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「何時、だろ……」
カーテンの隙間から入って来ていた光も、今は暗闇が部屋を埋め尽くしている
灯りの灯らない部屋をボーっと眺めていると、なんとなく部屋の全貌が見えてくる
変わらない、乱雑な部屋
2人の寝室だったはずなのに、僕1人しか使われていない部屋
発情期の度に、彼の服を集めて巣を作り、終わったら洗濯をする
洗濯する度に、彼の匂いは薄れ、今は…僕の匂いしかしない…
誰の服で、巣を作っているんだろう…
誰の為に、巣を作っているんだろう…
ガチャッと玄関が開く音が聞こえるが、起き上がる元気も動く気力ももうない
シゲルさん、帰ってきてくれたのかな...
今日は、一緒に居てくれるのかな…
せめて、シゲルさんの匂いがする服、欲しいな……
静かに開かれた寝室の扉
中の様子を伺う人影は、愛しい人のものではなかった
よく見知った幼馴染
僕の大切な人
僕の、密かな初恋相手…
シゲルさんじゃなかった事への虚しさと、ハルくんだった事の安堵感
「ミツ、大丈夫か?」
優しい彼の声に涙が溢れ出してしまう
「…ハル、くん……」
ベッドの周りに散らされた、抑制剤が入っていた梱包シートのゴミ
ちゃんと片付けなきゃって思ってたのに…
薬を無我夢中で飲むしか出来なかった
ハルくんの溜息が聞こえる
「また、こんなに飲んじゃったのか...
気持ち悪いだろ?吐けそうなら少しでも吐いてしまえよ?」
優しいハルくんだから、こんな汚い部屋を見ても怒らずに優しく接してくれる
ちゃんと、片付けれてないのに、怒らずにいてくれる
「ミツ、気持ち悪いのか?」
心配そうに顔を覗き込んで、頬に触れられそうになった瞬間、微かに感じるα のフェロモンについ拒絶反応を出してしまい、触れようとしたハルくんの手を叩いてしまう
「っ、あっ、ごめっ...ごめ、なさい…でも、触らないで...」
番ではないαから触れられることへの生理的嫌悪感
本能が、番以外のα を拒絶してしまう
ハルくんの手を叩いてしまったことへの罪悪感が募るものの、これ以上近付かれることすら身体が拒絶してしまい震えが止まらない
「また、アイツは帰って来ないのか...」
僕の様子を見て、怒りを含んだハルくんの声に慌ててしまう
「ハルくん、ごめん。ごめんね…
えっと、違うから…シゲルさんは、悪くないから
あの子も今、発情期がツラいらしくて...、側に居てあげたいからなんだって…
だから、えっと、僕の発情期が被ったのが悪いだけだよ
シゲルさんは、何も悪くないから」
彼が居ない事実を認めたくないものの、ハルくんに彼が怒られるのは嫌でフォローを口にする
自分で言った言葉に落ち込んでしまうも、気持ちを隠すように笑みを浮かべる
ちゃんと笑えてる自信はないけれど、これ以上、シゲルさんが怒られるのは嫌だから…
ハルくんに、シゲルさんの悪口を言って欲しくないから…
また一つ、深い溜息を吐き出すのが聞こえる
「食べれそうなモノがあれば言えよ?あと、俺に出来ることならなんだってやるから」
困ったような、苦しそうな笑顔でハルくんは言ってくれる
いつも優しいハルくん
番が出来て、結婚した僕にもずっと優しく接してくれるハルくん
いつも、側に居てくれて、優しい大好きな人
発情期で買い物すらままならなかった僕の為に、色々買い込んでくれた袋をリビングのテーブルに置いといてくれる
スポーツ飲料だけ、ベッドの横に置いといてくれる
番である彼が居ない理由も、僕の状態も、何もかもわかってくれて、いつも気にしてくれる
優しくて大好きな人。
幼馴染ってだけで、α のハルくんに迷惑を掛けてしまってるのはわかってるけど、他に頼れる人がいないから…
ハルくんに番が出来るまで…
ハルくんに恋人が出来るまで…
ワガママだってわかってるけど、ハルくん以外に頼れる人が思い浮かばなくて…
時々、ハルくんの運命の番が自分だったらどんなに良かっただろうと思ってしまう
僕には、今番であるシゲルさんがいるのに…
そんなの、許されないってわかってるのに…
でも、1人で、番である彼を待ち続ける日々に
発情期の間、ひとりぼっちで堪える日々に…
今の番関係がなかったら、もっと変わってたかも…って思ってしまう
運命の彼が、シゲルさんを見つけなきゃこうならなかったのに…
運命の番という、出会いが憎らしく、それ以上に悲しくなる
「僕って、ホントに嫌なヤツだよね…ごめんね」
カーテンの隙間から入って来ていた光も、今は暗闇が部屋を埋め尽くしている
灯りの灯らない部屋をボーっと眺めていると、なんとなく部屋の全貌が見えてくる
変わらない、乱雑な部屋
2人の寝室だったはずなのに、僕1人しか使われていない部屋
発情期の度に、彼の服を集めて巣を作り、終わったら洗濯をする
洗濯する度に、彼の匂いは薄れ、今は…僕の匂いしかしない…
誰の服で、巣を作っているんだろう…
誰の為に、巣を作っているんだろう…
ガチャッと玄関が開く音が聞こえるが、起き上がる元気も動く気力ももうない
シゲルさん、帰ってきてくれたのかな...
今日は、一緒に居てくれるのかな…
せめて、シゲルさんの匂いがする服、欲しいな……
静かに開かれた寝室の扉
中の様子を伺う人影は、愛しい人のものではなかった
よく見知った幼馴染
僕の大切な人
僕の、密かな初恋相手…
シゲルさんじゃなかった事への虚しさと、ハルくんだった事の安堵感
「ミツ、大丈夫か?」
優しい彼の声に涙が溢れ出してしまう
「…ハル、くん……」
ベッドの周りに散らされた、抑制剤が入っていた梱包シートのゴミ
ちゃんと片付けなきゃって思ってたのに…
薬を無我夢中で飲むしか出来なかった
ハルくんの溜息が聞こえる
「また、こんなに飲んじゃったのか...
気持ち悪いだろ?吐けそうなら少しでも吐いてしまえよ?」
優しいハルくんだから、こんな汚い部屋を見ても怒らずに優しく接してくれる
ちゃんと、片付けれてないのに、怒らずにいてくれる
「ミツ、気持ち悪いのか?」
心配そうに顔を覗き込んで、頬に触れられそうになった瞬間、微かに感じるα のフェロモンについ拒絶反応を出してしまい、触れようとしたハルくんの手を叩いてしまう
「っ、あっ、ごめっ...ごめ、なさい…でも、触らないで...」
番ではないαから触れられることへの生理的嫌悪感
本能が、番以外のα を拒絶してしまう
ハルくんの手を叩いてしまったことへの罪悪感が募るものの、これ以上近付かれることすら身体が拒絶してしまい震えが止まらない
「また、アイツは帰って来ないのか...」
僕の様子を見て、怒りを含んだハルくんの声に慌ててしまう
「ハルくん、ごめん。ごめんね…
えっと、違うから…シゲルさんは、悪くないから
あの子も今、発情期がツラいらしくて...、側に居てあげたいからなんだって…
だから、えっと、僕の発情期が被ったのが悪いだけだよ
シゲルさんは、何も悪くないから」
彼が居ない事実を認めたくないものの、ハルくんに彼が怒られるのは嫌でフォローを口にする
自分で言った言葉に落ち込んでしまうも、気持ちを隠すように笑みを浮かべる
ちゃんと笑えてる自信はないけれど、これ以上、シゲルさんが怒られるのは嫌だから…
ハルくんに、シゲルさんの悪口を言って欲しくないから…
また一つ、深い溜息を吐き出すのが聞こえる
「食べれそうなモノがあれば言えよ?あと、俺に出来ることならなんだってやるから」
困ったような、苦しそうな笑顔でハルくんは言ってくれる
いつも優しいハルくん
番が出来て、結婚した僕にもずっと優しく接してくれるハルくん
いつも、側に居てくれて、優しい大好きな人
発情期で買い物すらままならなかった僕の為に、色々買い込んでくれた袋をリビングのテーブルに置いといてくれる
スポーツ飲料だけ、ベッドの横に置いといてくれる
番である彼が居ない理由も、僕の状態も、何もかもわかってくれて、いつも気にしてくれる
優しくて大好きな人。
幼馴染ってだけで、α のハルくんに迷惑を掛けてしまってるのはわかってるけど、他に頼れる人がいないから…
ハルくんに番が出来るまで…
ハルくんに恋人が出来るまで…
ワガママだってわかってるけど、ハルくん以外に頼れる人が思い浮かばなくて…
時々、ハルくんの運命の番が自分だったらどんなに良かっただろうと思ってしまう
僕には、今番であるシゲルさんがいるのに…
そんなの、許されないってわかってるのに…
でも、1人で、番である彼を待ち続ける日々に
発情期の間、ひとりぼっちで堪える日々に…
今の番関係がなかったら、もっと変わってたかも…って思ってしまう
運命の彼が、シゲルさんを見つけなきゃこうならなかったのに…
運命の番という、出会いが憎らしく、それ以上に悲しくなる
「僕って、ホントに嫌なヤツだよね…ごめんね」
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