【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ

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どれくらい泣いたのかわからない、ハルくんのワイシャツが僕の涙でしっとり濡れてしまったのに、気にせずに抱き締めてくれてる
「…ぐすっ、はぁ……ハルくん…ごめんね、ありがとう」

いっぱい泣いたら、なんだかスッキリした
ずっと胸の奥にあった黒い塊が少しだけ小さくなった気がする
これで、また頑張れる…

大丈夫、もう2年近く続けてきたんだから…
これで、また…独りでも……


「すぅーっ、はぁー……ハルくん、迷惑ばっかりかけちゃってごめんね。もう大丈夫だから、帰るね。お礼は、また後日ちゃんとさせて」
今度はちゃんと出来た
いつも作ってる笑顔
もう、作り過ぎて本当の笑顔ってどうやるのかわからなくなったけど…
シゲルさんなら、こうやって笑えば許して貰える
これで、また嫌われなくて済む

でも、ハルくんにはバレちゃうんだよね…


「ミツ、笑わなくていいよ。無理して、笑わなくても…
アイツは帰ってこないから、此処にいろよ。病院だって行かなきゃだし、あんな部屋に帰せるわけないだろ?」


あぁ、やっぱり、ハルくんには色々バレちゃってるのかな...
ハルくんにも、嫌われたくないな…
ハルくんだけには、嫌われたく、ないな…


「とりあえず、動けそうなら病院に行って検査はして貰うからな。あんな大量の抑制剤飲んで、死んだらどうするんだ」

心配してくれる声が嬉しい
嫌われたくない…でも、ハルくんなら、聞いて貰えるのかな...
助けて、くれるのかな…

「あの、ね...」

喋っているうちにまた涙が溢れ落ちてしまう
せっかく戻る覚悟が出来たのに…
今まで我慢していた寂しさが堰を切ったように止め処なく溢れてくる

ハルくんが出張に行っていた3ヶ月
ずっと帰って来てくれない番こと。連絡も取れなくなったこと。ひとりで耐えるしか、壊れるしかできなかった発情期のこと。

耐えきれなくなって、生活もままならなくなって、誰にも連絡できなくて…

それなのに、いつもよりもずっと多い頻度で起こる発情期
死を覚悟するしか出来なかった

寂しくて、悲しくて、誰にも頼れなくて…


その日々の覚えていることを断片的に話しを聞いて貰った

「頸の噛み跡すら、薄くなってる気がするんだよね…
僕のこと、もう要らないって言われてるみたいで、見たくないんだ…
でも、仕方ないよね。僕、偽物の番だったんだよね…きっと」

自虐的な笑みを浮かべ、黙り込む
これ以上喋るとまた泣き出してしまいそうになり、頸の噛み跡に爪を立てた
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