【完結】世界で一番愛しい人

こうらい ゆあ

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おまけ

大好きな人の匂いに包まれて

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もうすぐ、また発情期ヒートが来てしまう

ハル君は相変わらず忙しそうで、出張で家を空ける日も時々だけどある
番になる前は、3ヶ月くらい会えないのは普通だった
僕自身、シゲルさんって番が一応居たから…
その番よりも、ハル君の方が僕を心配してくれていたし、発情期ヒートの時期はいつも助けてくれてた
シゲルさんは……発情期ヒートの時は運命のあの子の所にいて、僕のところには帰ってきてくれなかったのに…

甘えちゃダメだって思ってても、やっぱりハル君に依存してしまう
ずっと憧れていた初恋の人
番にして貰いたいってずっと想っていた人

今の、僕の大好きな旦那さん


自分で言ってて顔が熱くなる
クーラーが効いた部屋で仕事をしてるのに、暑くてパタパタと手で火照ってしまった顔を煽ぐ

「ハル君が帰って来るのは、週末なんだよね…」
パソコンの横に置いてある卓上カレンダーを見て、つい溜息が漏れてしまう
数日前から出張が入ってしまい、週末まで帰って来れない
一緒に暮らすようになって、出張は長くても3日くらいだったから、こんなに離れたのは初めてかもしれない

デスクにコテンと頬を付けるように蹲り
「ハル君に、会いたいなぁ…すぐ、帰って来てくれるのはわかってるけど、早く、会いたい」
自分がこんなに寂しがり屋だったなんて、知らなかった

独りぼっちで待ち続けるなんて、慣れてるって思ってたはずなのに…


そっと目を閉じると、あの家のことを思い出してしまう
壊れそうなのに、狂いそうなのに、ずっと満たされない
側に居て欲しいのに、彼の匂いに包まれたいのに、あるのは柔軟剤の匂いと、僕の臭いしかしない衣類
どこに行っても、どれだけ待っても、彼は帰って来てくれなかった
どんなに連絡しても繋がらない
どれだけ伝言を残しても、聞いてすら貰えない

独りぼっちで待ち続ける部屋で、少しずつ、少しずつ、身体が限界を迎えていった
「あの時、死ななくて良かった…」
ポツリと呟いた声は、誰にも聞かれていない
でも、今ここに居ることに、自分自身が安堵している

「ハル君、早く…帰って来て…」


「ただいま」
不意に背後から抱き締められ、耳元で囁かれる
弾かれた様に顔を上げると、大好きな彼が嬉しそうに微笑んでいた
「えっ…なん、で…?まだ、帰って来れないんじゃ…」
目を見開いて、居るはずのない彼が本物なのかとペタペタと頬を触ると擽ったそうにクスクス笑われてしまい

「ミツが寂しくしてそうだったから、代わりの奴を置いてさっさと帰ってきた。発情期ヒート直前の愛しい番を置いて何処かに行くなんて無理だろ?」
僕の手を取り、手のひらに何度も口付けを落としていく
チラッと横目で見てくるその表情が、すっごく蠱惑的で、見ているだけでドキドキしてしまう

「ミツ、おかえりなさいのキスはしてくれないのか?」
さっきから何度も僕の手のひらに口付けて来るのに、可愛いおねだりを言ってくるハル君
手のひらをペロッ舐められると、ピクって身体が反応してしまい
「ハル君の、えっち…そんなのされたら、おかえりのキス出来ないよ」

頬を膨らませて文句を口にするも、本心は嬉しくて仕方ない
帰って来てくれるのはまだ先だと思っていたから…
こんなに早く、帰って来てくれるなんて思いもしなかったから…

「ハル君、おかえりなさい」
彼の頬に擦り寄り、そのままチークキスをする
本当はちゃんとやりたいけど、僕の手をまだ離してくれないから仕返し

「ミツ…そんなエアキスでおかえりなんてダメだろ?」
拗ねた様子のハル君が可愛くて、改めて唇に口付ける
「おかえりなさい、ハル君。早く帰ってきてくれて嬉しい」
ギュッと彼に抱き付いて、彼の胸に顔を埋める
走って帰って来てくれたのか、ほんの少しの汗の匂いと共に、ハル君のフェロモンの香りが僕を包み込んでくれる

「ただいま、ミツ…
俺が居ない間、発情期ヒートはまだ来てない?」
ハル君は、僕の発情期ヒートに敏感みたいだけど、それはシゲルさんとのことがあったから…

忙しいハル君に甘えちゃいけないってわかってるけど、やっぱり嬉しくて仕方ない

「うん。もうすぐだと思う…。だから、またハル君の服、借りてもいいかな?ハル君の服で、巣を作りたいから…」
初めて作ったあの日、無我夢中だったせいでクローゼットの中に隠れる様に作ってしまった
ハル君の服を全部汚しちゃったし、クローゼットの中も…
でも、ハル君は怒るわけでもなく、本当に嬉しそうに喜んでくれて…

「ミツ、愛してる。そんな嬉しいこと、断るわけないだろ」
いきなり抱き上げられて、そのままくるくる回って喜んでいるハル君
普段は大人びた色気とキリッとしたカッコ良さがあるのに、僕の前では昔から無邪気な笑顔を見せてくれる

「ありがとう。僕も大好き、愛してる」
2人っきりの部屋で、まだ外も明るいのに2人でベッドに倒れ込んだ
そのまま触れ合うだけのスキンシップが、徐々に僕の感じる場所を撫で始めて……
まだ発情期ヒートでもないのに、離れていた時間を埋めるようにたくさん愛し合った

◇ ◇ ◇

昨日は、散々求められちゃって…
片付けもできなくて…

でも、また巣を作っても良いって言って貰えた
ハル君の服を使っても良いって、言って貰えた

ウキウキした気持ちで彼の服を物色する
寝室にあるクローゼットの扉を開き、匂ってくる彼の香りに身体が疼く
多分、昨日のがきっかけで発情期ヒートが誘発されてきてる…
早く、巣を作らなきゃ…

服を手に取るも、何かが物足りない

ハル君の匂いがするけど……

腕を組みながら、頭を傾げて悩んでいるも、不意に良いことを思い付き、ウキウキした気持ちで脱衣所に向かう
出張から帰って来たばかりだから、洗濯物カゴの中はハル君の衣類でいっぱいだった
「あった」

ここに来た瞬間から、もうずっと身体が熱い
ハル君の匂いに包まれているみたいで、早く触れて欲しくて堪らない

ペタンと床に座り込み、愛し気にカゴごとハル君の服を抱き締めていると…
「ミツ?甘い匂いがして来たから、発情期ヒートが来ちゃったのか……。こんな所で何してるの?」
カゴを抱き締めて、コテンと頭をハル君の服に乗せている僕にゴクリと喉を鳴らすハル君

「巣をね…作りたかったんだけど…」
呼吸の度に身体が熱くなり、無意識に腰が揺れてしまう
まだ触れてもいないのに、ハル君のまだ洗濯していない衣類の匂いを嗅ぐだけでお腹の奥が疼いてくる

「コレが、一番ハル君の匂いを感じられて……
早く、また満たして欲しくなっちゃった…」
脚をもじもじと擦り合わせながら、素直にして欲しいことを言葉にする

「コレで巣を作りたいけど、ベッド…汚しちゃうから…作るなら、ココか僕の部屋かな?って…」
立ち上がろうにも、身体に力が入らない
まだ触れてもないのに、ズボンの前が苦しいし、後ろも濡れているのがわかる
ハル君の着ていたワイシャツを握り締め、鼻に押し付けて胸いっぱいに吸い込む

「ミツ…、俺の匂いが好き?」
トロンとした目でハル君を見上げ、へにゃっと微笑みながら頷くと嬉しそうな笑みを浮かべて頭を撫でてくれた

「おいで。好きなの持って行っていいから。また今からいっぱい可愛がって上げるよ」
頬を撫でられるだけで、全身にビリビリとしたような快感が走る
早くこの手でもっと触れて欲しい
もっと、ハル君の匂いに包まれたい

ワイシャツを握り締めたままハル君の手に擦り寄ると、そのまま抱き上げてくれた

頭がふわふわする

「可愛い。ミツ、愛してる」

まだ午前中だし、今日は平日だから仕事をしなきゃいけないはずなのに…
ハル君も、仕事があるはずなのに…
でも、もう今は離れたくない
大好きな人の匂いに包まれて、熱を感じたい


当然のように、そのまま発情期ヒートになってしまって…
ハル君はずっと側に居てくれた
いきなりだったのに、会社の人も、先生も優しくて…

むしろ、「みっちゃん、春樹にいっぱい愛して貰えて良かったねぇ~」って言われた
バレてないって思ってたのに、首筋にいっぱいキスマークを付けられていて、隠せなかった…

買い物行く時どうしよう…
暑いのに、ハイネックの服着なきゃいけないじゃん…
ハル君、絶対ワザとだ…

呆れた様に溜息が漏れるも、無意識に口の端は上がってしまう
それだけ愛されてるのがわかるから
世界で一番愛されてるのがわかるから…

「ハル君には、付けすぎって文句言わなきゃ…」
ハル君の背中にも、いっぱい引っ掻き傷を作ってしまってる自分のことは棚上げしとこ…



トリュフ様@trufflechocolat
ハル君の匂いが大好きなミツの絵を描いてくれました⸜( ´ ꒳ ` )⸝♡︎
いつもありがとうございます!
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感想 30

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みんなの感想(30件)

金浦桃多
2024.08.04 金浦桃多
ネタバレ含む
2024.08.05 こうらい ゆあ

桃多さん、読んでくださった上に、感想まで書いてくださり、本当にありがとうございます。(´;Д;`)

みっちゃん強い子、でもダメな子なせいで、ハルくんへの想いをなかなか告げれず拗らせまくってました。
お子が出来れば、強い母になりましたが( ⩌⩊⩌)✧

クズ共に制裁を!とよく言われてましたので、改稿した時にシレッと思ってた設定ぶっ込んでみました。
まぁ、死ぬより辛いことも色々あるんですけどね| ू‾᷄ω‾᷅)₎₎...コッソリ


戦闘員Dくんのツイノベとコレはかなり落差がありそうなのに、読んでくださりありがとうございます。
あのツイノベもいつかちゃんと書きたいなぁ〜って思ってます。

解除
sのれん
2024.07.25 sのれん
ネタバレ含む
2024.07.25 こうらい ゆあ

sのれんさん、いつも感想ありがとうございます。(つ´ω`*)´д`*)ギュ❤
脱衣所でいつかまん丸な巣をこっそり形成して欲しいですよね〜

とりあえず、キッチンとお風呂場とリビングは制覇してもらわないとφ(❐_❐✧メモメモ
あと、ベランダ←
ハル君、とりあえず小林には自慢してますね。ガッツリしてますね。


久々にこの2人のお話書きましたが、イチャイチャ楽しかったです(੭ु´ ᐜ ` )੭ु⁾⁾

解除
一ノ瀬麻紀
2024.02.12 一ノ瀬麻紀

おまけありがとうございます❤
分かるー。ミツくんの叫びたい気持ち、めっちゃ分かる。
ミツくん達みたく酷くはなかったけど(笑)義母達の初孫だったから、色々ねぇ😅出産祝いも、友達みんな新生児サイズの服とかオムツで、すぐサイズ合わなくなっちゃったし💦
サイズが変わる問題は自分の子の時に感じたから、友人の出産祝いには少し大きめのオムツをプレゼントしたよ。

でも、早速尻にひかれてて、母は強しって感じだね。それくらいじゃないと👍人ひとり育てるんだから。

なんだかんだ言っても、平和な家庭を築けているようで良かった☺️

2024.02.13 こうらい ゆあ

まきたん
いつも感想ありがとうございます。
出産祝いあるあるをお話にしてみました( ⩌⩊⩌)✧

お義父さん、絶対孫にデレデレな未来しか見えないし、ハルくんも娘LOVE溢れさせ過ぎて怒られるしかない(*´꒳`*)って思うわけですよ。

この2人はなんやかんなで仲良く平和になっていくと思う


娘の嫁入りとか彼氏出来たとか、彼女出来たって時はまた色々ありそうだけどw

解除

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