【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ

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辺りを注意深く気にしながら、小林だけが車に乗り込んできた

「お前だけってことは、ミツに言いにくいことか?」
嫌な予感はしていたし、あの状況のミツを見て覚悟は必要だと思っていた
苦笑いを浮かべながら頷かれ、俺の肩を慰めるように叩く

「大丈夫。最悪の状態は回避できたから。
ただ、みっちゃん、危うく死ぬ寸前だったみたいだね。春輝が急いで相手してやらなきゃ、ホントに死んじゃってたかもよ。
数ヶ月に1回のヒートを3ヶ月以内に4回、これだけでも危ういのに番持っちゃってるから変に相手を探せず枯渇状態だったしね。
身体が死ぬ前に子孫を残そうっていうやつなのかな?
前々から抑制剤で押さえ付けてたのもあるから、余計にこうなっちゃったのかも」
コイツの口から紡がれる言葉に愕然としてしまう
小林自身も結構堪えているのか、口元は笑みを作ってはいるが、眉が下がっており

「しかも、渡してた半年分の抑制剤を注射共々全部使用。みっちゃん用に少し多めに渡しちゃったのがダメだったなぁ…
みっちゃん、強い子だから、心よりも先に身体が危険を知らせてきたんだね。
ホント、死ななかったのが奇跡的だよ…。ホントに、良かった…」
医者からの言葉のはずなのに、声が震えている
小林自身も、ミツの数少ない友人として心配してくれていたんだろうな…

深く息を吐き出し、ミツの状態に気持ちが暗くなる
秘書である林田が定期的に連絡を取ってくれていたのが今回幸いだった
彼女自身も、ミツのことを大切に思ってくれているから、俺に救援を出してくれて助かった
危うく愛しい人を一生失うことになっていたから…

「まぁ、一個朗報?って言うのかな。都市伝説だと思ってたんだけど、みっちゃんの頸の歯型、確かに薄くなってきてるんだよね。
これのお陰で、酷い拒絶反応もなく春輝がみっちゃんを抱けたんだと思うよ」

「死が二人を別つまで…」
結婚式などでもよく耳にする臭いセリフを思い出す

だが、αとΩが番になるということは、通常の結婚とは異なる
番になると言うことはΩはそのαと死ぬまで離れられないと言うことだ
αは自由に生きられるのに...

「アレの執着が全くない証なのかな?
春輝、さっさとヤっちゃった方がいいんじゃない?みっちゃん、壊れちゃうよ?」

さっきまでのしんみりした態度はどこに行ったのか、他人事の様に軽い口調で言ってくる小林に悪巧みを考えているような笑みを向け

「そん時は手伝ってくれるんだろ?」
「まぁ、いいよ~。みっちゃん居なくなるとウチの経理関係壊滅しちゃうしね。
それに、ボクの可愛い子狙われると困るから、春輝にはさっさと固定作って欲しいし~」

重々しい空気はなくなり、軽口を叩きながら今後の方針を誰にも聞かれないようにコッソリと決めた
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