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大学の受験結果を確認した日の夕方、お父さんから明日は外食しに行こうって言ってくれた
僕の大学合格祝いに、美味しいモノを食べに行こうって…
外に食べに行くのはいつ振りだろう?
いつもスーパーのお惣菜だったり、お弁当だったから…
僕がご飯を作っても、パパの作った料理とは全然味が違うから、二度と作るなって言われていた
外食なんて、僕と2人で行っても楽しくないから、行くのはお父さん1人だけ
だから、僕が連れて行って貰えるのは、本当に久しぶりだった
ちょっとだけ、僕自身のコトを見てくれたんだって思って嬉しかった
学校が終わって、家でお父さんが帰って来てくれるのを待つ
パパの服を着て行った方がいいのか悩んだけど、どれももうボロボロで、外に着ていくのは憚れる
服装で悩んでいると、お父さんが帰ってきて、高校の制服のままでいいって言ってくれた
何処に連れて行ってくれるのかわからなくて、本当に制服でいいのか不安になっていると
「少し良い店を予約したからな。それに見合う服は朱鳥は持っていないだろ?だから、制服でいい。マスクも外せよ」
お父さんから言われた言葉が信じられなくて、目をパチクリとさせてしまう
今まで、マスクは絶対に外すなって言われ続けていたのに…
恐る恐るマスクをテーブルに置き、お父さんの顔を見る
そばかすのある醜い顔を晒しているのに、何故かお父さんは機嫌が良かった
鼻歌交じりに家を出て、お店に向かった
お父さんが、僕のことをちゃんと見てくれたと思って嬉しかった
これからは、パパの代わりじゃなくて、また昔みたいにに仲の良い親子に戻れるんじゃないかって思って嬉しかった
嬉しかったのに…
お店には、知らない女性が先に席に座っていた
「朱鳥君よね?初めまして」
笑顔の素敵な優しそうな女性が、少し照れながら挨拶してきた
お父さんは当たり前の様に彼女の隣に座り、僕は向かいの席に座るように指示される
「朱鳥、彼女は杉田 皐月さんだ
今、俺とお付き合いして下さってる方だよ」
幸せそうに彼女を紹介するお父さん
パパと同じ名前の、可愛らしい女性
最近、ずっと帰りが遅かったのは彼女と一緒に居たから
僕よりも、お父さんは彼女との生活を優先したんだろう
「朱鳥も春から大学だろ?一人暮らしを始めるだろうから、この機に彼女と入籍しようと思っている
朱鳥は、当然祝福してくれるよな?」
僕が大学に受かったのを喜んでくれたのは、早く追い出したかったから…
大学は、家から通える場所だったけど、お父さんの中で、僕はもう要らないらしい…
彼女の指には綺麗な指輪がしてあり、2人とも本当に幸せそうに微笑んでいた
「……うん。お父さん、皐月さん、おめでとうございます」
声を出したのはいつ振りだろう
お父さんに向かって喋ったのはいつ振りだろう…
小さな声で、震えそうな声で、祝福の言葉を口にする
僕はちゃんと笑って言えたんだろうか?
ちゃんと口角は上がって、祝福できたんだろうか?
出された料理を、2人は美味しそうに、楽しそうに食べていた
パパと仲が良かった時みたいに、すっごく仲睦まじく、楽しそうに歓談しながらの食事
本当なら、すっごく美味しいはずの料理
でも、僕は味なんて何もしなかった
悲しくて、今すぐにでも飛び出したい衝動を抑えるのに必死だった
泣きたいのを、怒りたいのを、堪えるのに必死だった
この日、僕はお父さんに捨てられた
もう『朱鳥』という存在は、『パパ』という存在は、お父さんから要らなくなったんだって理解した
そして、僕が帰る場所がなくなったのを知った
僕の大学合格祝いに、美味しいモノを食べに行こうって…
外に食べに行くのはいつ振りだろう?
いつもスーパーのお惣菜だったり、お弁当だったから…
僕がご飯を作っても、パパの作った料理とは全然味が違うから、二度と作るなって言われていた
外食なんて、僕と2人で行っても楽しくないから、行くのはお父さん1人だけ
だから、僕が連れて行って貰えるのは、本当に久しぶりだった
ちょっとだけ、僕自身のコトを見てくれたんだって思って嬉しかった
学校が終わって、家でお父さんが帰って来てくれるのを待つ
パパの服を着て行った方がいいのか悩んだけど、どれももうボロボロで、外に着ていくのは憚れる
服装で悩んでいると、お父さんが帰ってきて、高校の制服のままでいいって言ってくれた
何処に連れて行ってくれるのかわからなくて、本当に制服でいいのか不安になっていると
「少し良い店を予約したからな。それに見合う服は朱鳥は持っていないだろ?だから、制服でいい。マスクも外せよ」
お父さんから言われた言葉が信じられなくて、目をパチクリとさせてしまう
今まで、マスクは絶対に外すなって言われ続けていたのに…
恐る恐るマスクをテーブルに置き、お父さんの顔を見る
そばかすのある醜い顔を晒しているのに、何故かお父さんは機嫌が良かった
鼻歌交じりに家を出て、お店に向かった
お父さんが、僕のことをちゃんと見てくれたと思って嬉しかった
これからは、パパの代わりじゃなくて、また昔みたいにに仲の良い親子に戻れるんじゃないかって思って嬉しかった
嬉しかったのに…
お店には、知らない女性が先に席に座っていた
「朱鳥君よね?初めまして」
笑顔の素敵な優しそうな女性が、少し照れながら挨拶してきた
お父さんは当たり前の様に彼女の隣に座り、僕は向かいの席に座るように指示される
「朱鳥、彼女は杉田 皐月さんだ
今、俺とお付き合いして下さってる方だよ」
幸せそうに彼女を紹介するお父さん
パパと同じ名前の、可愛らしい女性
最近、ずっと帰りが遅かったのは彼女と一緒に居たから
僕よりも、お父さんは彼女との生活を優先したんだろう
「朱鳥も春から大学だろ?一人暮らしを始めるだろうから、この機に彼女と入籍しようと思っている
朱鳥は、当然祝福してくれるよな?」
僕が大学に受かったのを喜んでくれたのは、早く追い出したかったから…
大学は、家から通える場所だったけど、お父さんの中で、僕はもう要らないらしい…
彼女の指には綺麗な指輪がしてあり、2人とも本当に幸せそうに微笑んでいた
「……うん。お父さん、皐月さん、おめでとうございます」
声を出したのはいつ振りだろう
お父さんに向かって喋ったのはいつ振りだろう…
小さな声で、震えそうな声で、祝福の言葉を口にする
僕はちゃんと笑って言えたんだろうか?
ちゃんと口角は上がって、祝福できたんだろうか?
出された料理を、2人は美味しそうに、楽しそうに食べていた
パパと仲が良かった時みたいに、すっごく仲睦まじく、楽しそうに歓談しながらの食事
本当なら、すっごく美味しいはずの料理
でも、僕は味なんて何もしなかった
悲しくて、今すぐにでも飛び出したい衝動を抑えるのに必死だった
泣きたいのを、怒りたいのを、堪えるのに必死だった
この日、僕はお父さんに捨てられた
もう『朱鳥』という存在は、『パパ』という存在は、お父さんから要らなくなったんだって理解した
そして、僕が帰る場所がなくなったのを知った
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