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食事会が終わり、どうすればいいのかわからず立ちすくんでしまった
皐月さんと紹介された彼女は、すっごく優しくて、気さくに僕にも話し掛けてくれた
この人が、新しく家族になるんだって思ったけど、お父さんの考えている家族の中に、僕はもう居ない気がした
「先に帰っていなさい」と耳元で囁かれ、仲良く腕を組んで去って行く2人を見送るしか出来なかった
1人、暗い夜道をとぼとぼと歩いて帰る
行きはお父さんとタクシーで来たから、ここから帰る為には電車かタクシーに乗るしかない
でも、お父さんからお金を貰い忘れてしまった
というより、お父さんは渡す気がなかったのかもしれない
1時間くらい歩けばきっと帰れる距離だったから…
僕には、歩いて帰れってことだったんだと思う
でも、帰るって何処にだろう…
あの家には、もう僕の居場所はない
パパの居場所もない
じゃあ、僕は何処に行けばいいんだろう……
白い雪がシンシンと降り注ぐ
今月に入って、初めての雪だ
さっきまで暖かな場所にいたから、吐息が白いモヤになって出てくる
多分、家はこっちの方角かな…
何となくで歩くしかなかった
こんなに沢山の人が居るのに、僕は誰にも必要とされていない
僕が居なくなったところで、誰も悲しんでくれるわけもない…
そんなことを思いながら、当てもなく歩き回った
どれくらい歩いたのかわからない
ここが何処なのかもわからない
家まであとどれだけあるのかもわからない…
寒さと疲れからつい立ち止まってしまった
行く場所なんてない
帰る場所なんてない
溜息と共に白い息が出てしまう
いつの間にか、手も足も冷たくて、歩くことすら疲れてしまった
目に入ったのは公園の遊具
山型になっていて、トンネルを潜ると中に入れるやつ
外側には滑り台や突起が付いていて、よじ登ることが出来る遊具
雪と寒さを凌ごうと、トンネルの中に膝を抱えて座り込んだ
寒くて手がジンジンする
悲しいってよりも、寂しいって気持ちが強かった
もう誰にも必要とされない
生きてる意味すら、わからない…
このまま、ここで寝たらどうなるかな?
凍死ってどれくらいかかるんだろ?
出来たら苦しくない方がいいな…
膝を抱えて、そっと目を閉じる
お父さんはきっと悲しまない
皐月さんが一緒に居てくれることになったから…
パパは、もう僕のことなんて忘れてると思う
一度も会いに来てくれなかったから…
僕が言ったこと、1番怒ってるのはパパじゃないかな…
だから、嫌われたんだと思う
速水君は………
何でだろ、彼の笑顔を思い出してしまう
優しい彼の笑顔だけ…
「会いたい…な」
ポツリと口にすると、今まで堪えていた涙が溢れ出した
ずっと我慢していたものが溢れ出し、止めることが出来なかった
なんで…どうして……
僕はちゃんと約束を守ったのに…
パパの真似を必死にしたのに…
どうして…やっぱり、僕は不要なの……
速水君のこと、諦めようって…決めたのに……
「ニャー」
猫の鳴き声が聞こえる
膝にほんのりと温かい触感があり、顔を恐る恐る上げてみる
僕の膝に前脚を乗せ、鼻を擦り付けてくる三毛猫
見覚えのある猫
「みぃちゃん?」
涙声で名前を呼ぶと嬉しそうに「にゃーん」と鳴いた
前に会った時とは違い、毛並みも良くなったみぃちゃん
美味しいご飯を食べさせて貰っているのか、ガリガリだったのに、今は抱き心地も良さそうで…
首には、赤い細身の首輪をしていた
「そっ、かぁ…飼い主さんが今はいるんだ…」
僕に擦り寄ってくる猫の頭を優しく撫でてやると同時に、自分とは真逆の幸せそうな運命を歩み出している猫の姿に、つい顔が歪んでしまう
「いいなぁ……僕にも、居場所が欲しかった、な…」
猫の頭を撫でながら涙が溢れ出た
みぃちゃんは、僕の頬を舐めて涙を拭ってくれたけど、それが余計に惨めに思えてしまった
「……ズルい、なぁ…」
皐月さんと紹介された彼女は、すっごく優しくて、気さくに僕にも話し掛けてくれた
この人が、新しく家族になるんだって思ったけど、お父さんの考えている家族の中に、僕はもう居ない気がした
「先に帰っていなさい」と耳元で囁かれ、仲良く腕を組んで去って行く2人を見送るしか出来なかった
1人、暗い夜道をとぼとぼと歩いて帰る
行きはお父さんとタクシーで来たから、ここから帰る為には電車かタクシーに乗るしかない
でも、お父さんからお金を貰い忘れてしまった
というより、お父さんは渡す気がなかったのかもしれない
1時間くらい歩けばきっと帰れる距離だったから…
僕には、歩いて帰れってことだったんだと思う
でも、帰るって何処にだろう…
あの家には、もう僕の居場所はない
パパの居場所もない
じゃあ、僕は何処に行けばいいんだろう……
白い雪がシンシンと降り注ぐ
今月に入って、初めての雪だ
さっきまで暖かな場所にいたから、吐息が白いモヤになって出てくる
多分、家はこっちの方角かな…
何となくで歩くしかなかった
こんなに沢山の人が居るのに、僕は誰にも必要とされていない
僕が居なくなったところで、誰も悲しんでくれるわけもない…
そんなことを思いながら、当てもなく歩き回った
どれくらい歩いたのかわからない
ここが何処なのかもわからない
家まであとどれだけあるのかもわからない…
寒さと疲れからつい立ち止まってしまった
行く場所なんてない
帰る場所なんてない
溜息と共に白い息が出てしまう
いつの間にか、手も足も冷たくて、歩くことすら疲れてしまった
目に入ったのは公園の遊具
山型になっていて、トンネルを潜ると中に入れるやつ
外側には滑り台や突起が付いていて、よじ登ることが出来る遊具
雪と寒さを凌ごうと、トンネルの中に膝を抱えて座り込んだ
寒くて手がジンジンする
悲しいってよりも、寂しいって気持ちが強かった
もう誰にも必要とされない
生きてる意味すら、わからない…
このまま、ここで寝たらどうなるかな?
凍死ってどれくらいかかるんだろ?
出来たら苦しくない方がいいな…
膝を抱えて、そっと目を閉じる
お父さんはきっと悲しまない
皐月さんが一緒に居てくれることになったから…
パパは、もう僕のことなんて忘れてると思う
一度も会いに来てくれなかったから…
僕が言ったこと、1番怒ってるのはパパじゃないかな…
だから、嫌われたんだと思う
速水君は………
何でだろ、彼の笑顔を思い出してしまう
優しい彼の笑顔だけ…
「会いたい…な」
ポツリと口にすると、今まで堪えていた涙が溢れ出した
ずっと我慢していたものが溢れ出し、止めることが出来なかった
なんで…どうして……
僕はちゃんと約束を守ったのに…
パパの真似を必死にしたのに…
どうして…やっぱり、僕は不要なの……
速水君のこと、諦めようって…決めたのに……
「ニャー」
猫の鳴き声が聞こえる
膝にほんのりと温かい触感があり、顔を恐る恐る上げてみる
僕の膝に前脚を乗せ、鼻を擦り付けてくる三毛猫
見覚えのある猫
「みぃちゃん?」
涙声で名前を呼ぶと嬉しそうに「にゃーん」と鳴いた
前に会った時とは違い、毛並みも良くなったみぃちゃん
美味しいご飯を食べさせて貰っているのか、ガリガリだったのに、今は抱き心地も良さそうで…
首には、赤い細身の首輪をしていた
「そっ、かぁ…飼い主さんが今はいるんだ…」
僕に擦り寄ってくる猫の頭を優しく撫でてやると同時に、自分とは真逆の幸せそうな運命を歩み出している猫の姿に、つい顔が歪んでしまう
「いいなぁ……僕にも、居場所が欲しかった、な…」
猫の頭を撫でながら涙が溢れ出た
みぃちゃんは、僕の頬を舐めて涙を拭ってくれたけど、それが余計に惨めに思えてしまった
「……ズルい、なぁ…」
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