【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ

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長くて苦しいだけの発情期ヒートがやっと終わった
まともに食事も出来ていなかった身体が、空腹を訴えている

「お腹…空いた…」
力の入らない体をなんとか起こし、寝室から出てリビングへ向かう

彼が帰ってきた形跡はない
あれから2日経ったけど、まだ運命のあの子の方にいるらしい…
ずっと、ずっと一緒に居て貰えていいな…

静かに部屋の片付けをしながら、彼の居ない家を元通りにしていく

汚してしまった大量の衣類を洗濯し、部屋を換気する
清々しい空気を感じ、はぁ…っと大きく息を吸い込む

「ハルくんに、また迷惑かけちゃったな...今度、お礼しないと...」
暗くなっていた気持ちを切り替え、ハルくんが買って来てくれていたレトルトのたまご雑炊を温めて食べる

久々に温かい物を食べたことで、気持ちも浮上してきた
「仕事は明日から復帰しよう。とりあえず、メール連絡だけして、洗濯物を片付けないと…
シゲルさんが、いつ帰って来てくれてもいいようにしなきゃ…」
名前を出すだけで少し寂しくなってしまうものの、一つずつやるべきことをこなしていく

片付けが終わり、自室にて仕事のメールを打ち終わりパソコンを閉じようとしていると、玄関の鍵が開く音が聞こえた


「シゲル、さん?お帰りなさい」
自室から顔を出し、玄関にいる愛しい人を迎えに行く
つい先日にも会ったはずなのに、愛しい人の顔を見ると自然と笑みが溢れてしまう

「あの子も発情期ヒートが終わったの?大丈夫だった?
あの、今回僕もかなりキツくて...シゲルさんの服ももう全然匂いがしなくなってて、あの、だから...」
嫌だけど、運命のあの子の心配をしつつ、自分のことも知って欲しくて話しかける
でも、発情期ヒートに付き合ってたせいか、シゲルさんもどこか疲れ切った顔をしていて、僕の話しに面倒臭そうな顔をされてしまう

「あぁ、じゃあ今着てるヤツは置いていくよ。新しいのは洗濯してるんだろ?
明日には、またあっちに戻るけど、今日は一緒にいるから」

少しだけ笑ってくれて、頭を軽く撫でてくれる
ポンって感じのすごく軽くだけど、それだけで僕は嬉しかった

久々にシゲルさんから触れてくれたから
少しだけでも、彼の匂いがしたから…

それに、今日は一緒に居てくれる。

その言葉に心が浮き足立つ
やっと、今日は僕のところに帰って来てくれたから

一緒に居れるから


つい嬉しいって気持ちが溢れ出して、満面の笑顔になってしまう

残っていた家事をさっさと終わらせて、少しの時間だけでもシゲルさんに甘えるようにくっ付く
少し困っているような笑みを浮かべながらも、頭を撫でてくれるのが嬉しかった

今日の晩御飯は彼の好物をいっぱい作った
「美味しい」って言ってはくれたけど、いっぱい作りすぎたせいで全部は食べて貰えなくて…
大量に残ってしまったけれど…
でも、残りは僕が明日から食べればいいだけ
シゲルさんが喜んで食べてくれただけで嬉しかった
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