【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ

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聞き覚えのある声
気に触る声と言い方に、誰の声なのかわかってしまった
あの時、彼の、シゲルさんの後ろから出てきたあの子の声


会いたくない
顔も見たくない
見ないで欲しい
僕を、見ないで…


恐怖で振り返ることが出来ず、額から冷や汗が流れる
頸の噛み跡がズキズキと鋭い痛みが走り、そっと首筋に手をやる
熱を持った様に痛む場所
番の印があるはずの場所


「みつる?」
突然名前を呼ばれて驚いて目を見開いてしまう
ずっと聞きたかったはずの人の声
連絡してたのに、電話したのに…
壊れそうな僕を見捨てたくせに…

恐る恐る振り返ると、そこには予想した通りの二人が仲良さげに立っていた

Ωである彼を大事そうに、労わる様に腰に腕を回している僕の番

「なんでここにいるの~?偽物の番さん。あ、ボク達は赤ちゃんの定期検診なんだぁ~。
見てよ、4ヶ月だからちょっとお腹出て来たんだよ~」

愛おしげにお腹を撫でながらも、僕に見せ付けてくる
「お前には赤ちゃんなんて出来ないだろ?」と暗に言っているようだった
「ん?何その顔の傷?きったないなぁ~
病気?止めてよね、ボク妊婦なんだから、変な病気移さないでよ?」
嫌悪感を隠す様子のない彼
口許をタオルで押さえて、汚い物を見る目で僕を睨み付けてくる

そんな彼を愛おしげに見詰め、僕から距離を取るように促している僕の番
僕の、番のはずなのに…



なんで?僕はなに?
シゲルさんにとって、僕って……
なんで、そんな目で僕を見るの…?



さっきから頭の中で警鐘がガンガンなっているように痛い
呼吸がちゃんと吸えなくて、吸いすぎてて?
身体の震えが止まらない
震えを抑えようと右腕を抱えて、引っ掻く様に爪を立ててしまう


「ん?あの人ダレ~?って、あ、ふーん、シゲルくんに相手して貰えないから、他の人に種付けして貰ったの?大人しそうな顔してんのにビッチだったんだね
番が一応いるのに、誰にでもヤラせるなんて、みつるくん今の顔と一緒で汚いなぁ~」
クスクス笑いながらすれ違い様にこっそり言われる


身体の震えが止まらない
呼吸が出来ない


「…ひゅっ…ひゅっ、…ッ…」
ハルくんが僕の様子に気づき、慌てて抱きしめてくれるが過呼吸のように上手く呼吸が出来ない

「ミツっ!!」


頭が割れそうに痛い

なんで、僕じゃダメなの?
ずっと帰って来なかったのは、もう要らないから…?
なら、離婚してよ…番も、解消してよ…
もう、解放させてよ…


余りの苦しさに気を失い、その場に倒れ込む

ハルくん、ごめんなさい。
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