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第4章

再会

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「ディック、久しぶり!」


 私は、彼へ駆け寄っていく。


 約2年ぶりの再会である。

 数年前、彼が隣国へ留学すると言ったきり、会う機会がなかったのだ。


 しばらく見ないうちに、凛々しい青年に成長している。


 だけど、目の前にいる彼は紛れもなく、ディックだった。


 喜びのあまり、飛びつかんばかりに近づく私に向かって、彼は昔と変わらない笑顔を浮かべた。


「久しぶりだな、俺のセレーナ。元気にしてたか?」




 私が求婚状を片っ端から送りつけている間のことだった。

 もう既に帰国の準備が整っているのだと、両親の口から告げられた私は、大いに喜んだ。

「本当?」

 私は、年甲斐もなくはしゃぐ。

「ディックが帰ってくるの?」

「もちろんだ」

 と、お父様。

「しかし、そう喜ぶものじゃないぞ。セレーナ。殿下との仲が、ほとんど修復不可能となっているものの、ディックは男だ。未婚のな」

「そうよ」

 と、お母様。

「昔のようにずっと一緒にいるってわけにはいかないわ。成長すると、男女の友情は別の意味で捉えられるかもしれないもの。例えあなたたちが良くても」

「わかってるわよ」

 私はムッとした。

「ちゃんと、それなりの距離感で接するわーー従兄として」


 私の1つ上のディックは、私の父の弟の子どもーーつまりは従兄だ。

 彼の父は跡継ぎではなかったため、与えられた爵位こそ低けれど、優秀で国からも重宝されている。

 その息子であるディックも、またその才を認められ、国からの補助で隣国へ留学する権利を得たのだ。


 私とディックは、親友も同然だった。

 幼い頃から一緒にいて、遊んだり、勉強したり。


 アンを除けば、私の最初で唯一の友人ということになる。


 2年間一度も会わなかったし、文通もしなかった。

 しようとは思ったけれど、

「第一王子の婚約者が、従兄とはいえ、他の男と文通は駄目だ」

 と、両親に反対されてしまった。


 だから、私はディックの様子を、弟のアベル宛に届く手紙でしか把握出来ていなかった。


 だからこそ、その親友の帰郷に、私は盛大に喜んでいるのだ。
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