2週間も経ってしまっていた
「ぜ、前回の発情期が、2ヵ月くらい前です…」
緊張しながら先生の話しを分娩台に乗って聞く
男なのに分娩台に乗せられ、下半身は当然のように靴下以外何も身に付けていない状態で、脚を固定されて機械で股を大きく開かされる
カーテン越しで話しをしているとはいえ、オレの下半身は丸見えの状態だ
女性の先生が優しく話しかけながら、冷たいジェルをオレのアナルに塗り付け、機材や金具をナカに入れたり、指で触られたりする感触が怖くて仕方ない
コワイ、コワイ、コワイ、コワイ…
恥ずかしい、気持ち悪い、早く、早く終わって…
「んっ…」
指がおもむろに小さく膨らんだ前立腺を掠め、つい声が出てしまって恥ずかしい
慌てて声を抑えるように腕で顔を隠した
「あら、ごめんなさい。怖くないですよ。もうすぐ触診は終わるので、もうちょっとだけ我慢してくださいね」
指がオレのナカを擦り上げる感覚に身体が震えてしまう
ペニスが勃起してしまわないのを祈りながら、唇を噛み締めて早く終わってくれるのを願った
クチュンと濡れた音を響かせて、指や金具が抜かれる
やっと触診の検査が終わり、機械音を響かせてて無理矢理開かされていた脚を閉じられる
恐怖でガチガチになっていた身体から力が抜け、分娩台のベッドでグッタリとしてしまう
「お疲れ様です。こちらへどうぞ」
看護師さんが優しく声を掛けてくれ、分娩台から立ち上がろうとするも脚に力が入らなくて、ペタリと尻餅をついてしまう
「大丈夫ですか?立てますか?お腹を冷やすと、赤ちゃんにも悪いのでゆっくりこちらに座ってください」
優しい女医さんの声に眩暈がする
「妊娠は確定だと思いますが、念のためにエコーも撮りましょう
まだ顔などは分かりませんが、ちゃんと赤ちゃんの形はわかると思いますよ」
妊娠は、確定…?
ウソ、だよね…
ここには、検査薬が間違いだったって、確認したくて来たのに…
なのに……
目の前が涙で歪んでしまって、ちゃんと先生の顔も見えない
瞬きをすると、簡単に涙が溢れ落ちてしまい、側にいた看護師さんたちに驚かれてしまった
「びっくりしますよね。とくに、男性のΩは…
でも大丈夫ですよ。私たちもしっかりサポートするので、男性も女性も、初めての妊娠は嬉しいけど、不安ですよね」
妊娠したことを喜んでいるけど、怖がっていると思われたのか、すごく心配してくれる
優しく声を掛けて、励ましてくれる
それが、余計に辛かった…
そうだよな…
番がいる人は、きっと嬉しいことなんだよな…
何も言えないオレを女医の先生は何か察してくれたのか、看護師さんたちに一言二言声を掛けて下げてくれた
「みんなは下がって貰ったから、あなたの本当の気持ちを教えてくれるかしら?」
先生の優しさにまた涙が溢れ出してくる
「あなた、まだ学生さんですよね?」
そっと肩を撫でてくれる手が温かくて、嗚咽を漏らしながら頷いた
「はい…、大学生…です。大学、3年で、まだ…就職も、卒業も、決まってなくて…」
静かに聞いてくれるのが有り難かった
「一応、エコーを撮りましょうか」
簡易ベッドに横になり、テキパキと1人で機材の準備をしていく
お腹に冷たいジェルを塗られ、ヒヤリと冷えた機械が当てられる
モノクロの映像が、よくドラマなどで見たことのある映像を映し出し
「わかりますか?これが貴方の赤ちゃんです。だいたい、妊娠9週目といったところですね…」
ピーナッツに小さな手足が生えたような白い塊
コレが人間になるってのが信じられないけれど、オレの身体の中にもう一つの尊い命があるってことは覆しようがない
「お相手の人は、このことは知っているのかしら?」
説明される度に目の前が暗くなっていく
みるみる青くなっていくオレに、先生が心配そうに見てくる。
「これ…、相手には言わなきゃ、ダメですか…?中絶とか、同意書って…」
ここに来るまでに、オレなりに色々調べてみた
中絶の費用だったり、中絶する為に必要な書類のことなど…
ネットで調べれるだけのことは調べた
先生は、今にも泣き出しそうなオレの頭を落ち着くまで撫でてくれ
「一番は、まずお相手の人としっかり話し合ってください。産むにしても、中絶するにしても、誰かに相談することは大切です。
必ず、必ずひとりで思い悩まないように…」
念のため、と中絶についてと出産について、どちらの説明もしてくれた
すっごく親身になって、「どちらの選択をしても、後悔することはあります。だからこそ、ひとりで悩まずにお相手の方に話しをして下さいね」と話しをしてくれた
それなのに、今のオレには全然頭に入って来ない
何を言われても、どれだけ優しく言われても、ずっと離れたところから聞こえるみたいで…
何か壁があるみたいで…
他人事のように先生の話しを聞くしかなかった
Ωの男性でも検査可能な産婦人科の病院
男女とは別に、α・β・Ωの性別が存在する
Ωは、男女共に妊娠・出産に特化した体質に進化した人種のことだ
男性のΩなら妊娠も出産も可能な今だが、Ω男性の妊娠の検査を受け入れてくれる産婦人科は、通常よりもやはり少ない
やっと見つけた隣町のこの病院も、予約するのに時間が掛かってしまった
早く病院に行かなきゃって気持ちはあったのに、予約もなかなか取れなくて…
診察を受ける為のお金も用意しなくちゃいけなくて…
給料日のこともあり、あの日、検査薬の結果を見た日から受診するまでに2週間も経ってしまっていた
「ぜ、前回の発情期が、2ヵ月くらい前です…」
緊張しながら先生の話しを分娩台に乗って聞く
男なのに分娩台に乗せられ、下半身は当然のように靴下以外何も身に付けていない状態で、脚を固定されて機械で股を大きく開かされる
カーテン越しで話しをしているとはいえ、オレの下半身は丸見えの状態だ
女性の先生が優しく話しかけながら、冷たいジェルをオレのアナルに塗り付け、機材や金具をナカに入れたり、指で触られたりする感触が怖くて仕方ない
コワイ、コワイ、コワイ、コワイ…
恥ずかしい、気持ち悪い、早く、早く終わって…
「んっ…」
指がおもむろに小さく膨らんだ前立腺を掠め、つい声が出てしまって恥ずかしい
慌てて声を抑えるように腕で顔を隠した
「あら、ごめんなさい。怖くないですよ。もうすぐ触診は終わるので、もうちょっとだけ我慢してくださいね」
指がオレのナカを擦り上げる感覚に身体が震えてしまう
ペニスが勃起してしまわないのを祈りながら、唇を噛み締めて早く終わってくれるのを願った
クチュンと濡れた音を響かせて、指や金具が抜かれる
やっと触診の検査が終わり、機械音を響かせてて無理矢理開かされていた脚を閉じられる
恐怖でガチガチになっていた身体から力が抜け、分娩台のベッドでグッタリとしてしまう
「お疲れ様です。こちらへどうぞ」
看護師さんが優しく声を掛けてくれ、分娩台から立ち上がろうとするも脚に力が入らなくて、ペタリと尻餅をついてしまう
「大丈夫ですか?立てますか?お腹を冷やすと、赤ちゃんにも悪いのでゆっくりこちらに座ってください」
優しい女医さんの声に眩暈がする
「妊娠は確定だと思いますが、念のためにエコーも撮りましょう
まだ顔などは分かりませんが、ちゃんと赤ちゃんの形はわかると思いますよ」
妊娠は、確定…?
ウソ、だよね…
ここには、検査薬が間違いだったって、確認したくて来たのに…
なのに……
目の前が涙で歪んでしまって、ちゃんと先生の顔も見えない
瞬きをすると、簡単に涙が溢れ落ちてしまい、側にいた看護師さんたちに驚かれてしまった
「びっくりしますよね。とくに、男性のΩは…
でも大丈夫ですよ。私たちもしっかりサポートするので、男性も女性も、初めての妊娠は嬉しいけど、不安ですよね」
妊娠したことを喜んでいるけど、怖がっていると思われたのか、すごく心配してくれる
優しく声を掛けて、励ましてくれる
それが、余計に辛かった…
そうだよな…
番がいる人は、きっと嬉しいことなんだよな…
何も言えないオレを女医の先生は何か察してくれたのか、看護師さんたちに一言二言声を掛けて下げてくれた
「みんなは下がって貰ったから、あなたの本当の気持ちを教えてくれるかしら?」
先生の優しさにまた涙が溢れ出してくる
「あなた、まだ学生さんですよね?」
そっと肩を撫でてくれる手が温かくて、嗚咽を漏らしながら頷いた
「はい…、大学生…です。大学、3年で、まだ…就職も、卒業も、決まってなくて…」
静かに聞いてくれるのが有り難かった
「一応、エコーを撮りましょうか」
簡易ベッドに横になり、テキパキと1人で機材の準備をしていく
お腹に冷たいジェルを塗られ、ヒヤリと冷えた機械が当てられる
モノクロの映像が、よくドラマなどで見たことのある映像を映し出し
「わかりますか?これが貴方の赤ちゃんです。だいたい、妊娠9週目といったところですね…」
ピーナッツに小さな手足が生えたような白い塊
コレが人間になるってのが信じられないけれど、オレの身体の中にもう一つの尊い命があるってことは覆しようがない
「お相手の人は、このことは知っているのかしら?」
説明される度に目の前が暗くなっていく
みるみる青くなっていくオレに、先生が心配そうに見てくる。
「これ…、相手には言わなきゃ、ダメですか…?中絶とか、同意書って…」
ここに来るまでに、オレなりに色々調べてみた
中絶の費用だったり、中絶する為に必要な書類のことなど…
ネットで調べれるだけのことは調べた
先生は、今にも泣き出しそうなオレの頭を落ち着くまで撫でてくれ
「一番は、まずお相手の人としっかり話し合ってください。産むにしても、中絶するにしても、誰かに相談することは大切です。
必ず、必ずひとりで思い悩まないように…」
念のため、と中絶についてと出産について、どちらの説明もしてくれた
すっごく親身になって、「どちらの選択をしても、後悔することはあります。だからこそ、ひとりで悩まずにお相手の方に話しをして下さいね」と話しをしてくれた
それなのに、今のオレには全然頭に入って来ない
何を言われても、どれだけ優しく言われても、ずっと離れたところから聞こえるみたいで…
何か壁があるみたいで…
他人事のように先生の話しを聞くしかなかった
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