【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ

文字の大きさ
上 下
23 / 29

23

しおりを挟む
どれくらい寝てたんだろ…
すっごく嫌な夢を見た
二人に赤ちゃんが出来て、幸せそうで…
僕はもう、要らないって言われた気がする
もう不要だって…

これから、どうしよう
あの家に帰って…帰って、どうするんだろ…
新しいところに引っ越す?
でも、番に捨てられたΩひとりに貸してくれる場所があるんだろうか…
実家に戻る?お父さんも、お母さんも、いっぱい心配掛けちゃうの嫌だな…

発情期ヒートが来た時とか、どうしよう…
あんな醜い姿、見られたくない…

何処に行けば…、どうすればいいのかわからない



「あぁ…、僕みたいなのの為に、Ω専用の病院があるのかな…」
唯一思い付いたのが、入院施設の精神病院
そこに行けば、誰にも迷惑は掛けないし、静かに死ねる気がする


でも


「ハルくんとは、離れたくないな…」
口に出した瞬間、ハルくんへの恋心が溢れてくる

ハルくんに頼めば居させてくれるかな…
ハルくんは優しいから、こんな状況の僕を見捨てないはず…
甘えてもいいのかな…

αのハルくんに、僕みたいな捨てられたΩが一緒に居ても、大丈夫なのかな…

「先生はあんなこと言ってたけど、発情期が来たらどうしよう...。
もう、ひとりで居るのは、怖いな...」

ベッドの端に置かれていたハルくんの物らしい上着に手を伸ばし、匂いを嗅ぐ様に抱きしめる
落ち着く...シゲルさんのなんかよりも、ずっと…
お腹、熱くなりそう…
なんでだろ...

胸いっぱいに吸い込むように、上着に顔を埋めていると

ガチャッと扉が開き、ハルくんが心配そうに入って来る

慌てて抱きしめていた上着をシーツの中に隠し

「は、ハルくん…ごめんね。迷惑かけちゃったよね」
心臓がバクバクする
見られてないよね…
上着、隠しちゃった…


「もう起きて大丈夫なのか?」
熱がないか額に手を当てられるとその冷たさが心地よく、そっと目を閉じる

「不思議…。ハルくんだと触って貰っても怖くないし、もっと、触って欲しくなる…。
やっぱり、もう拒絶反応も出ないんだ…。僕、もう、シゲルさんの番じゃないんだね…」
嬉しいような、悲しいような、複雑な感情が渦巻き、泣きそうな笑みなってしまう
「僕、これからどうしようかな…」
ついポロッと本音が溢れてしまい、慌てて謝るもそのまま抱きしめられ

「ミツが嫌じゃないなら、このままここに住まないか?」
思いがけない言葉に目を見開いて驚くと同時に、不安になってしまう

「でも、僕…」
「ミツ、ずっとミツのこと、好きだよ。愛してる。
本当は、最初から俺が番になりたかった…。「番にして貰う」って言われた時に、先に、無理矢理にでも俺のモノにしてしまえば良かった…」

初めて聞いたハルくんの気持ち
ずっと、僕たち両想いだったの…?
あの時諦めてなければ、こんなことにならなかったの…?

「ハルくんが、僕のこと、好き…?ホントに…?夢じゃ、なくて…?」
嬉しい気持ちと不安が混じり合う
「僕も、…僕も、ずっと、ずっと…ハルくんが好きだった。番にして欲しかった。
おじさんが、ダメって言ってたけど、諦めきれなくて…
シゲルさんを、ハルくんの代わりにしちゃったから…
だから、バチが当たったんだ…。ごめんなさい。ごめん、なさい…」
涙が溢れ出し、ハルくんに縋りつきながら泣いた

「僕、最初から、ハルくんと番になりたかった。
ハルくんの赤ちゃん、産みたかった…。ごめん、なさい…。汚いΩでごめんなさい。役立たずのΩで、ごめんなさい…」
一度溢れ出した思いは止めることも出来ず、何度も何度も謝罪の言葉を口にした
その都度、「愛してる」って言ってくれて、泣き止むまでたくさんキスをしてくれた

やっと、好きな人に素直になれた
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

処理中です...