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昼休みは、誰にも見つからないようにこっそり校舎の裏に行く
木々が生い茂っていて、校舎の裏口くらいしかない場所
人も来なければ、誰にも見つからない場所
裏口の扉の前はいい感じに窪んでいるから、階段に座り、今朝コンビニで買ってきたモノを取り出す
メロンパンと牛乳
いつもの組み合わせ、毎日変わらないモノ
別に好きなわけじゃない
ただ、考えるのが面倒だから…
少しでもコンビニに居る時間を短縮したいから…
人に会う時間、人とすれ違う回数、レジにはピッタリの金額を準備する
その為に毎日同じモノにする
周りに誰も居ないのを確認してから、やっと不織布のマスクを外す
マスクを外した顔を見られないために…
そばかすのある顔を誰にも見られたくないから…
「はぁ……」
マスク越しでない新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、ゆっくり吐き出す
マスクをしている間は、絶対に声を出さないようにしている
誰とも喋っちゃいけないから
誰にもそばかすのある醜い顔を見せたくないから…
少しでも顔を見られないように、前髪を伸ばした
マスクにギリギリ被るくらい
前髪の隙間からいつも黒板を見る
最初は伊達メガネだったけど、徐々に視力も落ちてしまって、今ではちゃんと眼鏡を掛けなきゃ黒板の字すら見えない…
首に巻かれた細身の黒いチョーカーを指で緩め、ホッと息を吐く
こんなモノしていても、意味なんてないのに…
モソモソとメロンパンを齧り、暖かな春の陽射しを感じて目を細める
「あったかい…」
壁にもたれ掛かり、味気ないパンを齧りながらポツリと呟く
誰も居ない、誰にも見られない、誰にも聞かれない
この時間だけが唯一、僕がひと息付ける場所
「ニャー」
鳴き声と共に1匹の三毛猫が草むらからガサガサと出て来て、僕の脚に頭を擦り付けてくる
「みぃちゃん、おはよう。今日も可愛いね」
猫が甘えてくる様子につい顔が綻んでしまう
猫の頭を優しく撫で、パンを少し千切ってあげる
美味しそうにパンを食べる姿につい表情が弛み、空いてる方の手で袋から牛乳とチュールを取り出す
「今日はちゅーるもあるんだよ。お小遣い、昨日貰ったから、みぃちゃんにどうかな?って…」
チュールが何なのかをわかっているのか、キラキラとした目でフスフスと鼻を鳴らす様子につい笑ってしまう
僕にとって、唯一の話し相手
僕の唯一の友達
「みぃちゃんとずっと二人だけで居れたらいいのに…」
ポツリと本音が口から溢れてしまい、胸の奥にチクリとした痛みが生じる
「……何でもない。なんでも…」
目を閉じ、ゆっくり息を吐き出し、自分に言い聞かせるように、静かに言葉にした
「あ、こっちに居たのか」
いきなり人の声が聞こえ、ビクッと肩を震わせて目を開ける
恐る恐る見上げると、うちの高校とは違う学ランを着た背の高いイケメンが目を輝かせて僕の隣に立っていた
マスクを外していたことを思い出し、慌ててマスクを付け直す
急いで付けたせいで。メガネがズレてしまって落ちそうになり、一人あわあわと慌ててしまう
それでも今は、少しでも早く立ち去りたかった
顔を見られてしまったから…
喋っているのを見られてしまったから…
それなのに、みぃちゃんが僕に纏わり付いて立ち上がるのを邪魔してくる
「……みぃ、ちゃん…離して…」
か細い涙声で訴えるも、日本語なんて理解出来ないというように、僕の膝の上に丸まって立ち去るのを拒絶してくる
まだチュールを貰ってないと言いたげに、「にゃーん」と文句あり気に鳴き、尻尾で僕の手を叩いてくる
「ねぇ、その猫、君が飼ってるの?」
屈託のない笑みを浮かべ、イケメンさんが声を掛けて来たけれど、僕は俯いて目も合わさないように息を潜めていた
「猫、可愛いね。名前あるのかな?」
人が必死に気配を殺しているのに、僕のことなんてお構いなしに話しかけてくる
「………」
早く何処かに行って欲しくて、膝の上で寝転がって降りてくれないみぃちゃんを抱き締めながら、僕は小さく震えることしか出来なかった
早く、早く…どこかに行って欲しい
ほっといて欲しい…
彼が去って行ってくれるのを切に願うも、僕の願いを無視して、遠慮なく隣に座ってくる
「痩せてるけど、可愛がって貰えてるんだな」
勝手にに猫の頭や背中を撫でてきて、僕に話し掛けてくる
「お前のご主人様は優しいんだなぁ~」
僕が顔を背けているのに、そんなこと一切気にした様子もない
なんで…早くどこかに行ってよ…
僕の願いが届いたのか、予鈴のチャイムが鳴り響く
「もうこんな時間か……
昼飯食ってたのに邪魔してごめんな…。次は、その猫の名前教えてくれると嬉しい」
最後に一撫でしてからスッと立ち上がり、どこか寂しげな声音で言った後、僕の頭をポンポンと撫でてから彼はさっさと立ち去っていた
知らない人なのに、撫でられた頭が何だか温かい
人に触れられるなんて、1番嫌なはずなのに…
誰なのか、ここの生徒なのかもわからない彼
もう会うこともないはずの彼
でも、何となく気になってしまった
撫でられた頭に、自分の手を添える
「……知らない、人なのに…」
彼が去っていった方を無意識に見つめていると、自分のコトを無視されたと思ったみぃちゃんが、腕の中で文句あり気に「にゃ~ん」と鳴いていた
木々が生い茂っていて、校舎の裏口くらいしかない場所
人も来なければ、誰にも見つからない場所
裏口の扉の前はいい感じに窪んでいるから、階段に座り、今朝コンビニで買ってきたモノを取り出す
メロンパンと牛乳
いつもの組み合わせ、毎日変わらないモノ
別に好きなわけじゃない
ただ、考えるのが面倒だから…
少しでもコンビニに居る時間を短縮したいから…
人に会う時間、人とすれ違う回数、レジにはピッタリの金額を準備する
その為に毎日同じモノにする
周りに誰も居ないのを確認してから、やっと不織布のマスクを外す
マスクを外した顔を見られないために…
そばかすのある顔を誰にも見られたくないから…
「はぁ……」
マスク越しでない新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、ゆっくり吐き出す
マスクをしている間は、絶対に声を出さないようにしている
誰とも喋っちゃいけないから
誰にもそばかすのある醜い顔を見せたくないから…
少しでも顔を見られないように、前髪を伸ばした
マスクにギリギリ被るくらい
前髪の隙間からいつも黒板を見る
最初は伊達メガネだったけど、徐々に視力も落ちてしまって、今ではちゃんと眼鏡を掛けなきゃ黒板の字すら見えない…
首に巻かれた細身の黒いチョーカーを指で緩め、ホッと息を吐く
こんなモノしていても、意味なんてないのに…
モソモソとメロンパンを齧り、暖かな春の陽射しを感じて目を細める
「あったかい…」
壁にもたれ掛かり、味気ないパンを齧りながらポツリと呟く
誰も居ない、誰にも見られない、誰にも聞かれない
この時間だけが唯一、僕がひと息付ける場所
「ニャー」
鳴き声と共に1匹の三毛猫が草むらからガサガサと出て来て、僕の脚に頭を擦り付けてくる
「みぃちゃん、おはよう。今日も可愛いね」
猫が甘えてくる様子につい顔が綻んでしまう
猫の頭を優しく撫で、パンを少し千切ってあげる
美味しそうにパンを食べる姿につい表情が弛み、空いてる方の手で袋から牛乳とチュールを取り出す
「今日はちゅーるもあるんだよ。お小遣い、昨日貰ったから、みぃちゃんにどうかな?って…」
チュールが何なのかをわかっているのか、キラキラとした目でフスフスと鼻を鳴らす様子につい笑ってしまう
僕にとって、唯一の話し相手
僕の唯一の友達
「みぃちゃんとずっと二人だけで居れたらいいのに…」
ポツリと本音が口から溢れてしまい、胸の奥にチクリとした痛みが生じる
「……何でもない。なんでも…」
目を閉じ、ゆっくり息を吐き出し、自分に言い聞かせるように、静かに言葉にした
「あ、こっちに居たのか」
いきなり人の声が聞こえ、ビクッと肩を震わせて目を開ける
恐る恐る見上げると、うちの高校とは違う学ランを着た背の高いイケメンが目を輝かせて僕の隣に立っていた
マスクを外していたことを思い出し、慌ててマスクを付け直す
急いで付けたせいで。メガネがズレてしまって落ちそうになり、一人あわあわと慌ててしまう
それでも今は、少しでも早く立ち去りたかった
顔を見られてしまったから…
喋っているのを見られてしまったから…
それなのに、みぃちゃんが僕に纏わり付いて立ち上がるのを邪魔してくる
「……みぃ、ちゃん…離して…」
か細い涙声で訴えるも、日本語なんて理解出来ないというように、僕の膝の上に丸まって立ち去るのを拒絶してくる
まだチュールを貰ってないと言いたげに、「にゃーん」と文句あり気に鳴き、尻尾で僕の手を叩いてくる
「ねぇ、その猫、君が飼ってるの?」
屈託のない笑みを浮かべ、イケメンさんが声を掛けて来たけれど、僕は俯いて目も合わさないように息を潜めていた
「猫、可愛いね。名前あるのかな?」
人が必死に気配を殺しているのに、僕のことなんてお構いなしに話しかけてくる
「………」
早く何処かに行って欲しくて、膝の上で寝転がって降りてくれないみぃちゃんを抱き締めながら、僕は小さく震えることしか出来なかった
早く、早く…どこかに行って欲しい
ほっといて欲しい…
彼が去って行ってくれるのを切に願うも、僕の願いを無視して、遠慮なく隣に座ってくる
「痩せてるけど、可愛がって貰えてるんだな」
勝手にに猫の頭や背中を撫でてきて、僕に話し掛けてくる
「お前のご主人様は優しいんだなぁ~」
僕が顔を背けているのに、そんなこと一切気にした様子もない
なんで…早くどこかに行ってよ…
僕の願いが届いたのか、予鈴のチャイムが鳴り響く
「もうこんな時間か……
昼飯食ってたのに邪魔してごめんな…。次は、その猫の名前教えてくれると嬉しい」
最後に一撫でしてからスッと立ち上がり、どこか寂しげな声音で言った後、僕の頭をポンポンと撫でてから彼はさっさと立ち去っていた
知らない人なのに、撫でられた頭が何だか温かい
人に触れられるなんて、1番嫌なはずなのに…
誰なのか、ここの生徒なのかもわからない彼
もう会うこともないはずの彼
でも、何となく気になってしまった
撫でられた頭に、自分の手を添える
「……知らない、人なのに…」
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