愛される奇蹟

ゆあ

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「今度の土曜日、Kanonってカフェで待ち合わせで」
何回見直してもここだよな...
高級マンションに併設されてるカフェで、1階には高級スーパーまで入ってる...
このジュースですら、俺の知ってる値段とは大違いだった
俺、場違いなんだけど...

目の前にはお綺麗なモデル様
今日は緩く三つ編みで束ねられた髪が妙に色っぽいんだけど...
芸能人って、サングラスとか帽子で身バレしないように注意しないとダメなんじゃ...と心配していると、ここのカフェ自体が特殊で、一般の人が来ないから安心なんだと言われた

「夏樹は何が好き?ケーキ、足りないなら好きなの追加していいから」
先程からチマチマ食べているケーキもめちゃくちゃに美味しいはずなのに、キャパオーバーで味がしない...
「高校生かぁ...オレより4個下?なのかな...。受験とか大変そうな時期なのに、呼び出してごめんね」
さっきから、好きなモノや嫌いなモノ、休み何してるとか、自分のこととか...
質問責めされる。姉貴がファンなのを伝えると、仲良いんだね。と笑ってくれた。


「それで、この後は下で買い物をして、うちでご飯でいいかな?」
「え?買い物してご飯?...す、すみません。今日呼ばれたのもイマイチ理解出来てなくて...あの、ホントすみません!」
慌てて謝る俺に優しく微笑んでくれる
ヤバい、色々勘違いしそう


「この前、夕飯作ってるって言ってたから、じゃあ、オレにも夏樹のご飯作って欲しいなって言ったんだよ。
いい返事だったけど、聞いてなかった?」
クスクス笑いながら頭を撫でられる
耳まで赤くなるのが自分でもわかり、顔を背ける

「ごめん、なさい...。でも、俺みたいな素人が作ったって...」
「夏樹に作って欲しいんだよ。まぁ、そこはいいや。早速買い物に行こう」

恋人のように指を絡めるように手を握られてカフェを出る
自分の分だけでも会計しようとするも、ニコニコ笑うだけで受け取ってくれない


「たっっっかぁ......」
通常よりも一割以上高い食材に気が引ける
とりあえず、オムライスが食べたいって要望を叶えるために値段を見ないようにして必要な食材を選んでいく
なのに、子どもみたいに「これは?お菓子も一緒に買う?」と目にしたモノをどんどんカゴに入れてくる

「食べるんならいいけど、冬弥さん、体型維持とかないの?」
「冬弥だよ。さんとか要らないから、冬弥って呼んでよ」

鼻が付きそうな距離で言われ、驚いて一歩下がる
ビックリした、こんなところでめっちゃ近いって!

ただ、買い物をしただけのはずなのに色々と気疲れしてしまった
ずっと手を握られて買い物をする姿は、他の人にはどう見られてるんだろ...



彼の部屋は最低限の物しかないと言っていい程シンプルなモノだった
広いリビングなのに、テレビとソファー、テーブルがあるだけ。他に家具らしいものはなく、広い部屋が更に広く感じる
それなのに、食器類や調理器具はどこの厨房だろう?ってくらい揃っていたが、全く使われた様子もない

「あ、それこの前買ったばっかりだから好きに使って
何が必要なのかわからなかったからとりあえずで揃えただけだし、足りないのがあれば次までに揃えるよ」

嬉しそうにカウンターキッチンの向かいから声を掛けれ困惑する

「あの、オレ、なんかやっちゃった...って、やらかしまくってますよね。2回も撮影の邪魔したから...」
申し訳なさでつい頭を抱えて縮こまってしまう

きゅ~きゅるるるる...
なんか、マヌケな鳴き声が聞こえる
彼を見るとお腹を摩り
「夏樹、お腹、空いちゃった、な...」
コテンと頭を傾げる可愛すぎる姿にキュンッとなり、急いでオムライスを作るべく準備をする
カウンターキッチンの向かいから、時々つまみ食いや悪戯をしてくる彼に文句を言いながら作る料理は楽しかった
いつの間にか緊張も解け、敬語もなくなってきた
「だから、それサラダ用だから。オムライスに入れないって」


2つのオムライスとサラダが出来上がり、リビングのテーブルに並べる
先に座って待っていた冬弥の目が輝くのがすごくわかる
ソファーしかないから仕方なく二人で横並びに座る
「いただきます♪」
すっごく嬉しそうな顔で食べてくれるのを見ると、自分まで嬉しくなる
「うん!すっごく美味しい!天才」
「こんなの、ホントにただの家庭料理じゃん
冬夜なら、もっといいモノいつも食べてるだろうし」
褒められすぎて照れ臭くなり、軽口を叩く

「ねぇ、夏樹は、恋人はいる?」
「ゲホッ、ゴホッ...いきなり、なに?」
真剣な眼差しで見つめられ、渋々応える
「恋人なんて居ないって...ずっと、好きな人は居たんですけど...こないだ結婚しちゃったから今は失恋真っ只中...」
言ってて悲しくなり、泣きそうなる
あぁ、ホントに失恋したんだ...


我慢していたのに、止めどなく涙が溢れ出してくる
手の甲で涙を拭っていると、不意に抱きしめられ、目元にキスをされる
「そんなに好きな人が居たんだ...今は泣いてもいいよ」
なぜか安心してしまい、彼の胸で子どものようにワンワン泣いてしまった
泣いてる間、ずっと優しく頭や背中を撫でてくれ、時折キスをしてくれる
こんなことおかしいのに、なぜか受け入れてしまう
なぜか、彼にされるキスは嫌じゃなかった...


やっと落ち着いた頃には目は真っ赤に充血してしまっていた

「...ん"っ、ごめ...なんか、めっちゃ泣いたらスッキリした。ありがとう」
大泣きしてガラガラになった声でお礼を言う
すっかり冷めてしまったご飯に罪悪感が募るも、まだ優しく抱きしめてくれる彼の胸に額預け
「あ~、やっと踏ん切りついた!クヨクヨしてても、今後も絶対会うことになるし、俺も新しい出会いに期待する!」

冬弥の胸を軽く押して離れようとするも逆に強く抱きめられてしまい
「オレじゃダメ?夏樹のこと、大事にするから、オレのになってよ...」
さっきまでの触れるだけのキスとは全く違う、深いキスをされる
唇を舌でこじ開けて、舌が絡み合う
「ん"っ...ちょっ、やめっ...」
離れようとすると頭を抑えられ、逃げることができない
口内をなぞるように舐められると気持ち良さから頭がフワフワする
「っん、ふぁ...ぁっ」
身体の力が抜け、ソファーに押し倒される
何度も深く口付けをされ、息が上がる
糸を引くように唇が離れ、衣服の乱れを直してくれる

「ごめん、性急過ぎたよね。でも、夏樹のことが欲しいのは本当だから」
真剣な眼差しで告白されるも、今までの行為が一気に恥ずかしくなり
「ばーかっ!いきなり何すんだよ!
こ、こんな...キスとかも、初めてだったのに...
まだ冬弥のこと何も知らねーのに...この、エッチ!」
真っ赤になって怒鳴りつけるも、嬉しそうに笑われてしまい
「ごめん、ごめん。ホントに、夏樹が可愛くて...
今日はこれ以上はしないから...夏樹が、好きになってくれるように頑張る、ね」
頬に触れるだけのキスをされ、殴ろうとするも止められ
「顔は、困るかな...ごめんね」

なんやかんやで暴れ回り、すっかり冷め切ってしまったオムライスをさっさと食べ終え
「もう帰る!これ以上居たら、身の危険しかなさそうだしな!
せっかく、ダチになれたのに、バーカっ!!」
恥ずかしさのあまり言葉が出てこず、子どもみたいな悪口しか言えない
そのまま家に逃げるように帰ったが、どうやって帰ってきたのか覚えてない
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