愛される奇蹟

2

結婚式から2週間、やらかしてしまった事を思い出しては自己嫌悪に陥る
ヤバい、恥ずかし過ぎて死ぬ！！
学校でも思い出しては頭を抱えていると後ろからドカッと背中にもたれ掛かってくる重みで顔を机にぶつけてしまい
「イッテェー！何すんだよ竜矢！！」
額を打ち付けたせいで少し赤くなってしまい、恨めし気に乗っかってきた友達を睨みつける
「お姉さんが嫁に行って寂しい夏樹にいい情報持ってきてやったのに、そんな睨むなよ」

人懐っこい笑顔で人の上に乗ったまま話しかけてきた

「お姉さん、冬弥の大ファンなんだろ？今日、大池公園とこで撮影があるらしいぜ
上手くいけばサインくらいは貰えたりするかもよ。ダメでも写真くらいはこっそりと撮れるんじゃね？」

冬弥の撮影...
名前を聞くとこの前の目元にキスをされたことを思い出してしまい、ボッと顔が赤くなる
「ん？あり？夏樹も冬弥のファンだっけ？ってか、めっちゃ顔赤くね？何があった？」
なんかめっちゃ質問責めされたけど、適当に受け答えし、とりあえず撮影はこっそり見るだけ行こうかな。と放課後になるまでをソワソワと過ごした


人集りの出来ている公園
撮影ってこっそりするもんじゃないんだなぁって思いながら人垣の隙間から覗く
雑誌で見た事のある人が何人か...
一際目立つのが冬弥だ
見た目は女性のような出立ちなのに、同じ男性のモデルよりも背が高い
なんか、あの周りだけが別世界みたいな...

そんな事を思いながら眺めているといつの間にか人波に押されて前の方へと移動していた
後ろでキャーキャー騒ぐ女子高生に押され、バランスを崩して停止線の中に倒れ込んでしまう
固まるスタッフ...
ヤバい、めっちゃデジャヴなんだけど...

「...あっ、この前の泣き虫くん」
冬夜の一言にカッと顔が熱くなる
なんで覚えてんだよーっ！？
「す、すみません。ちょっと転んじゃって...すぐ出ます！お邪魔しました！！」

慌てて人集りから離脱し、公園端の自販機の前でしゃがみ込む
「またやっちまったよー！！ってか、何で覚えてんだよっ！？」
恥ずかしさのあまり叫んでしまい、周りから不審な目を向けられる
落ち着こうと自販機のジュースを買い、ベンチでボーっと座っていると

「今日は泣いてないんだ。この前も今日も、急に逃げるから話し聞きそびれたんだけど...？」
急に後ろから耳元で声をかけられ、ビクッと身体が跳ねる
慌てて振り返ると今一番会いたくない人物が当たり前のようにおり
「な、なんで...？え、撮影は...？」
「今は休憩中だから、君を探しに来たんだ。名前も教えて貰ってないし、ね」
なぜか当然のように探しに来たと言われるし、頬を優しく撫でられ親指が唇に触れる
「名前は？オレのことは、知ってるのかな？冬弥って名前、知ってる？」
綺麗な顔につい見惚れ、何度も頷いて
「えっと、夏樹...です。」
「夏樹、か...可愛いね。連絡先も教えて」
気がつくと携帯の番号を教えていた
いやいやいや！ダメだろ！

「冬弥、何やってんだ。ナンパは止めろって忠告しただろ！勝手に休憩にしやがって、さっさと戻るぞ！
キミ、本当にすまない。こいつの奇行は忘れてくれないかな。」

マネージャーらしき人が彼に文句を言いながら連れ去っていく
「夏樹、連絡するね。次はこっそりと、ね」
去り際に耳元で囁かれ、腰が砕ける
なんだ？何があってこんなことに...？
自分の状況が理解出来ず、残っていたジュースを一気飲みしてふらふらと家に帰った